新しいキャリア、新しい場所…。新しいことにトライするには、苦難や苦労がつきものです。ただ、その先には希望があります。
本連載は、あなたの街の0123でおなじみの「アート引越センター」の提供でお送りする、新天地で活躍する人に密着した企画「NewLife - 新しい、スタート -」。
第26回目は、音楽家・総合エンターテインメントプロデューサーとして活躍するつんく♂さんにお話をうかがいました。
Current
声を失った今も精力的に活動する
エンターテイメントプロデューサー
「子どもたちを車で学校に送ってから一日が始まります」
ハワイでの暮らしについて、穏やかな表情でタイピングするつんく♂さん。ロックバンド「シャ乱Q」のボーカルとして、モーニング娘。をはじめハロー!プロジェクトの総合プロデューサーとして、日本の音楽シーンに一時代を築きました。
悪夢のような出来事が訪れたのは2014年秋のこと。喉頭がん手術で声帯を摘出し、大切な声を失ったのです。当時、そのニュースは衝撃と共に伝えられました。
しかし、つんく♂さんの挑戦は終わりませんでした。母校である近畿大学の入学式をプロデュースしたり、「大阪・関西万博 大阪パビリオン推進委員会スーパーバイザー」に就任したりするなど、現在も幅広く精力的に活動しています。
長くエンターテインメントの世界に身を置き、激動の人生を歩んできたつんく♂さんに「令和を生き抜く術」を聞いてみました。
Debut
「自分は天才ではなく凡人」
どぶ板作戦でメジャーデビューを果たす
つんく♂さんは「自分は天才ではなく凡人」と語ります。
音楽を作る才能にしても、自分より優れている人はアマチュアの頃からたくさんいました。 なので、それだけでは戦えないと思いましたね。 |
そこで取ったのが「どぶ板作戦」。支えるのは「根拠のない過信」だったと笑います。
イタい奴だと思われても「俺はできる!」と自信を持っているくらいがいいんです。 まだ予定もないのに「もうすぐデビュー!」とチラシに勝手に書いたりしていました(笑) |
ただ、実績がなければ狼少年になってしまいます。定めた目標から逆算し、地道にファンを増やしていったそうです。
例えば、1年後のライブに有料で300人のお客さんを入れようと思えば、1か月にファンを何人増やせば良いのかが明確になります。 どぶ板作戦を実行すれば、ちゃんと数字が積み重なるわけです。 |
最初はビッグマウスに過ぎなかったのが、徐々に周囲も「もしかして、本当にデビューするんじゃないか……」とざわつき始め、期待を膨らませるように。結成から2年ほど経って、シャ乱Qは大阪で最も観客を動員するアマチュアバンドになりました。
1992年にメジャーデビュー。しばらくヒット曲に恵まれず、一時は契約解除の瀬戸際に立たされますが、4枚目のシングル『上・京・物・語』で危機を乗り越えると、6枚目のシングル『シングルベッド』が発売から半年以上をかけてミリオンセラーを達成しました。
まさか自分たちがミリオンセラーを出せるなんて思ってもいませんでした。 けれど、どんな球をどう投げたら響くのかは、小さい頃から歌謡曲や洋楽を聴いてきたおかげで何となく理解できていたので、その力が活きたのかもしれません。 |
その後、『ズルい女』『My Babe 君が眠るまで』とミリオンセラーを連発。1995年には「NHK紅白歌合戦」に初出演するなど、シャ乱Qは平成を代表する超人気バンドになっていったのです。
Progress
絶妙なバランス感覚
「モーニング娘。」の快進撃を生む
人気絶頂の最中、オーディション番組「ASAYAN」からオファーを受け、プロデュース業に取りかかります。1997年、プロデューサー・つんく♂が誕生しました。
プロデュース経験はありませんでしたが、またしても「根拠のない過信」で挑戦してみることにしました(笑) |
サザンオールスターズの桑田佳祐さんが他の歌手に楽曲を提供していた記憶が、ずっと脳裏にあったと振り返ります。時が過ぎ、平成になって小室哲哉さんが一大ムーブメントを作った後、自分に順番が回ってきたように感じたのだとか。
つんく♂さんが手がけた「モーニング娘。」は、7枚目のシングル『LOVEマシーン』で170万枚という爆発的なヒットを飛ばします。
歌詞に関しては、知らず知らずのうちに時代のにおいを感じて作っていたと思いますね。 一方で作曲については、音楽業界で少し前に流行っていたようなものを意識的に取り入れるようにしました。そのほうが日本人には受け入れてもらいやすいと考えたんです。 時代を突き抜け過ぎないで、それでいてプロの音楽家に『シブい』と思わせる。そのあたりを徹底していました。 |
絶妙なバランス感覚が生んだ「モーニング娘。」の快進撃は留まるところを知らず、ノリのいいダンスミュージックとキャッチーなフレーズは日本中を盛り上げ、まさに旋風を巻き起こしました。
Honesty
「こだわり」や「プライド」は不要
必要なのは信頼関係を築く「素直さ」
つんく♂さんには独特のプロデュース論があります。それは「こだわりとプライドは不要」というもの。プロデューサーに限らず、すべてのクリエイターに当てはまりそうです。
音楽家や映画監督、脚本家たちと交流していますが、こだわりとプライドが強い人はアドバイスを素直に聞けない傾向にあります。 「そのフレーズが邪魔をしている」と指摘しても、なかなか放せない。逆に伸びる人は、スパッと捨てて新しいものを書いてきます。 |
互いに本音で語り合い、素直に聞き入れる。この姿勢は、オーディションに挑む際にもますます重要になってくるといいます。
昔と違って、良かれと思ったことがハラスメントやプライバシーの侵害と受け取られる可能性もあります。そうなると、本人が自分自身を客観視したうえで自主的に質問してくれないと、アドバイスする側は何ともしようがないわけです。 ウソをつかずに自分の言葉で話し、いかに信頼してもらえるかどうかがオーディション突破の鍵を握るのではないかと思います。 |
逆に、アドバイスする側には「愛や真心が求められる」と訴えます。プロデューサーとして、モーニング娘。をはじめとするアーティストたちを厳しく育ててきたつんく♂さんらしい哲学です。
Style
「値打ちこくな」
いつの時代も、数を打つのが挑戦の鉄則
つんく♂さんに今後の目標を聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
K-POPと比較してJ-POPは、やれていないことがまだまだあります。簡単ではないですが、一丸となって高速道路を作るような気持ちで、世界を舞台に戦っていきたいですね。 それから日本国内では、異なるジャンルの方々と驚くようなコラボを実現してみたいです。 |
人は、いつまで生きられるかわからない。
身をもって実感したからこそ、声を捨ててまで生きることを選んだ今、刺激的なことに挑戦していきたいと意欲は高まっています。
最初からスタイルを決めつけず、数を打つ。いつの時代も、どんな人にも共通する挑戦の鉄則です。 作品を提出するときも、転職活動するときも、恋人にアタックするときも同じ。失敗したり、ダメ出しされたりしたって、どうってことはありません。 |
「とにかく数を打つ。これに尽きる」。
これまで約2,000曲以上を世に送り出してきたつんく♂さんの言葉は説得力が違います。しかも、どんなに多忙でも締め切りは絶対に守ってきたそうです。根拠のない自信を持ちながらも謙虚さを忘れない。このことが継続的な努力につながり、いつか実を結ぶのでしょう。
「値打ちこくな」。凡人を自負するつんく♂さんの叱咤激励には、まさしく「愛」が詰まっているように感じました。
アート引越センターは、一件一件のお引越に思いをこめて、心のこもったサービスで新生活のスタートをサポート。お客さまの「あったらいいな」の気持ちを大切に、お客さまの視点に立ったサービスを提供していきます。
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Photo:伊藤 圭
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