大ヒットゲーム「モンスターストライク」を生み出したのは、SNS「mixi」で有名なミクシィ。そう言うと、多くの人が一様も驚く。当時主流だった非同期コミュニケーションから、リアルタイム型コミュニケーションという、新たなコミュニケーション文化を提案している同ゲーム。その成功を支えた会社の強みの活かし方をエックスフラッグスタジオ総監督兼モンスターストライクプロデューサー・木村弘毅氏に聞いた。

アイデアをストイックに整理する

――「モンスターストライク」制作時、どんなこだわりがありましたか?

ここでドラマチックな盛り上がりのあるエピソードがあればいいのでしょうね。でも、それほどロマンを感じる苦労話はないのです(笑)。ただ、こだわってきたことは確かにあります。それは、アイデアを取捨選択することでした。

スタッフにアイデアマンが多かったので、とにかくすごくいいアイデアが並びました。ステージギミックをはじめ、キャラの必殺技など、到底すべてをパッケージできるわけはありません。どのアイデアを採用していくかにあたって、むしろ「やらないこと」を徹底的に決めてきたのです。もちろん、明らかにいいアイデアを削っていくのは苦しい作業でしたけどね。

――アイデアの採用・不採用の判断はどういう基準で行ったのですか?

とにかく汎用性の高さを判断基準にして、ストイックに取捨選択をしました。ギミックのアイデアならば、概念としてわかりやすいことが重要で、多くのキャラやステージに使われやすいものを優先しよう、というように。

だからこそ、拡張性の高い作品になったと思います。それに、徹底して検討してそぎ落としたわけですから、不採用になってもそのアイデアのエッセンスは、作品に内包されていると思うのです。初期段階で落としたものでも、リリースから順を追って追加したものもありますから、不採用だからずっと使わないというわけでもないのですけどね。

モンスターストライク

徹底した通信環境の検討

――作品の環境面で重視した点は?

これは「モンスターストライク」の根底に関わるところなのですが、通信まわりにはかなりのこだわりがありましたね。

――なぜこだわったのですか?

ゲームをしている人たちのコミュニケーションを重視したかったからなんです。インターネットで主流になっている非同期型コミュニケーションではなく、リアルにその場に人が集まって、ワイワイガヤガヤやりながら遊ぶという光景を「モンスターストライク」で作りたかった。そこが揺らぐと、モンストはモンストでなくなってしまうという、絶対的な価値観を皆で共有していました。

――コミュニケーションの価値を知っているミクシィならではの発想ですね

そもそも誰が私たちのお客様なのかを追求したとき、やはりみんなでワイワイ遊ぶことを楽しんでくれる方がお客様になるわけです。その正確な顧客像をイメージできる仲間に囲まれていたのは大きかったですね。

――今回目指したコミュニケーションの形は、今のインターネット文化と異なる方向ですよね?

当時のゲームはいわゆるソシャゲー(ソーシャルゲーム)と呼ばれるもので、基本的にはひとりで遊ぶことが目的でした。あるいは、ネットの向こう側にいる、会ったことのない人とバトルをしたりするオンライン上でのコミュニケーションが主流でした。

それはそれで良さがありますが、私たちとしては「自分たちが作るゲームは、皆が一堂に集まって遊ぶもの」という理念があり、そこに新しいゲームの価値観を見出していたわけです。もっとも「同じ場所に集まる」という概念自体は、同じインターネットの競合企業から見たら、非合理的なやり方にしか見えなかったかもしれません。「なんでネットが発達しているのに、集まらなきゃいけないんだ」と言われたら、合理的か否かで考えると一目瞭然ですから。でも私たちは皆で集まって一緒に遊ぶことにこだわり続けた。

モンスターストライク

――それが今回のヒットにつながる核でもあったのでしょうか?

非同期でコミュニケーションをとるのが今の勝ちパターンなのに、わざわざそれを崩す必要はどこにあるのかという議論は確かにあります。でも、その勝ちパターンにハマらない、新しい価値を示せたという意味で、ゲームを通じてコミュニケーションを再提案するという私たちのミッションは伝わっていると思います。

――今後の目標は?

より多くの方に親しんでもらうために、まだ推し進めていかなくてはいけないことは多くあります。それと並行してですが、アニメを公開する予定になっているのでアニメとのメディアミックスで今までにない体験をお届けしたいですね。

あとは「モンスターストライク」とは異なる、まったく新しいタイトルの開発も佳境に入っています。やはりコミュニケーションがベースになっているもので、モンストのいいところも継承させています。今年中にはリリースする予定ですが、この作品にはモンストを超えていってほしいと願っていますよ。

――ありがとうございました