モロッコの鍋「タジン鍋」が蒸し野菜ブームの火付け役に

これまで野菜の食べ方&調理法の定番といえば、生サラダにして食べる、お肉と一緒に炒める、煮物にする、鍋の脇役の具材……といったところでしょうか? もともと献立の主役になることが少ない野菜ですが、従来とは少し違った食べ方&調理法によって、最近、にわかに野菜の人気が上昇しています。その食べ方&調理法が「蒸す」です。

「従来とは違った」と言っても、野菜を蒸す調理法自体は昔からあり、今に始まったことではありません。昭和の時代には、蒸し器という調理器具がどこの家庭の台所にもあり、さつまいもやじゃがいもを蒸した「ふかしいも」が、子どものおやつや夜食になっていました。ところが、いつの間にか台所から蒸し器が消え、それと同時に、野菜を蒸して食べることも、ほとんどなくなりました。

「野菜を蒸す」という、かつての日本の食習慣をよみがえらせたのは、なんと日本から遠く離れたモロッコの地で使われている鍋、そうです、今人気の「タジン鍋」です。最近、スーパーの調理器具売り場やホームセンターなどでよく見かける、フタがとんがり帽子のような形をした鍋。その風変わりな形が気になっている人も多いのではないでしょうか? すでに購入された方もいると思います。

とんがり帽子型のフタには、もちろん理由があります。加熱されて野菜から出た水分=蒸気は上昇し、とがった部分で冷やされて下降します。日本の土鍋のようにフタに穴が空いていないので、野菜から出た蒸気は、外に逃げることなく、鍋の中で循環。水をたさなくても、野菜から出る水分だけで火が通り、焦げ付くことはありません。この循環システムが、一般的な蒸し器との違いです。通常の蒸し器は二重構造になっていて、下の鍋で水を沸騰させ、その蒸気が食材に当たることによって蒸す仕組みになっていますが、タジン鍋は、食材から出る水分だけで蒸します。

「タジン」の意味は、じっくり煮込んだ肉と野菜のシチューのこと。本来、タジン鍋は、野菜だけを蒸すものではなく、肉や魚の煮込み料理に用いられるものなので、1つ持っているとレシピの幅が広がります。ただし、日本で売られている「タジン鍋」は本場、モロッコ製ではなく、フランス製や有田焼のものが多いようです。

今や一家に2つ!? 「ルクエ」のスチームケースが人気沸騰

さて、モロッコの次は、ジブラルタル海峡を渡りスペインへ。バルセロナに本社のある「ルクエ」社の「スチームケース」が、今、人気急上昇中です。レギュラーサイズは、26cm×13.5cmの薄型(18.5cm×12cmのものもあります)。ふた付きのシリコン製の容器に野菜を入れ、フタをして、電子レンジで加熱すれば、蒸し野菜ができるというもの。薄型ながら、ケース内に適度な空間ができるので、野菜から出た蒸気が対流し、野菜の水分だけで蒸すことができます。基本は、タジン鍋と大差ありません。

ルクエ社のスチームケースも野菜だけではなく、肉や魚料理にもOK。キャベツ、長ネギ、ニラ、きのこ類と豚薄切りを入れてチンすれば、「蒸し豚しゃぶ」が完成。豚肉を鮭の切り身にすれば「鮭のレンジ蒸し」に。このほか、ピラフやリゾットなどのご飯ものや蒸しケーキも作れるという優れもの。大人気にも納得します。

100円グッズでお手軽蒸し料理

タジン鍋もルクエのスチームケースも、優秀な便利グッズですが、いかんせん、値段がやや高め。初期投資もかかります。そこで、オススメなのが100円グッズの蒸し器。「電子レンジ調理器 温野菜」(写真)は、密閉容器の中にざる状のものがついていて、その上に洗った野菜を乗せ、電子レンジで加熱すればOK。水を入れる必要はありません。

ほうれん草、ブロッコリー、アスパラは各100gで1分30秒~2分。じゃがいも、さつまいも、かぼちゃは、各100gで2分30秒~3分30秒で火が通ります。小松菜1/2束で試したところ、1分でほどよい加熱状態に。鍋で茹でると、茹ですぎてべチャッとした食感になることが多いものですが、「電子レンジ調理器 温野菜」を使うと、小松菜の歯応えが損なわれません。「わざわざこれを使わなくても、耐熱容器とラップで、レンチンでもいいのでは?」と思う方もいるでしょうが、ラップだと、水分が飛んで、野菜が乾燥するという失敗も。

もう1つオススメなのが、100円の竹製のせいろ(直径18cm、高さ8cm・写真)。これは電子レンジの使用は不可で、沸かした鍋の上に乗せ、蒸気を当てて蒸すというもの。手間はかかりますが、野菜だけではなく、シュウマイや餃子を蒸せば、おうち飲茶気分が楽しめます。ミニサイズなので、洗うのが簡単ですし、収納場所を取らないので、1つ持っていてもいいかも。

蒸し野菜なら栄養分が逃げない、油不要でヘルシー

最後に、蒸し野菜の主なメリットは次のとおり。

  1. 茹でる場合と異なり、栄養分やうまみが水に溶け出さない。
  2. 野菜のうまみが損なわれないので、野菜本来の味が出て、余分な味つけが不要。薄味で健康的。さらに調味料の節約にも。
  3. 煮込まないので、煮崩れなし。
  4. 油を使わないので低カロリー。

以上のメリットは蒸し野菜に限らず、もちろん肉や魚にも当てはまります。プチ家庭菜園がはややっている昨今、自作の野菜の味を思う存分、堪能するなら「蒸す」のが一番と言えるかもしれません。

■「おうちごはん」で節約シリーズ・バックナンバー