maneoの妹尾賢俊社長

従来、お金を借りる場合は、銀行などの金融機関や信販会社、あるいは消費者金融からと相場が決まっていました。しかし、この10月からお金を借りたい人に加えて、お金を貸したい人の要望にも応える、画期的なサービスが始まります。それが「maneo」(以下、マネオ)です。

マネオは、ネット上のオークション市場とSNS(ソーシャルネットワークサービス)を組み合わせ、お金を借りたい人(ボロワー)とお金を貸したい人(レンダー)をつなぐ融資の電子市場(ソーシャルレンディングサービス)です。メンバーとして登録するためには、日本在住の20歳以上65歳未満であれば誰でも可能ですが、お金を借りたい人は20歳以上60歳未満、年収は300万円以上などの条件があります。

お金を借りたい人は、自分のプロフィール / 年収 / 借りたい金額や目的 / 期間 / 借入金利などを設定して、ネット上でオークションを開催します。お金を貸したい人はこれらの情報を見て判断し、お金を借りたい人が設定した借入金利より低い金利で入札を行ないます。お金を貸したいという人が複数いる場合は、金利の低い順に落札されます。オークションが終了後、落札条件により貸し出しが行われ、マネオがお金を借りたい人の返済管理およびお金を貸したい人への返済元利金の分配を請け負います。

この仕組みを開発したmaneoの妹尾賢俊社長に、マネオが誕生したきっかけ、苦労した点などを伺いました。

資金の偏在を解消する画期的な仕組み

――マネオが誕生したきっかけを教えてください。

以前、銀行(東京三菱銀行:現在の三菱東京UFJ銀行)で働いていたときに問題意識としてあったのが、お金を持てる者と持たざる者の格差、いわゆる格差社会の進展です。

お金を持っていなくても、現実問題として20代後半から結婚、出産、教育など支出を伴うライフイベントが目白押しとなります。もし手持ちのお金がなく借りたいと思ったときに、すぐに思い浮かぶのは銀行です。しかし、銀行で借りようとしても手続きが面倒だったり、営業時間内に行くことが困難だったりします。あとは、比較的金利が高くても手軽に利用できる消費者金融を利用せざるを得ないという意味で二極化していました。しかし、ソーシャルレンディングであれば、窓口に行かなくてもしっかり目的などを書き込み、お金を貸してくれる人に理解されることで、より低い金利でお金を借りることが可能になる、という3つ目の選択肢を提供することができると考えました。

一方、お金を持っている人は、お金を必要としている人々にお金を貸すということで、一番問題としてあった資金の偏在も解消できます。お金のない人、お金を持っている人、この両者がメリットを享受できる社会的価値があるビジネスモデルが、実は海外で存在していることがわかり、ぜひ日本でもスタートさせたいと思ったのが一番大きなきっかけです。

――名前の由来は何ですか?

3つあります。マネーオークションという弊社のビジネスモデルを表す略ということと、お金に関する新しいビジネスモデルということで、お金(maney)と新しい(neo)を組み合わせたということ、もう一つはマネオはラテン語ですが、英語でいうところの「stay」で、いつまでも当社の提供するマーケットに「stay=居続けてほしい」という願いを込めております。この3つをかけてマネオとつけました。

――社名でもあるmaneoの「o」の中にいるカエルの意味は?

カエルは雨を呼ぶ動物として農業と深いかかわりがあり、東南アジアでは財産の神様として崇拝されています。そしてお金が帰るということとかけあわせています。よくお財布にカエルを入れている人がいますが、私も入れていますよ(笑)。

問題は、お金を貸す側がリスクを認識できるかどうか

――サービス開始にあたり、どのような点に苦労しましたか?

金融庁登録が大変でしたね。ソーシャルレンディングというビジネスモデルを日本で立ち上げたいと思って、何人かの共同創業者と勉強会をスタートさせたのが2006年の8月ですが、結局会社として設立したのは2007年4月です。それまでの8カ月間は、このビジネスモデルを日本でどうやってスタートさせるか、法律面でどういった対応が必要になるのか、必要な業登録は何なのかといった研究に費やしました。会社設立後、貸金業の登録をするのですが、こちらは比較的スムーズにいって3カ月くらいでとることができました。しかし、金融商品取引業は金融庁の管轄下にあったので、登録を完了するまでの折衝には非常に苦労しました。

――金融庁登録では、具体的にどのようなことが大変でしたか?

銀行にいた私でさえ、ソーシャルレンディングというビジネスモデルが海外にあると知るまで、直接個人と個人がお金を貸し借りするということについては想像ができませんでしたから、金融庁も理解できるわけはなく、最初はこんなことをやってはいけないと反対されました(笑)。しかし、既に世界ではサービスが認められ利用されていましたし、社会的にも意義のあることですから、何度も足を運び説明をしました。

一番の問題は、お金を貸す人がリスクを認識できるかというところにあるので、リスクの認識が図れるように徹底するということで最終的には認めてもらうことができました。

――今までこういったシステムが日本で登場してこなかった原因は何でしょうか?

実際、日本では金融商品登録業者としては我々が初めてですが、世界中で見た場合、このサービスはサイトとしても30以上あり、いろんな形で各国で行われています。そういうビジネスモデルが立ち上がっているということは、何らかの価値を見いだしているから立ち上がっているわけであって、日本だけそれをやらないという道理はないだろうとは思いました。

とはいえ、金融サービス業ということで、弊社の場合は貸金業と金融商品取引法という2つの法律の制約を受けます。また、銀行や消費者金融業者と勝負しなければいけないという部分もあり、勝算を見いだすことができず、やる人がいなかったのではないかと思います。

次回は、お金を借りる人、お金を貸す人がどんなことに注意すればいいのか、もし戻ってこない場合はどうなるのかなど、最も気になる部分について紹介します。

(インタビュー撮影 : 中村浩二)