「夢のあしあとかぁ……」。そう思いにふけることってありますか? なんだろうね、夢のあしあとって。夢ってキラキラしているものじゃないの? 夢ってとてもハッピィなことじゃないの? 夢ってすばらしくて、楽しくって……。
広辞苑で調べますと、「空想的な願望」「将来実現したい願い」「睡眠中にもつ幻覚」などいろいろ書いてありました。私が今まで歩いてきた夢の道のりは一言で言うならば、めっちゃ「茨道」だったのではないかと思います。普通の舗道やいつもお花が咲いているような道ではなかったと思うんです。最初は想像しましたよ、芸能界みたいなモデルさんの世界や歌の世界って、楽しい毎日でちやほやされたり、キレイなお洋服着て~なんて。
しかし、事務所に入ってすぐそんな想像は打ち消されました(笑)。まず私の所属している部署だけでも300人のかわいくてキレイで身長も高く、スタイルのいい女の子がいるわけです。オーディションに選ばれるだけだって、その中から選ばれなければオーディションに行くこともできず、やっとオーディションに行けることになっても最終的に選ばれた例えば30人ぐらいの超かわいいモデルさんがいて、勝ち取るのはその中からたったひとり。
毎回、戦いのような日々。そして最初は多分100回ぐらいモデルのオーディションに行き、落選していました。普通の人ならば、そのずっと前に「私って才能ないんだわ」と気づいてやめていたかもしれませんが、「オーディションなんて水もの」と悩むよりも次、次! 「次受かるわ!」という気持ちと、落ちるたびに「やるぞぉ!!」という気持ちがわいてきていました。結局モデルのお仕事に執着していなかったので、そこまで悩まなかったのでしょうが、今思えばこの体験があるからこそ、歌を続けてこれたのかもしれないなと思います。
だってここだけの話、夢を続ける一番の秘訣は「ずうずうしいほどの精神力」じゃないかなって思うんです。打たれ強くなっていたからこそ、デビューした後、茨道もたくさん。泣いたりもしたけれど、まだ歌えているわけです(笑)。こう書くと、なんだかすごい忍耐力が必要なの? 夢って? と思われそうですが、なにも100回オーディションに行かなくてもいいんですよ。そんなに大変なことではなく、我慢する必要もなく、もっと簡単に単純に「やりたいか、やりたくないか」……それだけだと思います。
例えば「歌いたい」という気持ちがあれば、歌えばいい。「歌いたいか、歌いたくないか」、それだけではないでしょうか。大きすぎる夢に押しつぶされそうになる前に、自分自身に正しいことをしてあげるのが一番じゃないのかなぁ。こう思えたのも、デビューしてアニメ『機動戦艦ナデシコ』で歌にも恵まれ、順風満帆かと思われたその後、オサレミュージックを出すも売れず……。とうとうなんにもなくなったように思われたとき、他人のイメージや、こうしなければ売れないよ! とか、いろんな方にいろんなことを言われました。けれど結局「なんにもないんだから、好きなように歌お~っと」。そう素直に思えたからこそ、また新たに歌が歌えたし、歌いたいから歌えばいいし、やだったら歌わなければいいや、そう思えました。いわゆる開眼ってやつですね(笑)。
不思議なもので、そう素直になると歌も変わっていく気がします。そして今まで気づかなかったことにも感謝できるようになりました。健康でいたり、生きている限り「やりたかったらやっちゃえばいいよぉ~」デス(笑)。年齢なんてのは、たまたまの生きてきた年数でしかないし、歳を重ねるたびに億劫になることもあると思いますが、歳を重ねないとわからないこともあると思います。私の場合、普通の人よりそのことに気づくのが10年ぐらい遅かったのですが。
好奇心を持ち、冒険だと思うと世界も変わります。で、時々疲れたら、それも良しとしていっぱい泣いたり、ゆっくりしたらいいと思います。泣いて泣いて泣いて、もうどうにもならなくて、生きていたくないようなときに、「もうなにもしたくない! なにもやりたくないの!! やる気も起きない」……そう言ったことがあります。そのときの友達のアドバイスが心にしみました。「なにもしなくていいよ。ただ寝て、なにもしないでゆっくりしてればいいよ。そしたらいつか、なんにもしないのにも飽きてきて、なにかするよ」。
そのとおりです。そのうち、なにもしないのにも飽きてくる(笑)。そしたらまた歩けばいいよね! それではまた次週お会いしましょう。
See you soon love xx.