犯罪収益移転防止法はマネーロンダリングをはじめとする金融犯罪を防止するために作られた法律で、違反すると刑罰が課される可能性があります。 銀行口座の売買などの行為も規制していることから、一般市民にとっても身近な犯罪トラブルの1つです。 この記事では、犯罪収益移転防止法の内容と、意外と身近で起こりうる代表的な手口をご紹介します。

口座の売買は違法!犯罪収益移転防止法違反になる

「自分の代わりに銀行口座を開設してほしい」 「10万円あげるから、使っていない口座の通帳やキャッシュカードを貸してほしい」

そういった話を友だちやSNSで知り合った人から持ちかけられた経験がある人もいるかもしれません。

しかし、こうした口座の名義貸しや銀行口座の売買は犯罪です。 犯罪収益移転防止法によって、口座を売った側も買った側も処罰される可能性があります。

「仲が良い友だちからのお願いだから」「いいお小遣い稼ぎになりそうだから」といって、安易に誘いにのってしまうと、あとでトラブルに巻き込まれてしまうかもしれません。

犯罪収益移転防止法とは

犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)は、テロ資金供与やマネーロンダリングといった犯罪組織に関わるお金の動き、あるいは振り込め詐欺を始めとする犯罪によって得られたお金の移動を規制するための法律です。

犯罪収益移転防止法の目的

犯罪収益移転防止法が制定された目的は、「犯罪者や犯罪組織、テロ組織などへの資金供給を絶つことで犯罪行為による被害を減らし、また、犯罪行為で得られたお金がビジネスで使われることがないようにしよう」というものです。

たとえば犯罪の被害者から一度犯人グループの手にお金が渡ってしまうと、複数の口座を経由するなどして、奪われたお金がどこに行ったのかわからなくなります。

また、犯罪行為で得られたお金がマネーロンダリングされた結果、合法的なビジネスの資金源として使われてしまうという可能性も否定できません。そうなってしまっては、被害者としても奪われたお金を取り戻すのは難しくなるでしょう。

資金の出入りから絶つことで犯罪者・犯人グループの活動を防止する

詐欺をはじめとする金融犯罪では、犯人グループの手にお金を渡さない、あるいはグループのメンバー間・組織間での資金を移動させないようにして犯罪者への資金供給を絶つ、といったことが犯罪の防止に非常に重要になります。

また、国際的にはテロ組織などによる重大犯罪が問題になっており、これらの組織などへの資金の供給を絶つ必要性が指摘されています。

上記のような背景を踏まえて、作られた法律が犯罪収益移転防止法なのです。

銀行の本人確認が厳しくなった理由も犯罪収益移転防止法が原因

銀行口座を作るときの本人確認や利用目的の確認が以前より厳しくなった、と感じている人もいるのではないでしょうか。 実は、それも犯罪収益移転防止法の影響です。

口座開設時の本人確認などが甘く、簡単に口座を作ることができるとなると、犯罪組織に悪用されてしまうリスクが高くなります。 したがって、犯罪収益移転防止法では金融機関側にも、本人確認強化などの対策を求めているのです。

他人に使わせる口座の開設はそもそも違法。口座凍結の可能性も

そもそも他人に使わせる目的で口座を開設することは違法行為ですが、口座開設の際に利用者側がウソの利用目的を答えたり身分を偽ったりした場合、金融機関側からも取引停止や口座の凍結といった措置を取られる可能性があります。 すでに持っている口座を他人に売ったことがバレた場合も同様です。

軽い気持ちでやったことが犯罪になってしまう可能性があります。たとえ親友に「口座を代わりに作ってほしい」「使わせてほしい」と頼まれても、承諾してはいけません。

他人に口座を売るとどうなるの? 犯罪収益移転防止法の罰則

他人に売った銀行口座や、誰かの代理で開設した口座は犯罪行為に使われるリスクが高いです。 もしかしたら振り込め詐欺の振込先に使われたり、怪しいビジネスに悪用されたりするかもしれません。

軽い気持ちでやったことが、詐欺などの重大犯罪の片棒をかつぐことになるかもしれないのです。

また、前述したとおり、そもそも銀行口座を売買する行為やウソの事実を告げて新しく口座を開設したりする行為そのものが違法です。 銀行などの金融機関からペナルティを受けるだけでなく、刑事責任を問われる可能性もあります。

口座売買の罰則は「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」両方適用の場合も

たとえば口座売買を行った場合、犯罪収益移転防止法違反ということで、売った側・買った側双方が処罰されます。

その法定刑は1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金です。場合によっては両方の刑が併科されることもあります。

詐欺罪を問われると「10年以下の懲役刑」に

また、口座開設時に誰かに売り渡す目的を隠すなど何らかのウソをつき、金融機関の職員を騙して口座を作った場合には詐欺罪に問われる可能性があります。

詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役刑です。 罰金刑が存在しないため、起訴されてしまうと執行猶予がつかなければ刑務所に行かなくてはいけません。

詐欺罪について詳しくはこちら>>

口座売買・譲渡トラブルのよくある手口

口座の売買は違法行為です。しかし、「犯罪である」という意識を持たないまま、お小遣い欲しさに一般市民が加担してしまうケースも相次いでいます。

SNSで口座売買を持ちかけるケース

SNSで知り合った相手を、「口座を売らないか」「簡単で稼げるバイトがある」と勧誘し、銀行口座や暗号資産口座の売買を持ちかける手口がよく見られます。

実際、SNSやネット掲示板では口座の買取や売却を勧誘する事件はしばしば起きており、犯罪収益移転防止法違反容疑で逮捕者も出ています。

自分名義で契約した携帯電話の売買も犯罪

なお、犯罪収益移転防止法とは関係ありませんが、携帯電話の売買も犯罪です。 他人の代わりに自分名義で契約した携帯電話は、売却した自分名義の口座同様、違法なビジネスや詐欺などの犯罪に使われる可能性が高いです。

「簡単に稼げる美味しい話」に安易に飛びつかないように注意しましょう。

ネット犯罪(サイバー犯罪)とは >>

他人名義の口座を作らせるケース

他人になりすまして銀行口座を作らせることを依頼するという手口もあります。

前述したとおり、ウソをついて口座を作る行為は違法行為です。 たとえ仲の良い先輩や友人に頼まれても、代わりに銀行口座やFXなどの口座を作ってあげるのはやめましょう。

借金の担保に口座を渡してしまうケース

違法なビジネスを行っているヤミ金業者の中には、借金をした人に借金の担保として通帳やキャッシュカードを渡すように要求するケースもあるようです。

さらにヤミ金で借りたお金の振込先として、自分の口座が悪用される可能性もあります。

知らず知らずのうちに自分の口座を犯罪グループに渡したことになってしまい、トラブルに巻き込まれる可能性もないわけではありません。

不正利用トラブルを避けるためにも、怪しい金融業者からはお金を借りないように注意しましょう。

口座の売買などを持ちかけられて困ったら弁護士に相談を

口座売買や、他人になりすまして口座を作る行為は犯罪です。

こうして売買・譲渡された口座は詐欺やマネーロンダリング、ヤミ金融などの犯罪行為に悪用されるおそれが高く、自分の知らないうちに金融犯罪に加担させられることにもなりかねません。

SNSなどで代理での口座開設を持ちかけられ、自分が犯罪に関与してしまったのではないかと不安な場合は弁護士までご相談ください。

刑事事件弁護士相談広場 >>

[PR]提供:株式会社Agoora(アゴラ)