7日夜、日曜劇場『19番目のカルテ』(TBS系)の最終話が放送された。ドラマそのものには称賛の声が目立っていた一方で、散見されたのが「放送開始時間が遅すぎる」という声。これは『バレーボール女子 世界選手権3位決定戦、日本VSブラジル』の中継延長によって55分遅れの21時55分スタートだったことへの困惑や不満だろう。
さらに『水曜日のダウンタウン』(TBS系)も8月27日が35分遅れの22時35分、9月3日が50分遅れの22時50分スタートで、どちらもその理由はバレーボール中継の延長。その他でも8月23日、同25日、9月6日も後続番組が25分遅れのスタートとなるなど、そのたびに視聴者を戸惑わせていた。
今回の放送局はTBSだが他局でもバレーボール中継の際は延長放送が当然のように行われている。なぜバレーボールは局の重要番組を差し置いて特別扱いされているのか。他のスポーツとはどんなところが異なるのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
2020年代に入って強くなった日本代表
まずテレビにおけるスポーツ中継の前提をあげておくと、日本人が最も好むのは国内リーグではなく国別対抗の国際試合であり、4年に一度のオリンピックやサッカーワールドカップはその最たるところ。テレビ業界としては、放送権料が高騰している今なお、各スポーツにおける「世界選手権」「ワールドカップ」などの世界一決定戦を最高レベルのライブコンテンツとみなしている。
バレーボールの中継時間の延長が許されているのは、一定の視聴率が見込めるコンテンツだから。他番組に影響を及ぼす延長が許され、逆に延長しないと熱心な視聴者から批判されてしまう。その点、試合時間の決まっているサッカー、バスケットボール、ラグビーなどの中継は、ある程度の計算が立ち、後続番組の視聴者から批判を受けるケースは少ない。
では、なぜ多くの試合で延長の可能性が高いバレーボールは特別扱いされているのか。SNSで不満の声が可視化されるようになり、バレーボールには不利な環境のはずだが、このところテレビ放送が増えている理由は、男女ともに日本代表が強くなったからだろう。
最高峰の大会と言われる五輪の結果を見ていくと、男子は1990年代後半から2010年代にかけて6大会中1回しか本大会に出場できず長期にわたって低迷。女子も1980年代まではメダル争いの常連だったが、1990年代以降は2012年の銅メダルのみに終わるなど苦戦が続いていた。
2020年代に入っても、男子が2021年東京大会7位と2024年パリ大会7位、女子が2021年東京大会10位と2024年パリ大会9位に終わったものの、その内容は明らかに良化。実際、毎年開催されるネーションズリーグでは男子が2023年3位、2024年2位、2025年6位、女子が2023年7位、2024年2位、2025年4位と、優勝が狙える位置にまで上がっていた。
今回の世界選手権でも、女子が準決勝と3位決定戦に敗れたものの最終順位は4位。13日に開幕する男子もメダル獲得が期待されている。
