7月下旬に入って夏ドラマが出そろい、連日さまざまなネット記事やSNSのコメントが飛び交っているが、なかでも印象的だったのは“テロップ”に関する賛否。

まず『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系、毎週金曜22:00~)の冒頭に、「この作品は近未来を舞台にしたSF作品です。登場する団体・人物などは実在するものとは関係ありません。この後、劇中に違法薬物を使用するシーンがありますが、これは違法薬物の危険性を訴えるための演出です。決して現実の薬物の使用・濫用を容認するものではありません」。

続いて『愛の、がっこう。』(フジテレビ系、毎週木曜22:00~)の最後に、「令和7年6月28日に改正風営法が施行されました。このドラマのホストクラブにおける一部表現には、違反となりうる営業行為が含まれています。改正風営法については、番組公式ホームページをご覧ください」というテロップが表示された。

ここまでは批判の声がありながらも大きな問題にはならず放送されているが、そもそもコンプライアンスが厳しい時代になぜ違法薬物やホストクラブを扱った作品が選ばれるのか。単に炎上対策だけではない“お断りテロップ”が使用される背景を、テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • 『DOPE 麻薬取締部特捜課』主演の中村倫也(左)と『愛の、がっこう。』主演の木村文乃

    『DOPE 麻薬取締部特捜課』主演の中村倫也(左)と『愛の、がっこう。』主演の木村文乃

「本当に描きたいもの」は他にある

まず注目したいのはプロデューサーのコメント。

『DOPE』の長谷川晴彦プロデューサーは「近未来、アクション、正反対のバディなどと賑やかなワードが飛び交う本作ですが、注目すべきは高橋海人さんと中村倫也さんが紡ぎ出す人間ドラマです。私、撮影1か月で既におふたりのお芝居で数回泣いています」などとコメントしていた。

違法薬物に関するコメントはなく、「近未来」「アクション」「正反対のバディ」「人間ドラマ」という見どころをピックアップ。その上で「泣ける作品」であることをアピールしている。

次に、『愛の、がっこう。』の栗原彩乃プロデューサーは「“高校教師とホストのラブストーリーを考えている”と(脚本家の)井上(由美子)さんから初めてうかがった時、禁断?ドロドロ?…いろいろな言葉が浮かびましたが、脚本を読ませていただくと、本作はどこまでも切なく澄んだ不器用な愛の物語だと感じました。経済や学歴、あらゆる格差が広がり、もはや分断ともいえるような社会の中で、互いの間にある高い壁を乗り越えてゆく2人の愛と勇気を描きます」などとコメント。

こちらはホストのラブストーリーであるにもかかわらず、「どこまでも切なく澄んだ不器用な愛の物語」と言い切っている。さらに社会の格差や分断をあげた上で、それを乗り越える姿を描くためにホストという設定を選んだことを示唆していた。

どちらも違法薬物やホストクラブがメインの物語ではなく、「本当に描きたいものを際立たせるためにこの設定を選んだ」という意図がうかがえる。もちろん「視聴率や配信再生数などの数字を取る上で、多少の批判は覚悟して注目を引きつけられる設定を選んだ」というニュアンスもあるのだろう。