2024年1月24日~26日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている、「第16回 オートモーティブ ワールド」にて、村田製作所は同社の技術力を応用させ開発した車載用センサやコンデンサ類を展示している。

車載対応のデジタル3軸加速度センサ「SCA3300」

中でも注目されていたのは、デジタル3軸加速度センサ「SCA3300」。同製品は、車両の傾きを検知し正しい照射範囲を確保するために光軸を補正する機能をもつなど、自動車のヘッドライトやLiDAR、Radar(レーダー)などさまざまな用途で活用することができる。

SCA3300シリーズの1番の魅力は、「オフセットの安定性」だとブース担当者は語る。従来、車載には「ハイトセンサ」という光や音などの反射を用いて車体と路面の間を測るセンサが搭載されているのだが、ハイトセンサを車両の両端に2つ付けることで車体の微妙な傾きも検知できるようになるものの、コストアップになってしまうため多くの場合は1つのハイトセンサだけで計測しているのだという。

  • SCA3300シリーズのセンサ展示

    SCA3300シリーズのセンサ展示

しかし、車の電動化が急速に進みつつある昨今、正確な情報を高精度で計測することは必要不可欠になっており、従来のハイトセンサよりも高精度かつ高い安全性が求められるようになってくることが予想されている。すでにヨーロッパではEUを中心に規制も厳しくなりつつあるため、その流れは将来的には米国や日本にもおよぶだろうとのこと。

そこで村田製作所は「MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術」を活用した高性能かつ高信頼性の加速度センサ、ジャイロセンサ、傾斜角センサを独自開発。開発されたMEMS加速度センサを車体の中央付近に組み込むことで、過酷な環境下でも高い安定性を保ちながら高い精度で測定を行うことができるようになるのだという。なぜ安定性を生み出すことができるかというと、「素子の作り方」に違いがあるとのこと。より立体的な構造を作ることでノイズを少なくすることができるようになり、それが安定性につながっているとブース担当者は語っていた。

ブースにはトラック(のおもちゃ)を使ったデモが設置されており、筆者も実際に傾かせてみたところ、レベリングにより光軸が補正された結果が表示されていた。

  • デモの様子

    トラックのおもちゃを使ったデモの様子

  • トラックのおもちゃを傾けた様子

    トラックのおもちゃを傾けた結果。(左)補正されてない光、(右)レベリングにより光軸が補正された光

xEV向けEMI対策用積層セラミックコンデンサ

また、他にもxEV向けEMI対策用積層セラミックコンデンサ(MLCC)も展示されていた。通常は、セラミックコンデンサの電極にリード線を接合し樹脂で固める「リードタイプ」と言われる積層セラミックコンデンサが多い中、同製品は「面実装タイプ」で開発されており、リードタイプに比べ厚みが抑えられ薄型化が実現された製品となっている。

  • xEV向けEMI対策用積層セラミックコンデンサの展示

    xEV向けEMI対策用積層セラミックコンデンサの展示

この面実装タイプはリードタイプで必要だった樹脂コーティングを不要にでき、はめるだけで良いため、作業時間が短縮され生産性も向上するとブース担当者は語っていた。

また、EV市場は従来は電圧が400V帯のバッテリが搭載されていたものの、800V帯の車種も近年になってぞくぞくと市場投入されているのが現状。この流れに伴い、車載パワーエレクトロニクス機器で扱う電力も高電圧化し、構成する部品に対しては高電圧負荷時でも安全性を確保したノイズ対策が求められているという。この安全性の高いノイズ対策部品には長い沿面距離が必要であるというが、通常は高電圧負荷時の安全性を確保したまま沿面距離を延ばすことは困難だという。

  • xEV向けEMI対策用積層セラミックコンデンサの拡大画像

    xEV向けEMI対策用積層セラミックコンデンサの拡大画像 (出所:村田製作所)

そこで同社では、MLCC技術と小型化に適した樹脂モールド技術を活用することで、国際規格「IEC60664-1」にて定められている800V帯5.6mmを超える、10mm以上の沿面距離と空間距離を実現。EV搭載機器で想定される高電圧800V帯にも対応したコンデンサを開発できたとしていた。