6月10日より幕張メッセで「Interop Tokyo 2026」が開催されているが、開催初日の10日、AMDが「最先端インフラへの取り組み:シリコンイノベーションが作り出す課題と未来」と題した基調講演を行った。この簡単な内容の紹介と、講演後に行われた質疑応答の内容をご紹介したいと思う(Photo01)。
AIインフラはGPU単独からCPU+GPUの時代へ
まず基調講演の方であるが、AIに向けた取り組みが功を奏して、様々な部分で成長している事を簡単にまとめた(Photo02)後で、既存の置き換えシナリオ(Photo03)はもちろん引き続き有効であるが、新しいトレンドがエージェンティックAIであるとする(Photo04)。
従来、AIといえばGPU「だけ」が売れまくる状況だったのが、これからはCPUとGPUの両方が必要になる、という訳だ。この結果としてCPUのTAMは、2022~2024年までがCAGRで4%程度の緩やかな成長だったのが、2025年以降2030年位までのCAGRが35%以上に達する、と予測されている。2030年にはTAMが1200億ドルに達する見込みとされており、もしAMDがサーバーの売上高シェアを現在のまま維持できるとすれば、売り上げが600億ドル弱に達する計算だ(流石にこれは絵空事ではあるが)。このマーケットに引き続きx86ベースでアドレスしてゆく、というのがDicker氏の締めの言葉であった。
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Photo05:どの辺が絵空事か? というと、600億ドル分のCPUを供給できる能力が2030年までにAMDが用意できるとは考えられない点だ。ちなみに同社の2025年Q1のデータセンター向けの売り上げは57億7500万ドルほど。年間で考えても230億ドルとかその位である。これを向こう4年で3倍にするのは、流石に無理が過ぎるように思える
トヨタシステムズが語ったHPC最適化とAMD採用の実例
この基調講演にゲストとして招かれたのがトヨタシステムズの越戸賢司氏(HPCインフラG GM兼シミュレーションR&D部 Expert of Simulation)である。越戸氏の業務はトヨタで利用される様々なシミュレーションを稼働させるHPCインフラを提供する(&面倒を見る)ことであるが、性能をきちんと出すためにはどんな処理をやっていて、何がボトルネックで、どう解決すべきかの最適化はケースごとに異なると説明。一例として、ある解析プログラムでHDDアクセスが遅すぎて性能が出なかったのだが、良く調べるとメモリが足りずにスワッピングが発生していたことが判明。HDDをSSDに交換するのではなく、若干メモリを足してスワッピングを防止する事で劇的に性能が上がった事例などが紹介された。
その上で、実際にある処理を高速化するにあたり、試しにIntelのCPUをAMDのものに変えてみたら3倍ほど性能が上がったという事例があった事に触れ、そこから台数を次第に積み増していき、今では半分くらいがAMDのものに変わったという話が披露された。単になんでもAMDの方がよいという話ではなく、実行するシミュレーションの内容や環境に応じて最適なものは何かをきちんと考える必要があるという話であり、その結果としてAMDが選ばれた、という事であった。
2nm世代EPYC「Venice」と「Verano」が示す次の一手
さて、質疑応答であるが興味深い話としては「Venice」(開発コード名)と「Verano」(開発コード名)の話があった。今年5月、AMDはVeniceに加えてVeranoが2nm世代で製造されることを明らかにしている。
現時点でVeranoはLPDDRを利用した製品になるという以上の説明はないのだが、「Veniceが汎用向け、VeranoはエージェンティックAI向けという理解で良いのか?」という質問に対してDicker氏は「Verano is a wonderful example of a very tight relationship with the customer base that informed us of a new use for a different interface and set of specifications」と説明した。
エージェンティックAIの場合、メインストリーム(Zen 4/5)というよりも高密度向け(Zen 4c/5c)的な構成が向いている(コアの密度というかコア数がトータルとして性能に効いてくる)訳だが、これに加えてLPDDR(恐らくSOCAMM2ベースだろう)による広帯域・高容量化が求められた事に対応して、単にコアだけでなくsIoDもこれに対応したものに変更された事を暗に示唆している様に思われる。
それと、「過去にSeattle(Opteron A1100:Cortex-A57×8構成のOpteron)やProject Skybridge(x86とArmでピンコンパチなSoCを提供する:キャンセルになった)、K12(ArmベースのフロントエンドとZenベースのバックエンドを持つカスタムArmコア。CTOのMark Papermaster氏によれば計画は“Freeze”されているとの事)などArmベースの製品にトライしてきたが、ソフトウェアエコシステムも充実し、Armベースの製品を求める顧客もいる今なら提供しても良いのでは?」と水を向けてみたが「We will focus on x86 for the data center. I think the question is whether one architecture fits everything; while the market explores options, we focus on x86」と、あくまでx86を中心に据える考えを表明した。ただ、Armを否定する訳では無かったあたり、将来に向けての多少の選択の余地を残した、とは言えるかもしれない。
いつものように「将来計画については説明できないので、もう1~2四半期待っててくれ」という言葉が戻ってきた訳だが、実はAMDは7月23日に「Advancing AI 2026」を開催する事がすでに公表されている。あるいはここで色々なアップデートが公開されるので、それまで待ってろ、ということなのかもしれない。





