テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、コンサルティング会社と会計事務所の代表を務め、スタートアップを中心に会計面・資金調達面からサポートを行っている岡野貴幸氏が、「キャッシュフロー計算書」の分析方法について解説します。

  • キャッシュフロー計算書の比率分析


前回はキャッシュフロー計算書の基本の考え方、営業、投資、財務によるキャッシュフローのプラス・マイナスから企業の状態を分析する方法について記載しました。

キャッシュフロー計算書はさらに様々な会計情報と照らすことによって分析を行うことが出来ます。今回はいくつかの指標を例にその分析方法について紹介していきます。

キャッシュフローマージン

キャッシュフローマージンとは、売上がどれほど効率的にキャッシュフローを稼いでいるかを示す指標であり、営業活動による売上高の何%をキャッシュで獲得したかを見るものです。この数値が高いほど効率的な資金化が行われたことを示し、儲かる企業であるかを判断します。

●計算式
営業キャッシュフローマージン(%)=営業キャッシュフロー÷売上高

損益計算書のみで算定する、売上高営業利益率(営業利益÷売上高)に近いですが、営業利益以上に、営業キャッシュフローのほうが会社の実態をより強く表します。業種にもよりますが、15%が目安となり、継続的に15%を超える企業であれば、競合他社よりも優位であると言えます。同業と比較することで、自社の状況を認識しましょう。

設備投資対営業キャッシュフロー比率

設備投資対営業キャッシュフロー比率は、本業から生じる営業キャッシュフローでどのくらい設備投資を賄えているかを示す指標で、一般的には100%以内が無理のない投資と言われています。

●計算式
設備投資対営業キャッシュフロー比率(%)=設備投資÷営業キャッシュフロー×100

この比率の適正値は、投資資産の回収期間に応じて計算します。例えば、投資資産の回収期間が5年であるならば、5年間のキャッシュフロー計算書を合計して計算します。つまり、5年間の設備投資資金の累計に対して、5年間の営業キャッシュフローの累計が100%以内であれば、投資資金を営業活動で稼いだ現金で回収したことになります。

有利子負債営業キャッシュフロー比率

有利子負債営業キャッシュフロー比率とは、企業が営業活動によるキャッシュフローによって、有利子負債をどのくらい返済できるかという企業の支払能力を示す財務指標です。何年で返済可能かということを表します。

●計算式
有利子負債営業キャッシュフロー比率(%)=営業キャッシュフロー÷有利子負債×100

営業キャッシュフローが大きければ大きいほど比率は高くなり、仮に比率が25%であれば、4年で返済が可能という状態を表します。これと実際の借入金の返済年数を照らし、返済期間より短ければ安全性が高いという状態です。

このように営業キャッシュフローを様々な数字と比較することにより、企業の収益性、安全性を見ることが出来ます。他の数字と照らして比率にすることで、金額を出すだけで見えてこなかった他の会社との比較を行うことが可能なのです。同業他社と比較して自社がどのような状況にあるか比較してみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール : 岡野貴幸

ゴージュ株式会社 代表取締役、ゴージュ会計事務所 代表公認会計士
立教大学経済学部卒業。大学在学時に公認会計士試験に合格。大学卒業後、あずさ監査法人国際部に入社。上場企業の法定監査、国際会計基準導入支援業務を経験。実家は埼玉県で3代続く税理士事務所を経営しているが、ゼロから立ち上げ新しい会計事務所の形を作りたいと一念発起し、2014年に独立。岡野公認会計士事務所(現、ゴージュ会計事務所)を設立。同時にコンサルティング会社であるゴージュ株式会社を設立。成長する企業を会計面・資金調達面からサポートしたい想いから、スタートアップを中心にサービスを行っている。クラウドを駆使し徹底した経理の効率化、事業計画の作成、資金調達を得意とする。