異国エジプトで働いていた「おろぐちともこ」が、仕事を含む現地生活をマンガとコラムでご紹介。ピラミッドだけじゃない「エジプト」をお楽しみください。(毎週火曜更新予定)

【何の音?】
カイロの中心にあるハン・ハリーリ(歴史地区)から歩いて数分のところに、服などが売られてるエリアがあります。ここにはたくさんの服屋や布問屋が軒を連ね、仕入れ人や搬入業者が激しく行き交います。買い物客も多く、狭い道は非常にごった返しています。

そのエリアでよく見るのが、商品をたくさん運んでいるおじさんたちの姿です。テコの原理を利用したカートのような台車で身長より高く詰まれた荷物を運ぶ人、前の人の姿が全く見えないほどの荷物を背中に背負って進む人などなど。人々の荷物はお店や工房などに運ばれていくのでしょう。しかしこの人ごみの中、そんな大荷物でよく進めるものです。

やっぱりカイロの仕事人はすごいなーと思いながら人混みにもまれていると、後ろから「ブデュ~ブデュ~ブデュ~」と分厚い音が聞こえます。投げキッスのようにも聞こえますが、ちょっと暑苦しいような……。

な…何だろう? とこわごわ振り返ると、音源は大きな荷物を運ぶおじさん。唇を使ってその音を出しているのです。

「人がたくさんいるところで何でこんな音を!!?」と思いましたが、よく観察してみると、その音を聞いた人がサササ…と、道を空けているのです。まるで旧約聖書のモーゼが海を割ったように、人が動いている…!!

つまり、あの「ブチュー」は、クラクションのような役割を果たしているのです。日本でやったらびっくりされるなぁ…でも、ドン引きされて道が開くかも…と思いつつ、おじさんを見送りました。それ以降、その音を聞いたらサササッと道をあけられるようになりました。

市場の服屋さん。通りを荷物の運び屋さんや買い物客、猫が行き交います

おろぐちともこ
大学時代古代エジプトを勉強していたためエジプトの地を踏むこと6回。7回目に踏み入れた2011年より数年間エジプトで働く。
現在はエジプト人による日本語雑誌を中心に、漫画を描いたりアシスタントをしたりと、国境を越えて活動中。至上の喜びは、素敵なカフェで水タバコの煙をゆらしながら、ぼけっとお茶をすること。生活記Blogつぶえじでは、現地の生活の様子を不定期に発信している。