テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、書評ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大氏が、働き方のひとつとして最近話題の「ギグ・エコノミー」についてお話します。

  • ギグ・エコノミーで働くメリットは?


ギグ・エコノミーが与える影響

書評家・ビジネスプロデューサーの徳本昌大です。ギグ・エコノミー、ギグ・ワークという言葉をよく聞くようになりました。今日はこの分野の専門家のダイアン・マルケイの「ギグ・エコノミー 人生100年時代を幸せに暮らす最強の働き方 」を紹介したいと思います。

著者はギグ・エコノミーが拡大している理由を次のように指摘します。

ギグ・エコノミーが拡大している背景には、ここしばらく続いているふたつのトレンドがある。ひとつはフルタイムの仕事が減っていること、もうひとつは多くの企業でフルタイムの従業員を敬遠するようになったことだ(ダイアン・マルケイ)

経済が変化し、ITが進化する中で、特定の技能・専門を持つ労働者は、高い報酬や自分のやりたい仕事ができるようになります。自分に合った新しい働き方が選べ、低技能・低賃金の労働者もより良い条件の仕事を選べるようになったのです。

このギグ・エコノミーは働き方だけでなく、生き方にも変革を起こそうとしています。仕事も収入も変わるのが当たり前となる時代に、これまでのような高固定費・高借入のライフスタイルは馴染まないと著者は指摘します。

人生100年時代、時には休み、時には働くということも選択できます。学び方や働き方は、今後大きく変わるはずです。生涯を通じて仕事と余暇、学びのバランスを取ることができるようになるので、人それぞれが自分にフィットしたライフプランを選べます。

ギグ・エコノミーを成功させるには?

ギグ・エコノミーで成功するために必要なのは、「新しいマインドセット」、「独自のスキル」、「最新のツールを手に入れること」です。著者はギグ・エコノミーには10の成功法則があると言います。

1.みずからの成功を定義する
伝統的な価値観にこだわらずに、自分なりの成功を思い描くようにすべきです。

2.働く場を分散させる
チャンスを増やし、スキルをみがき、人脈を広げることができる仕事の組み合わせを見つけましょう。

3.生活保障を設計する
正社員でも失業しかねない時代に、収入確保策・出口戦略・セーフティネットの組み立て方を学びましょう。

4.ネットワーキングをせずに人脈をつくる
人脈づくりはインバウンド型とアウトバウンド型のどちらが自分に合っているかを見きわめ、うまく頼り合える関係を目指します。

5.リスクを軽減して不安に立ち向かう
尻込みしている根本原因を見据えて対応可能なリスクに分割し、アクションプランを作ることで、不安を減らせます。

6.仕事の合間に休みを取る
ギグ・エコノミーで増える休みを計画的かつ有意義に過ごし、休息や余暇を楽しむようにしましょう。

7.時間への意識を高める
マネジャー式スケジュールとクリエイター式スケジュールのどちらが自分に向いているか判断し、優先事項に時間を使うようにします。自分のスケジュールで好きなプロジェクトを選べるようにすれば、幸せな時間を増やせます。

8. 柔軟性のある家計を組み立てる
「けちけち式」の資金繰りから抜け出し、経済的に柔軟で安定した生活を手に入れ、人生をもっと楽しむようにすべきです。

9.所有からアクセスに切り替える
欲しいものを所有するのは時代遅れ。使いたいものにアクセスし、借金を避けて自由度を高めましょう。マイホーム神話も見直し、移動の自由を楽しむようにするのです。

10.老後の資金を貯める
伝統的な退職は忘れて、自分に合った引退の仕方を考えることで、自分らしい人生を生きられます。

ギグ・エコノミーで成功するには、フルタイム従業員に限らずさまざまな働き方をするとともに、仕事に対する意識を”従業員思考”から”チャンス思考”に切り替える必要がある

「どんな職に就こうか?」ではなく、「どんな仕事をして、どんな価値を生み出そうか?」というチャンス思考で自分の未来を考えるべきです。ギグ・エコノミーで成功を収めるアプローチは、積極的なチャンス思考に舵を切ることです。

チャンス思考のメリットとは

自分らしい成功のビジョンを描き、それを実現するために働くようにすべきです。チャンス思考の労働者は積極的に人脈を広げ、新たなスキルを習得し、したことのない経験を求めます。絶えず、自分のスキル・経験・ネットワーク・評判・知識を高めて、将来への足がかりにするのです。

チャンス思考を実践するには従業員思考よりも多くの労力が必要になりますが、将来のリスクを格段に低く抑えられます。

すでにあるスキル・経験・興味を活かして、複数のギグからなる多角的ポートフォリオを整えることがギグ・エコノミーで成功するカギだ。ギグ・エコノミーの時代には多角化こそが標準となる。働き方を多角化すればリスクが減り、新たなチャンスが舞い込み、人脈が広がり、スキルが向上する。興味を多角化すれば生活が多様でバランスもよくなるとともに、熱中できることを探し、新しい興味を温め、好奇心を満たすことにつながる

私は広告会社をやめた後、マーケティングをビジネスの基軸に置いてきましたが、ベンチャーの社外取締役になることで、資金調達、MA、上場に関わるノウハウを身につけました。自分の働き方を多角化することで、チャンス思考を身につけることができました。

経営思想家のチャールズ・ハンディが提示する「金・興味・楽しみ・主義主張のための活動を取り混ぜた、活動のポートフォリオ」という多角的ポートフォリオというキャリア観を持つことで、様々なチャンスに出会えます。

ほとんどすべてのギグは、スキルを習得・向上し、ネットワークを広げ、いずれ来るチャンスに備える助けとなります。どんなギグやスキル、経験が将来的にもっとも活きてくるのか、あるいは完璧なチャンスへの備えとなるのか、それは断言することはできないと著者は言います。

自分の未来を明るくするためには、興味と好奇心に従って進み、その両方を満足させられるよう、日々、自分のスキルを高め、多角的なポートフォリオを組み立てるようにすべきです。

副業やボランティアを始めることで、自分の価値を世の中に提供できます。小さな一歩を踏み出すことで、ネットワークが広がり、未来の自分の可能性を高めてくれるのです。

執筆者プロフィール : 徳本昌大

書評ブロガー・ビジネスプロデューサー
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在は、ベンチャー企業の取締役や顧問として活躍中。インバウンド・海外進出支援サービスなどを提供するEwil Japan取締役COO、IoT・システム開発のビズライト・テクノロジー 取締役、みらいチャレンジ ファウンダー、他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数。書評家としても活動中。