報道・情報番組に外部の人をキャスター起用する理由はまだある。
テレビ放送である以上、視聴率を獲得してCM収入につなげなければいけない。特に朝から昼、午後、夕方、深夜までどの時間帯も民放各局が横並びで報道・情報番組を放送しているため、自局を選んでもらうことが求められる。
その際、番組の顔となるキャスターの人選は極めて重要。扱われるニュースが似ていることもあって、「この人が出る番組なら信用できる」「裏番組のキャスターよりも好きだから」「この人が読むならつらいニュースも聞いていられる」などの基準で見る報道・情報番組を決める人は多い。
キャスター選ぶ基準として重視されるのが、主に信頼感、親近感、イメージやキャラクターの認知。まず「誠実」「ウソをつかない」という信頼感は当然必要だが、これだけなら局のアナウンサーでも問題ないだろう。
しかし、視聴者に親近感を覚えさせられるアナウンサーは少なく、日テレなら水卜麻美、テレビ朝日なら大下容子、TBSなら安住紳一郎、フジなら西山喜久恵など、ベテランに偏っている。そもそも局のアナウンサーは日ごろ番組の進行やニュースの読み上げに徹しているため、自分の人柄を伝え、ビジュアル以外の面で選ばれることは難しい。
加えて外部のタレントは、自分のイメージやキャラクターの認知があり、それが選ばれるきっかけになってきた。実際、自然体で飾らない人柄の有働由美子は女性層、頭の良さやコンプレックスで笑いを取れる山里亮太は若年層、さわやかさとイクメンの谷原章介は主婦層、知的さと率直な発言のホラン千秋は中高年層を中心に支持を集めている。
局アナの存在価値を高められるか
このメインキャスターにおける親近感は視聴者との距離の近さそのものであり、イメージやキャラクターの認知は選ばれる理由に直結するもの。いずれもアナウンス技術以上に重要なものであり、だからこそ多額の報酬が必要でも外部の人を起用しているのだろう。
たとえば夕方の番組で視聴率トップを走る『news every.』(日テレ)は、コロナ禍でのコメントで株を上げた藤井貴彦(52歳)と鈴江奈々(43歳)の自局アナウンサーに、元アスリートの陣内貴美子(59歳)を加えた3人を中心に、徳島えりか(35歳)や辻岡義堂(37歳)、気象予報士の木原実(63歳)などを起用。信頼感と親近感があり、イメージやキャラクターが認知された局内外の人材をバランスよく集めて成功を収めてきた。
では今後も外部からの起用が続いていくかと言えば、必ずしもそうとは言えない。放送収入の減少は避けられない中、制作費の負担は大きく、自局アナウンサーに最適な人材がいるのなら任せたいところもあるはずだ。
一方で各局のアナウンサーたちはYouTubeチャンネルや、個人のSNSで積極的に発信するなど、番組出演以外の場でも、親近感を覚えさせ、イメージやキャラクターを認知してもらおうという動きが見られる。
なかなか外部の人と同じような支持を得るのは難しく、それが得られたとしても退職されてしまうリスクもあるが、それでもアナウンサーの地道な育成と起用は続けられていくのではないか。