弱肉強食のジャンプ編集部でがむしゃらに頑張っている最中だという、内藤拓真さん。ジャンプの主人公のように、絶対に負けたくないライバルがいるのだそう! 一体どんな関係なのか? そして最後に「うつけもの新入社員診断」をやってもらいました。結果は如何に!

同期がいきなり掲載になり、嫉妬

――ジャンプに配属されてから今まで、悔しさを感じたことはありますか

最初は漫画の作り方もわからないのですが、作ってコンペに出してみるんですが、全然載せてもらえないのが当たり前。ところが、僕と同じ配属だった同期は、入って早々にいきなり読切作品を増刊に載せてしまった。「こんなに早く掲載できた新入社員は久々だ!」と部内で評価されているのを見て、嫉妬しましたね。もしかしたらすごい才能のヤツと同期になってしまったんじゃないか。事務仕事は僕のほうが上手くできるし、あいつは性格だって悪いのになんでだよって(笑)。でもジャンプでは成果がすべて。面白い漫画を作るほうが大正義なんです。

――そこで内藤さんはどういう対策に出たんですか

対策ということはないですが、やはりたくさん打ち合わせをして、たくさん作品をつくって、それこそ担当させて頂いている連載作家さんの言葉に学んだり、編集部の先輩と飲みに行って聞き出したり……そうしたなかでやっとこさ何らかの自分のやり方みたいなものは出来てきた気がします。少しずつですが、新人さんの読切作品も掲載に漕ぎ着けられるようになってきました。

でも、これくらいで喜んでいるようじゃダメなんです。僕が担当して載せられるようになってきたのは、読切作品であって連載じゃない。ジャンプの、いや漫画雑誌の至上命題は「大ヒット作品をつくること」だと思います。『ONE PIECE』は初版約400万部出ているメガヒット作ですが、志としては『ONE PIECE』に追いついて、追い抜けるような作品を新人さんとつくらなければいけない。ですから、表立って喜ぶなら大ヒット作に携われた時ですよね。まあ、とはいえ読切作品だって掲載されればものすごく嬉しくてガッツポーズしてしまいますが(笑)。

競争するからいいものが生まれる

――ジャンプで生き残れる編集者ってどういう人だと思いますか

運は大きいと思いますよ。極端な話、明日いきなり手塚治虫先生のような天才が現れて担当できるかもしれない。なので漫画原稿の持ち込みの電話は取り合いです。電話が鳴ったら瞬時に取る。持ち込みの依頼の電話だったらラッキー。日取りを決めて原稿を見せてもらいます。とはいえ全部が全部面白い持ち込みというわけではありません。それでも才能ある作家に会うためには、持ち込みの電話を取るのが一番の方法なんですよね。電話って鳴る前にランプが光るので、その瞬間に取る(笑)。

――電話を取るところから勝負が始まっているんですね……。そのほかにジャンプの新人ならではのお仕事ってありますか?

年に1回行われるジャンプフェスタというイベントで、新人編集者はコスプレというか仮装をしますね(笑)。僕のときはドラマの『半沢直樹』が流行っていたので、「ジャン沢直樹」というキャラクターになりました。話しかけられると倍で返す、というパフォーマンスまでして。相方……僕の同期は『あまちゃん』にかけて、ひたすら邪魔してくる「ジャマちゃん」というのをやってました。

――今、同期の方のことを「相方」っておっしゃいましたね(笑)

言葉の綾ですよ!(笑) 仲良しなわけじゃないですから! 常に編集部でも後ろの席にいるのに、外で会いたくなんかないですよ。

――いいライバル関係なんですね

競争って面白いし、競争するからいいものが生まれるのは確かだと思います。漫画に出てくるライバル関係と同じ。『DEATH NOTE』の月とLみたいなものかもしれませんね。ただ、同期だけでなく、編集部の全員がライバルだとは思っています。

――最後に、ジャンプ編集者としての内藤さんの一番の夢を教えてください

引き継いだ連載作家さんと一緒にこれからも頑張るのは大前提。毎週毎週を面白くしていきたいです。なおかつ、自分が担当している新人さんと連載を立ち上げて、それがヒットしたらすごく気持ちのいいことだろうなと思います。僕が受け持っている新人さんはみんな真摯で努力家で尊敬できるので、一緒にその感動を味わってみたいですね。

内藤さんの新入社員診断は

せっかくなので『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』担当編集・内藤さんに「うつけもの新入社員診断」をやってもらいました。結果は……

内藤さん:
「意識高い系新入社員」だ! ヤバイなぁ(笑)。意識高い系ってなんか嫌な感じですよね……。僕の中で意識高い人って、カタカナをやたら使うイメージ。こないだ友人が日常会話に「ベクトル」って言葉を使ってて、それはどうなの!? って思いましたから。僕が新入社員の頃は、意識低かったと思います。意識高い系が流行り始めたときだったので、そう括られるのも嫌だったし。でもこの診断って的確だなぁと思いますね。「意識高い」ことが嫌だって思っているってことは、意識高いのかもしれないですね。

『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』
立派な武士を目指すも、まだまだダメ武士な磯兵衛が屋台に看板を付け、道場を開いた。強くなりたい3人の子供が弟子入りするが、自称・師範代の磯兵衛が伝授したのは!? ぐだぐだ浮世絵戯言第7巻で候。