日本の美しい風景が堪能できるのも、シリーズを通して味わえる魅力だ。隠居の身でありながら精力的に外出する清左衛門が散策や釣りをする姿を通して、山や川が見せる春夏秋冬の顔を楽しむことができる。
そして四季を感じられるもう一つの名物シーンが、熊太と足繁く通う小料理屋・涌井の場面。旬の魚や山菜、野菜を、女将・みさ(麻生祐未)や清左衛門が説明してくれ、それを熊太が実に美味しそうに口に運ぶ。「うまい」の言葉すら不要で、思い出すだけで垂涎ものだ。
涌井での清左衛門は自らの武勇伝や説教を垂れるなど、現代サラリーマン上司のNG行動は当然とらず、お酒を有効なコミュニケーションツールとして活用している。
お酒がなくても、熊太はもちろん、何かと世話をしてくれる息子の妻・里江(優香)、憩いの場を提供する涌井の女将・みさらおなじみの面々とのやり取りは、放送を重ねて息ぴったり。約10年になるシリーズ作品ならではの強みを感じる要素となっている。
最新作は3月にテレビ放送「若い方々の息吹を見てほしい」
そして3月にはシリーズ最新作『三屋清左衛門残日録 春を待つこころ』が、時代劇専門チャンネルで放送される(3月8日19:00~ほか)。
レギュラー陣との掛け合いが熟練度を増すのに加え、今作では清左衛門と青年剣士・信次郎(藤岡真威人)や、2人が巻き込まれる事件の鍵を握る巫女・照日(大友花恋)との交流を軸に物語が展開される。こうした若い俳優との共演に、北大路は「新鮮な輝きを見ることで、新しい気づきをもらうことができた。若い方々の息吹を見てほしい」と刺激を受けたようだ。
シリーズを通して描かれてきた藩内派閥争いの弊害など、現代にも通じる問題を映し出している『三屋清左衛門残日録』。シリーズ過去7作品はスクリーンで、最新作はテレビで、ここまで紹介してきた様々な要素からシリーズの“厚み”を感じながら鑑賞すれば、物語がより楽しめるはずだ。
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