国策である「キャッシュレス化の推進」の上でクレジット業界には、安全・安心な利用環境の整備が求められています。そのような中、株式会社セディナは、クレジットビジネスを複合的な決済ソリューションとしてとらえ、特徴のある取り組みを行っています。今回は、日本クレジット協会の副会長でもある同社代表取締役社長の中西智氏にお話を伺いました。

クレジット業界の現状

村山: 2017年4月に予定していた消費税の税率変更が2019年10月に延期されましたが、個人消費への影響や、さらに英国のEU(欧州連合)離脱決定にともなう、日本や世界の経済への影響をどのようにお考えですか。

中西: 年明け以降、中国経済の減速、米国利上げ先送りに伴う円高が進行、株価も不安定な状況となっています。日本銀行が1月に導入した「マイナス金利政策」は、長期的には企業の設備投資や国民の住宅購買を促進し、消費を活性化させるなどのプラス効果は見込まれておりますが、現状、GDPの約6割を占める個人消費はいまだ低迷を続けており、政策の効果が出るまでにはもう少し時間がかかるのではないかと思います。また消費税率10%への再引き上げも見送られることとなり、今後の経済動向はますます不透明感が増しております。

また、国民投票でEC離脱派が勝利した英国を起点として足許で金融市場の混乱が生じており、今後のEUとの交渉の行方も不透明なことから、企業が投資を手控えるなど景気の下押し圧力が強まることが懸念されます。負の連鎖が続けば、世界経済や国際情勢の不確実性が急速に増加し、日本経済にも大きな影響を及ぼしかねません。急激な円高・株安が実体経済に及ぼす影響を注視しつつ、景気テコ入れ策の検討も急ぐ必要があります。先の伊勢志摩サミットでは、日本をはじめとしたG7が金融政策、財政政策、構造改革の3つの政策をそれぞれの国の事情を反映しつつ、バランスよく協力して進めていくこととなりましたので、サミットを契機に相乗効果が生まれ、日本全体の景気浮揚効果へと波及することを期待しています。

キャスター 村山 千代氏

村山: 「日本再興戦略2016」の中にクレジットカードが取り上げられるなど、業界に対する期待が大きいと思いますが、どのようにお考えですか。

中西: 2015年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改定2015」において「キャッシュレス化の推進」が盛り込まれたことは、ご承知のことかと思います。更に2016年6月には「日本再興戦略2016」が公表されました。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催等を踏まえ、訪日外国人の利便性の向上や安全・安心なカード利用環境の整備を進めるために2015年3月に設置された「クレジット取引セキュリティ対策協議会」において、2020年に向けた具体的な目標・各主体の役割等を取りまとめた「実行計画」が2016年2月に約1年間の協議を経て策定されました。

また、割賦販売法の見直しについて、2016年4月より「産業構造審議会 商務流通情報分科会 割賦販売小委員会」が再開され、2015年7月に取りまとめられた報告書の内容に加えて、実行計画を更に深堀し、実効性を確保するための内容の追補の報告が取りまとめられたところです。

「実行計画」の目標を確実に実行することは、日本がセキュリティホール化する懸念を払拭し、『クレジットカードが使いやすい安全・安心な国 日本』の実現に向けてのクレジット業界の重大な責務と考えております。更に「日本再興戦略2016」においては、キャッシュレス化等によるビッグデータの利活用に向けて積極的な取組みも掲げられており、その取組みを確実に実行することで消費者のニーズのみならず、インバウンド需要等に誠実に応える大きな柱になるのではないかと思います。

一方、キャッシュレス化の推進が進む中で、我々クレジット会社がプレーヤーの中心となっている個別クレジットも脈々と消費者の生活に根付いており、決済ツールとしてなくてはならないものです。個別クレジットの信用供与額のここ10年のトレンドを振り返りますと、10年前には約10兆円の規模であったマーケットが6年前には6兆5千億円まで減少していました。しかし、ここ3年は反転しております。平成25年7兆4千億円、平成26年7兆9千億円、平成27年には8兆1千億円と順調に回復してきております。大きな要因としては、高額で長期払いの国産車・輸入車のオートローンの伸長を始めとし、従来商材(二輪・貴金属・宝飾等)でも若年層を中心にWeb申込等の推進を図った結果、需要が喚起できたものと思われます。

しかしながら、決して楽観視できるものではなく、引き続きこの底固い個別クレジットをベースに、カード事業、決済代行事業のビジネスマッチング推進を行うと共に、新しい事業分野の創造を目指し、総合決済ビジネスの担い手として皆さまと共にたゆまぬ努力と知恵を結集することで、この業界の存在意義をしっかりと果たしていきたいと考えています。