テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、中小ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める高森厚太郎氏が、前回に引き続き中小ベンチャーの「事業計画作成」「会議体設計」について語ります。


CFO8マトリックスで経営と現場をExit(IPO、M&A、優良中堅)へナビゲートする。ベンチャーパートナーCFO、高森厚太郎です。

今回は、本連載テーマ「中小ベンチャーの成長マネジメント」、「中小ベンチャーCFO業務のその1(全体管理)」の残りの「事業計画作成」「会議体設計」です。

事業計画とは

事業計画は、成長戦略を現実のものとしていくロードマップにあたるものです。ところが中小ベンチャーの場合、創業時に急いで作ったものをそのまま更新せずに放置していたり、数字面がアバウトだったりということが往々にしてあります。

事業計画はやはりあるフレームに従って矛盾や遺漏のないように作成すべきものです。それがそのまま外部(金融機関や投資家、各取引先)との共通言語としても使えるレベルのものに作成し、定期的に更新していくことが必要です。

定性的な事業計画書

事業計画書は、ビジョンや戦略、組織、スケジュールなどを表した「定性的な事業計画書」と、1年や数年間の売上や利益など数値計画を表した「定量的な事業計画書」から構成されます。

定性的な事業計画書の様式は、何か定めがあるものではないので、思いのままに自由に記載してよいものではあります。もっとも、事業計画書には何らかの目的があるものです。例えば資金調達目的であれば、見せる相手が見るポイントの相場というものがあります。自分自身で使いやすい雛形を用意し、目的に応じてアレンジして作っていくと良いでしょう。

参考までに、私は以下の16要素を網羅したものを基本様式として使用しています。資金調達や社内向けロードマップなど、汎用的に項目立てになっていると思います。

  • エグゼクティブサマリー
  • 会社概要
  • 主要経営陣の略歴
  • 事業ビジョン
  • 製品・サービスの特長
  • ビジネスモデル
  • 顧客・市場規模
  • バリュープロポジション
  • 勝ち続けるための独自の優位性
  • 戦略的提携
  • 全体スケジュール
  • 組織体制
  • マーケティング計画
  • 数値計画
  • 事業リスクの整理と対応
  • 事業ビジョン、達成のステップ

定量的な事業計画書 

定量的な事業計画書は、1年や数年間の売上や利益など数値計画、シミュレーションしたものになります。損益計算書で表す分には項目が決まっていますが、それ以外のKPIなどを表す場合は、事業の属性ごとに項目が異なってきます。汎用的なフォームをカスタマイズして作ることになるかと思いますが、作って終わりの代物ではないので、継続的に数値計画を立てていく、更新することを想定したフォーマットを作ると良いです。

実務を回すために、会議体

会議は実務(会社経営のPDCA)を回すための基本アイテムです。どんな企業でも会議なるものは複数種類が存在しているはずです。

日常的に行われている会議、みなさんはどうお思いでしょうか? 時間の無駄?そもそも多すぎる? 目的や運営が曖昧な会議が世の中多いので、不満が多いかと思います。だからといって、会議が全くない、必要な時に個別に話せばいいでしょ、となると、意外にPDCAが回らなかったり、組織内のコミュニケーション不全が起きたりします。

適切に使えば会議はものすごくパワフルなものになります。目的と運営をはっきりさせ、積極的な参加を求め、きちんと議事録をとり、結論を共有化していく。そういう基本姿勢を徹底するだけで、非常に有益な場となり得ます。

会議体設計の例

私が以前CFOを担当していた企業の会議体系に少し手を加えたものです。 1つ目の「全体ミーティング」は、週1の朝礼、朝会のような従業員が全員参加の会議です。これは全社的に共有すべきトピックや、CEOからのダイレクトメッセージを受け取る場です。社員の現状把握やモチベーションアップにもつながりますので、必ず設計した方がよい会議です。

2つ目の「経営ミーティング」は、取締役会など全社経営事項を意思決定する幹部会議です。参加メンバーは、CEOに加えて社内外の取締役プラス監査役。ただし、取締役会を月1回以上やる会社はあまりないが、全社経営事項を意思決定できる場をもう少し増やしたいと考え、社内取締役だけが集まる会議を別途週1で設計しました。実は社内的には経営陣の間のコミュニケーションが一番足りなかったりするので、公式に週1の会議を設けることで重要事項の議論が深まり、高速PDCAが回せるだけでなく、経営陣の一体感を醸成しやすくなるというメリットがあり、おススメです。

3つ目の「グループミーティング」は、いわゆる部課単位のミーティングです。中身は主としてTo Doの進捗管理で、各自が前週の振り返りと今週の計画の報告をする場です。各自レジュメを出して口頭で説明してもらい、進捗を管理する方式をとっていました。

ここまでは割とノーマルな会議体設計ですが、もう一つ、私がやってみて面白かった「幹部ミーティング」という会議体を紹介しておきます。これは幹部レベルによる中期全社経営戦略会議という位置づけの会議でしたが、どちらかというと教育が主目的でした。実質、中間管理職(マネージャー)が全社視点で戦略を考える場となり、部署間での情報共有や連携が進むなど、意義あるものとなりました。

ぜひ、目的と運営をはっきりさせ、積極的な参加を求め、きちんと議事録をとり、結論を共有化していく会議体を、みなさんの会社でも設定してみてください。