ワクチンの接種によって感染リスクを低減できたり、感染後の症状の重篤化を防げたりできる。ただ、接種のタイミングを誤ってしまうと、流行シーズンにワクチンの効果を最大限に発揮できない。いつワクチンを打つのがベストなのだろうか。

「インフルエンザの予防接種を行っても、体内に抗体ができるまでに2週間かかると言われています。11月から患者の方が例年増えることを鑑みると、打てるようならば10月中に打ってしまうのが望ましいです。約2週間で抗体ができ、効果は5カ月ほど持続します」

インフルエンザの予防接種は、その年の流行状況によってどの型が流通するかが決まる。もしもその型の予想が外れていたり、インフルエンザウイルスが突然変異を起こしたりした場合、流行と完全に一致するワクチンを製造することは難しくなる。効果の個人差もあるため、ワクチンで感染を100%防ぐのは不可能だが、重症化や合併症を防ぐ効果は期待できるため、毎年接種しておいて損はないと言えるだろう。

インフルエンザの不顕性感染とは

インフルエンザに関連するもので厄介なのが、不顕性感染だ。不顕性感染とは、インフルエンザウイルスに罹患しても、通常の風邪のような症状のみを呈したり、そういった症状すら出なかったりする状態を指す。だが、体内にはインフルエンザウイルスが潜んでいることに変わりはない。そのため、単なる風邪だと思って出社してきた人から感染させられてしまう可能性もゼロではない。

そのような事態を防ぐためにも、やはりこまめな手洗いやうがいを普段から励行しよう。

インフルエンザの治療法

もしもインフルエンザを発症してしまった場合、一定時間内であれば抗インフルエンザ薬を用いた治療が可能。インフルエンザと診断されたら、ウイルスの増殖を抑えるためにも可能な限り早く、遅くとも48時間以内に抗インフルエンザ薬を内服または吸入し、点滴をするといった治療を施す。

「インフルエンザは発症48時間以内に治療を開始することが大切です。治療中は、『安静にしてゆっくり休む』『部屋を暖かくして湿度を保つ』『外出を控え、水分補給と栄養ある食事を摂(と)る』という点を心がけるようにしましょう」

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取材協力: 竹中美恵子(タケナカ・ミエコ)

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。「女医によるファミリークリニック」院長。

アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。

日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得、メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。