現在、代表チームが世界一を争う球技で、バレーボールほど日本代表が上位に絡んで盛り上がれるものはないだろう。

各競技のワールドカップで見ると、サッカーは2026年大会で初のベスト8以上を目指し、バスケットボールは2次ラウンド進出(ベスト16)を目指し、ラグビーはベスト8に進出した2019年地元開催の再現を狙うという状況。メダル獲得圏内の戦いには届いていない。

ちなみに野球は北中米と東アジアに強豪国が偏り、欧州、アフリカ、南米、西アジアなどの競技人口が少なく、MLBが主催するWBCが最高峰とされている。プレミア12という大会もあるが、他競技のような世界一決定戦というムードはない。現在バレーボールほど日本代表が勝ち上がる可能性が高く、ライト層も含めて盛り上がれるチームスポーツはないと言っていいのではないか。

そしてもう1つテレビ業界の評価が高い理由としてあげられるのは、試合数の多さ。そもそもサッカー、バスケットボール、ラグビーなどのコンタクトスポーツではないバレーボールは試合数が多く確保できる。連戦も可能であり、しかも男女の大会を順番に放送することで長期間盛り上がりをキープ。実際、今回の女子大会では日本代表の7試合が放送されて盛り上がり、男子大会につなげている。

試合数だけでなく世界大会そのものも多い。4年に一度のオリンピック、2年に一度の世界選手権(今回まで4年に一度)、毎年開催されるネーショングリーグがあり、どのチームスポーツよりも日本代表の試合を見られる。さらに、かつてよりは減ったものの日本開催のラウンドも多く、視聴しやすい時間帯に放送が可能なこともメリットだろう。

アイドル的な人気と中高年層の支持

そしてバレーボールがテレビにとって重要な理由として挙げなければいけないのは、アイドル的な人気の高さ。昭和時代からバレーボールの大会が放送されるたびに「カッコイイ」「カワイイ」と言われるスター選手が誕生し、あまりスポーツを見ないライト層を引きつけていた。

スラリとしたスタイルのさわやかなルックスはもちろんだが、「体格で劣る日本人が大きな外国人に立ち向かう」という図式もヒーロー・ヒロインとしての魅力をアップ。さらに、国の威信をかけた真剣勝負でありながら、得点を決めるたびに満面の笑顔を見せる選手たちの生き生きとした姿が視聴者を引きつけてきた。業界内では「これほど笑顔の多いスポーツはなく、それだけでテレビ的」などと言われてきたが、低迷期ですらアイドルのような人気者を生み続けてきたことがそれを裏付けている。

そもそも日本のバレーボールは歴史が長く、テレビの視聴率獲得で大きな影響を与える中高年世代にも強い。五輪の結果で言えば、男子は1964年東京大会で銅メダル、1968年メキシコ大会で銀メダル、1972年ミュンヘン大会で金メダルを獲得。女子は1964年東京大会で金メダル、1968年メキシコ大会で銀メダル、1972年ミュンヘン大会で銀メダル、1976年モントリオール大会で金メダル、1984年ロサンゼルス大会で銅メダル、2012年ロンドン大会で銅メダルを獲得してきた。

さらに、日本国内のリーグには地域と企業が選手とともに盛り上げてきた58年の歴史がある。また、バレーボールは『アタックNo.1』『燃えろアタック』『サインはV』などのアニメやドラマでも昭和時代から親しまれてきた。

くしくも現在、「来春開催のWBCがNetflixの独占配信になり、地上波の無料放送がない」ことが物議を醸しているが、バレーボールにもその可能性がないとは言えないだろう。「お金を払ってでも見たい」と思う人の数が多ければ有料配信のコンテンツになり、「無料で盛り上がりたい」というライト層の数が多ければ、まだまだしばらくの間は地上波放送が続いていくのではないか。