異国エジプトで、ダブルワークならぬトリプルワークをこなす"おろぐちともこ"が、仕事や現地生活をマンガとコラムでご紹介。ピラミッドだけじゃないエジプトをお楽しみください。(毎週火曜更新予定)

【エジプト流接客術】
毎日の楽しみ、お昼ごはん。食べ物はお弁当を持って行く日もあれば、途中で買って出社することもあります。外食もしますし、雑用係に頼んで買いに行ってもらうことも。私の仕事はずっと椅子に座りっぱなしなので、軽い運動も兼ねて自分で買いに行くスタイルが好き。職場ではお昼休憩の時間は決まっていないので、好きなときに外に出られます。

この日は、会社近くの安くておいしいサンドイッチ屋さんへと向かいました。しかしながらボーっとしていたのか、うっかりお昼のピークの時間に休憩をとってしまった私。「やばい! 絶対混んでる! 失敗したかも…」と思いながらたどり着くと、案の定。お店はサンドイッチを求めるお客さんで大混雑です。このお店のテイクアウト方法は、まずレジで注文してお金を払い、レシートを受け取ります。そのレシートを受け取りカウンターに出して、サンドイッチを作ってもらうというのが一連の流れです。

ただし、混んでいる時は、レシートを受け取りカウンターのお姉さんに渡すのが一苦労。その日に限って、カウンターにはお姉さんが1人だけなのです。レシートの受け取りとサンドイッチ作りを平行してやらなければならないこの仕事。たった1人でさばかなくてはならないので、とても大変そうです。

すごいスピードでサンドイッチを作っていくものの、手が足りないので待つ人は増えるばかり。お客さんはおなかがすいてイライラしているため、「まだかー」とお姉さんをせかします。そしてお姉さんは忙しすぎてイライラ。そのせいでしょうか、いつもはサンドイッチにケチャップをつけてくれるのですが、今日は付いていないよう。商品を受け取ったお客さんからは「ケチャップがないぞ!」「ケチャップをくれー!」「ケチャップー!」という声が投げかけられています。

重なるお客さんの「ケチャップ」の大合唱に、イラッとしたのでしょうか。忙しすぎて取りに行っている暇のないお姉さんは、無表情に「ありません」と一言。バックヤードに行けば補充するためのケチャップはたくさんあるはず…。多忙とはいえ、いつもあるケチャップを無いと言い切るのはすごい…。

よく行くお店のサンドイッチ。案外日本人の口にもあうのです

普通そんなことを言われたら、クレームに発展しそうですが、そこは素直なエジプト人。「そうか」「ないなら仕方がない」と立ち去ります。日本のサービス業はお客さん至上主義のところが多いですが、エジプトではお客さんとお店の人は対等の関係なのです。

「郷に入っては郷に従え」(?)ということで、私もケチャップは諦めて、退店。そんなわけでその日のお昼ごはんは、ケチャップ抜きのサンドイッチとなったのでした。


おろぐちともこ
大学で古代エジプト史を専攻し、2011年よりカイロ在住。日々、エジプト人観察に励む。
現在はWebやエジプト人による日本語雑誌の漫画を執筆したり、デジタルアシスタントをしたりと、国境を越えて活動中。至上の喜びは、素敵なカフェで水タバコの煙をゆらしながらぼけっとお茶をすること。生活記Blogつぶえじでは、現地の生活の様子を不定期に発信している。