秋ドラマの第1話が次々に放送されているが、1つの傾向として見られるのは、“40代バイプレイヤー女優”の主演作。42歳の小池栄子が『コタツがない家』(日本テレビ)で民放ゴールデン・プライム帯の連ドラ初主演、48歳の板谷由夏が『ブラックファミリア~新堂家の復讐~』(日テレ=読売テレビ制作)が連ドラ初主演を務めている。
さらに範囲をアラフォー・アラフィフに広げると、38歳の木南晴夏が『セクシー田中さん』(日テレ)でゴールデン・プライム帯初主演を飾るほか、53歳の西田尚美も『くすぶり女とすん止め女』(テレビ東京)で主演に起用。いずれも各局の連ドラを支えてきたバイプレイヤーたちが、今秋は主演に起用されている。
なぜ今、40代前後のバイプレイヤー女優が主演に起用されているのか。テレビ解説者の木村隆志がその背景や狙いを掘り下げていく。
■人気と若さで主演は務まらない
業界全般を見れば、連ドラの主演俳優は若返りの傾向が見られる。たとえば今夏は、福原遥、飯豊まりえ、伊藤沙莉、杉野遥亮、目黒蓮、赤楚衛二の20代俳優6人がゴールデン・プライム帯で初主演を務め、森七菜、松岡茉優、成田凌の3人も2度目の主演だった。「計14作中9作が、20代俳優の初めてか、2回目の主演ドラマだった」ことから、各局が若返りを図っているのは間違いない。
民放各局が主演俳優の若返りを図っている理由は、「スポンサー受けのいいコア層(主に13~49歳)の個人視聴率を獲るため」だが、決して「若ければいい」というわけではない。今夏も前述した9人中、アイドルの目黒蓮以外は20代ながら豊富な助演経験を持ち、その存在感はもちろん、演技力が視聴者から認められていた。これはつまり、「視聴者がほとんどのキャストに演技力を求めるようになり、人気と若さだけで連ドラ主演を務めるのは難しい」という“本物志向”だろう。
その点、冒頭に挙げた40代前後のバイプレイヤーたちは、存在感も演技力も問題なし。「これまで助演として主演を支え続けてきた実力者たちが主人公を演じる」というだけで、「主演の人気ありきではなく、脚本・演出で勝負するドラマなのだろう」という好印象を与えられる。
また、深夜帯と言えば、これまでは若手俳優の登竜門だったが、今秋はベテランが勢ぞろい。前述した板谷由夏(48歳)と西田尚美(53歳)に加え、『きのう何食べた?』(テレ東)の西島秀俊(52歳)と内野聖陽(55歳)、『マイホームヒーロー』(TBS=MBS制作)の佐々木蔵之介(55歳)、『すべて忘れてしまうから』(テレ東)の阿部寛(59歳)も主演を務める。この深夜帯の傾向も40代バイプレイヤー女優と同じように、視聴者の本物志向を物語っているのではないか。