話題となった「失恋ショコラティエ」、結局何がポイントだったのだろうか

テレビを見る人が少なくなったと言われる昨今ですが、今クール(1月から3月)で人気を博しているのが、松本潤さんや石原さとみさんらが出演しているフジテレビ月曜9時のドラマ「失恋ショコラティエ」。漫画が原作とあって既存のファンは「どうなの? 」といった心境でみていたことかと思いますが、1話、2話と回を重ねることに話題になり、世の女性たちの心をしっかりと捉えているようです。一体なぜ、『失恋ショコラテイエ』が女性の心を捉えているのでしょうか。

ご存知の通りこのドラマの原作は、累計発行部数100部超えの水城せとなさんの同名コミックです。そのため、もともと女性に共感を得やすい原作であることが、人気を博している大きな理由といえます。ストーリーは、チョコレート専門の職人である主人公・爽太の恋愛物語。チョコレートに目のないヒロイン・紗絵子にふられた主人公が彼女を振り向かせるため、フランスへ渡って修業し、一流のショコラティエになって帰国し、再びヒロインにアタックするというストーリーです。

人妻になっても想い続ける主人公

このドラマ。少女マンガではありますが、主人公が恋心を抱くヒロインは結婚し、人妻になっているというところに女性たちの心を捉えたポイントがあるのだと思います。つまり、好きな相手が結婚したから諦めるのではなく、いつまでも想い続けるという主人公のひたむきさが、女性たちの心を捉えているのではないでしょうか。

想い続けるといっても、ちょっとやそっとの時間ではありません。爽太は高校時代からヒロイン紗絵子に憧れ続け、1人の女性を約10年にわたって想い続けています。フラれたら次。ではなく、いつまでも想い続けて、挑戦してくれる男性が爽太なのです。度が過ぎるとストーカーですが、その強い想いは今では少なくなった硬派な男性を彷彿とさせます。しかも、紗絵子は夫からDVを受けています。爽太は、塔に囚われた紗絵子を救い出す白馬の王子様でもあるのです。

そして、爽太は、紗絵子に振り向いてもらおうと腕を磨き、チョコレート作りに励みます。つまり、恋愛や好きな女の子のことだけを四六時中考えているのではなく、結果的に仕事に打ち込んでいるわけです。

年下男性と年上男性のハイブリッド型の主人公

仕事に打ち込む男性――。それも野心ではなく、自分を喜ばそうとするために仕事に取り組む男性。しかも頼りがいもある。そんな爽太は、年上の仕事ができて引っ張ってくれる男性像と、一途で無条件に愛してくれる年下男性のハイブリッドなんです。一言でいうといいとこ取りでもあるんですが、ここに女性の心を捉えたポイントがあるように思います。

もちろん、チョコレートをめぐる小道具や紗絵子のファッションなど、目が離せないポイントはたくさんあります。ですが、主人公の爽太の魅力こそが、女性の心を捉えている最大の理由だと感じます。

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理に詳しい。
現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は「化粧にみる日本文化」「黒髪と美女の日本史」(共に水曜社)など。