BANDAI SPIRITSが手がけるプライズフィギュアブランド「英雄勇像」は、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」といった実写特撮ヒーローを、映像作品のイメージそのままに忠実再現したフィギュアシリーズだ。

戦闘態勢に入ったヒーローたちが必殺技を繰り出す「一瞬」を切り取ったかのような臨場感あふれるポージングと、細部にまで神経が行き渡った「技巧の極致」というべき精密造型が特撮&ホビーファンの間で話題となり、現在も続々と新商品が企画・開発されている。

  • (奥)「英雄勇像」から登場するウルトラマンシリーズ
    (手前)「特撮STAGEMENT」シリーズ

ここでは、「英雄勇像」シリーズの開発担当を務める横川愼一氏と鴨川功氏に、「英雄勇像」シリーズが誕生するに至った経緯や商品のこだわりポイントを伺っていく。また、新生活の時期である今、未来を担う若き社会人に向けた力強いエールと「目の前の仕事を楽しむ方法」についてアドバイスをもらった。

  • (左)鴨川功氏 1998年、バンダイに入社。北海道・東北地区の営業を担当した後、経理部に異動。アパレル事業部で服飾雑貨の商品企画に携わり、キャンディ事業部を経て2020年からプライズ事業部に。
    (右)横川愼一氏 1990年、バンダイに入社。営業企画、仕入れ・生産管理を経験し、1994年からキャラクタートイの事業部でグッズの企画開発を担当。キャンディ事業部、コレクターズ事業部を経て、2019年からプライズ事業部に在籍。

どこにストロングポイントを置くか。熟考を重ねた「英雄勇像」のコンセプト

――まずは、横川さん、鴨川さんが特撮作品と深くかかわるようになった経緯を教えてください。

横川 私はバンダイのキャラクタートイの事業部へと異動してからです。『ゴジラVSシリーズ』(1994年/東宝)や『ビーファイターカブト』(1996年/東映)などを担当し、かかわりが深くなりました。

ウルトラマンシリーズとは『ウルトラマンティガ』(1996年/円谷プロ)の途中を皮切りに、『ウルトラマンダイナ』(1997年)、『ウルトラマンガイア』(1998年)、『ウルトラマンナイス』(1999年・インフォマーシャル)、そして映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(2000年)、『ウルトラマンコスモス』(2001年)までを担当しました。その後、キャンディ事業部で「ウルトラ怪獣名鑑」に携わり、現在のプライズ事業部に異動してからは「英雄勇像」の立ち上げを行いました。

鴨川 私はバンダイの経理部から異動し、アパレル事業部で服飾雑貨の企画担当を務めました。ここで企画のイロハを学び、ウルトラマンとは『ウルトラマンメビウス』(2006年)からかかわっています。ジーンズセレクトショップ「Right-On」とウルトラマンのコラボ商品など、今までバンダイと取組が無かったアパレルメーカーさんなどとキャラクターコラボ企画を担当していました。

そしてキャンディ事業部食玩チームに異動して「カード付ウエハース」の企画などを担当した後、プライズ事業部で横川さんと一緒に「英雄勇像」に取り組むことになりました。

――「英雄勇像」の立ち上げには、どのような背景があったのでしょうか。

横川 プライズ事業部に異動した際、「これをプライズ商品にしてほしい」と最初に資料をもらったのが仮面ライダーでした。当時の最新作は『仮面ライダーゼロワン』(2019年)だったのですが、企画にあたり前年の『仮面ライダージオウ』(2018年)のプライズ商品を見て、「設定画どおりだけれども、ちょっと無機質なフィギュアだな」という印象を持ちました。

また、『仮面ライダーゼロワン』を見たときに、従来にないスタイリッシュなライダーだと感じ、この部分を商品にももっとしっかりと再現したいと思いました。

――他の事業部でも特撮作品のフィギュアは数多く作られていますが、「英雄勇像」ならではのコンセプトを教えてください。

横川 たとえば、ファンの方ならご存知のとおり、コレクターズ事業部では“プロポーション”と“関節可動”の両立を目指した「S.H.Figuarts」シリーズが高い人気を集めています。非常にクオリティの高い商品で、これと同じ方向で勝負をしても太刀打ちできないと思いました。

そのため、新しい商品を作る際に考えたのは、「どこにストロングポイントを置くか」ということでした。「S.H.Figuarts」はどれも最高に出来が良く、どんなポーズでも再現できるのが魅力です。しかし、ポーズを取ったとき、可動のためのジョイント部が多少なりとも気になります。

そこで思いついたのは、ポージングを固定しつつ、指先の力の入れ加減や構え方、動いたときにできるシワなどを徹底的に再現した「リアルフィギュア」というアイデアです。「S.H.Figuarts」のファンにも刺さるようなストロングポイントを求めた結果、「英雄勇像」のコンセプトが定まりました。

――他の商品にはない“強み”を分析してから開発に至ったのですね。そこからウルトラマンシリーズにも波及したと。

横川 最初は『仮面ライダーゼロワン』から始まった「英雄勇像」ですが、自分がかつて担当していた平成ウルトラマンシリーズでも展開してみたいと考え、円谷プロダクションさんと相談しながら企画・開発を進めました。

というのも、当時は「どうしてプライズにはウルトラマンの商品が少ないんだ?」という意見が社内からあがっていたんです。では、どういうところに問題があったのか? それは、これまでの商品に魅力が足りなかったからではないかと仮説を立てました。そこで、「これがほしい!」とファンの方々に思わせて、アミューズメント施設まで来てもらえるような商品を企画すれば、状況は変わるのではないかと考えました。

――その第一弾となる「ウルトラマンティガ 英雄勇像 ウルトラマンティガ」の登場から約1年半の歳月が過ぎ、今や「英雄勇像」はウルトラマンのファンにとって信頼のおけるブランドとなった模様です。「英雄勇像」というネーミングには、どのような意味が込められているのでしょうか。

横川 シリーズ名を考えるにあたり、まず頭に浮かんだことがあります。それは、仮面ライダーやウルトラマンが日本国内だけでなく、アジア全域にわたって高い人気を誇っていることです。そうすると、漢字のほうがインパクトがあると思い、ヒーローではなく「英雄」という文字を使いました。「勇」はヒーローの活躍をイメージし、スタチューの「像」と組み合わせた結果、「英雄勇像」というネーミングになりました。

――ネーミングにも思いがこもっているのですね。また、たとえば「ウルトラマンティガ 英雄勇像 ウルトラマンティガ」を手に取ってみるとわかりますが、ファイティングポーズを取っているティガの腰の入れ方や、ビシッと伸ばした指先の力の入れ具合など、ただごとではない「凄み」を感じさせますね。

横川 フィギュアを作る際には、まず原型と呼ばれる商品開発の元になる造形物を作ります。 私が担当した「ウルトラマンティガ 英雄勇像 ウルトラマンティガ」「ウルトラマンガイア 英雄勇像 ウルトラマンガイア(スプリーム・ヴァージョン)」などは、フリーの原型師である稲上信行さんが手がけられています。稲上さんは、『平成ウルトラシリーズ』の放送当時にバンダイ商品の生産工場で原型製作を担当した方です。当時の映像やスチル写真を熟知した上で、腕の角度や手首の返り方まで密に打ち合わせて造型に至ります。

  • 「ウルトラマンティガ 英雄勇像 ウルトラマンティガ」グリッターティガ

「英雄勇像 ウルトラマンティガ」は、映画『ウルトラマンティガTHE FINAL ODYSSEY』でスーツアクターの権藤俊輔さんが演じられた「ティガの最終形態」を意識しているのですが、その特徴は伸ばした右手にあります。TVシリーズのときは縦に構えていた手が、映画のときはやや水平になっているんです。ティガ、ダイナ、ガイアを経て、「権藤さんが演じるティガの“最終”にして“究極”の状態を立体化したい」という我々の想いが込められています。私から稲上さんにお願いしたのは、「ティガの“肩で息をしている”様子を再現してほしい」ということ。稲上さんのテクニックによって、素晴らしい実在感のあるティガのフィギュアが生まれたと確信しています。

  • 「ウルトラマンティガ 英雄勇像 ウルトラマンティガ」グリッターティガ

  • 「ウルトラマンガイア 英雄勇像 ウルトラマンアグル(V2)」
    (2022年3月29日(火)より全国のアミューズメント施設にて順次登場予定)

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鴨川 私の担当は、ニュージェネレーションと呼ばれる近年のウルトラマンシリーズになります。 直近の登場アイテムですと、「ウルトラマントリガー 英雄勇像 ウルトラマントリガー マルチタイプ ゼペリオン光線ver. SUNSET GLOW EDITION」です。横川さん×稲上さんの商品を横目で見ながら、あのように“魂を宿す”くらいのクオリティに近づけなければ、と常々思っています。

  • 「ウルトラマントリガー 英雄勇像 ウルトラマントリガー マルチタイプ ゼペリオン光線ver. SUNSET GLOW EDITION」
    (2022年3月10日(木)より全国のアミューズメント施設にて順次登場中)

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ニュージェネレーションと呼ばれる近年のウルトラマンシリーズは、商品化に必要なデータが豊富にあります。しかし、手作りの原型ならではの良い部分が、「英雄勇像」には求められていると思います。スーツアクターさんが身体を動かした際、スーツにどのようなシワが出るのか。その絶妙な質感を出すべく、各原型師さんが工夫と努力を重ねているところです。

3月にその「英雄勇像 ウルトラマントリガー マルチタイプ ゼペリオン光線Ver.SUNSET GLOW EDITION」が発表されます。先にファイティングポーズのトリガー (2021年10月登場済 ウルトラマントリガー 英雄勇像 ウルトラマントリガー マルチタイプ) が登場していまして、カラーリングの妙味にも期待してほしいですね。

横川 ラインナップにもこだわりがあります。最初の「ウルトラマンティガ 英雄勇像 ウルトラマンティガ」は、先ほど申し上げたとおり『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』での権藤さんの最終形。そして次に発表した「ウルトラマンガイア 英雄勇像 ウルトラマンガイア(スプリーム・ヴァージョン)」は中村浩二さんの最終形。そして「ウルトラマンガイア 英雄勇像 ウルトラマンアグル(V2)」は清水一哉さんの最終形ということで、当時から懇意にさせていただいている3人のスーツアクターさんの最終かつ究極の姿を立体化したいと思い、このラインナップでのスタートにしています。

  • 「ウルトラマンガイア 英雄勇像 ウルトラマンガイア(V1・V2)」
    (2022年5月より全国のアミューズメント施設にて順次登場予定)

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ファンの方々からは「ウルトラマンダイナが出ていないじゃないか」と言われてしまいそうですが、今年はダイナの登場から25周年となる記念イヤーです。今年の8月にダイナの登場を予定しております。

2022年8月より全国のアミューズメント施設にて順次登場予定
ウルトラマンダイナ 英雄勇像 ウルトラマンダイナ(フラッシュタイプ)
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「英雄勇像」を通して感じる「仕事の楽しみ方」

――ヒット商品となった「英雄勇像」シリーズ誕生の背景には、お二人がこれまで培ってきたさまざまな経験やノウハウがあったのですね。
さて、新生活となるこの時期には、新たなステージを迎える読者も多くいます。仕事の楽しさ、厳しさを肌で感じ始めた若い世代の方々にとって参考になるような、お二人の「仕事の流儀」というものを教えてもらえますか。

横川 良くも悪くも、仕事には「個性」を発揮することが大事です。「英雄勇像」も、「S.H.Figuarts」には総合的な面では敵わないにしても、どこか一点だけでも突出してやろうと意識していました。何にしても人間がやることなので、そういった考えでいいのではないかと思っています。

前任者からコンセプトを受け継いで、それに乗っかってそのまま商品を作る。それも大切な仕事ではありますが、自分が担当するからには今までのものにどんな工夫を加えて、いかに変革ができるかを考えたい。モノ作りだけではなく、仕事の効率を見直すとか、さまざまな部分でそういった姿勢は必要だと思います。

「今はこういう仕事の仕方だけど、自分ならこうするぞ」といった“野心”は常に持っていてほしいですね。もちろん、そういった自信や野心を示すためには根拠が必要なので、いろいろな人を納得させる自分なりの根拠をしっかり持てるよう、多くの経験、体験、勉強、努力をしてください。たとえ失敗したとしても、次に成功するための糧となりますから。

鴨川 「自分がやりたい仕事に就ける人はなかなかいない」という話をよく聞きます。僕自身も、商品開発に携わってからけっこうな年月が経っていますが、「これだ!」と自信をもって作れた商品はほんのわずかです。「これは俺じゃないほうが、良いものになるのではないか」など、弱気になってしまうこともありました。

どんな職種でも、大きなプレッシャーに潰されそうになったり、手放して逃げたくなったりすることがあるかと思います。しかし、たとえそんな状況であっても、仕事を「好き」になる手段や方法はどこかに潜んでいるものです。

自分の話をすると、以前少し苦手なジャンルの商品を担当し、行き詰まったことがありました。そんなとき、ちょうど「英雄勇像」に出会ったんです。幼少時から好きで、若手時代にかかわっていた「ウルトラマン」ともう一度向き合えると思ったら、仕事に対する前向きな気持ちが甦ってきました。

横川さんが作るものすごくクオリティの高い商品が眼前にそびえたっているので、もちろんプレッシャーはありますが(笑)、それでも「ウルトラマンが好きだ」という想いの強さで乗り越えられます。くじけそうになったときは、自分の気持ちをもう一度奮い立たせるようなことを見つける……仕事にあたっては、大事なことなんじゃないかと思います。

横川 仕事のやり方への考えは人それぞれですが、「やらされている感」ではなく「自分がやっている感」が出ると、「仕事を楽しむ」ことにつながるのではないでしょうか。自分で考えて行動した結果、それまでの状況が良いほうに変わったのなら、「俺がやったんだ!」という自信につながります。達成感というのはそういうとき生まれると思います。

会社員は“機械”ではなくて“人間”ですし、個性の違う人たちが組織という集団を作っている。だからこそ、与えられた業務をただ機械的にこなすのではなく、自分なりの個性や考え方をプラスして「変化」をもたらしていったほうが、気持ち的にもより良い方向に傾くでしょう。


「英雄勇像」では、今後も歴代ウルトラマンのフィギュアが続々と登場。また、「英雄勇像」シリーズ以外にもウルトラマン作品のアイテムがラインナップされている。3月15日(火)より順次登場する「ウルトラマンダイナ 特撮STAGEMENT ウルトラマンダイナ #49新たなる影」は、ウルトラマンダイナ(フラッシュタイプ)、ゼルガノイド、テラノイドの全3種を展開し、それぞれを連結して楽しめるジオラマフィギュアだ。小さいながら精巧な作りにも注目してほしい。

  • 「ウルトラマンダイナ 特撮STAGEMENT ウルトラマンダイナ #49新たなる影」
    (2022年3月15日(火)より全国のアミューズメント施設にて順次登場予定)

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開発担当者たちの「仕事の流儀」が詰まった渾身のフィギュアブランド「英雄勇像」。全国のゲームセンターやアミューズメント施設で、ぜひ見つけてみてほしい。

紹介アイテム一覧

2022年6月より全国のアミューズメント施設にて順次登場予定
ウルトラマンオーブ 英雄勇像 ウルトラマンオーブ オーブオリジン
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2022年7月より全国のアミューズメント施設にて順次登場予定
ウルトラマンゼロ 英雄勇像 ウルトラマンゼロ
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ウルトラマンZ 英雄勇像 ウルトラマンゼット
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2022年8月より全国のアミューズメント施設にて順次登場予定
ウルトラマンダイナ 英雄勇像 ウルトラマンダイナ(フラッシュタイプ)
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今後の「英雄勇像」シリーズの情報は
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(C)円谷プロ (C)ウルトラマントリガー製作委員会・テレビ東京

[PR]提供:BANDAI SPIRITS