いつの世でも多くの人が興味を持つテーマ・ダイエット。「やせたい」と願う人々に呼応するかのように、巷には無数のダイエットの種類やダイエットにまつわる噂が存在するが、はたしてそれらは本当に正しいダイエット法と呼べるのだろうか。

そこで本特集では、管理栄養士の真野稔子さんにダイエットにまつわる都市伝説の真偽のほどを検証してもらう。初回のテーマは「ダイエット中は油の摂取を控えた方がいい」だ。

ダイエット時は油の「質」を重視すべき

  • ダイエット時に油は控えるべき?

    ダイエット時に油は控えるべき?

真野さんに「油はダイエット時には控えた方がいい」という都市伝説の真偽をうかがったところ、「一部は本当です」との答えが返ってきた。

「『油は太る』というイメージから、ダイエット中の油の摂取はNGと思われがちですが、油は三大栄養素の一つである脂質の供給源。脂質は、少量でも多くのエネルギーを得ることができる効率のよいエネルギー源です。かといって、脂質は1g当たり9kcalの高エネルギー。使われなかったエネルギーは中性脂肪、つまり体脂肪となって体に蓄えられて肥満につながってしまうので、摂り過ぎには注意が必要です」

油は、体の健康維持に必要な必須脂肪酸やビタミンEを含んでいることに加え、カロテンを含んだ野菜と一緒に食べると、生で食べるのに比べてビタミンの吸収率が5倍アップするといったメリットもある。それゆえ、「ダイエット時は油を控えるのではなく、適量を摂り、どちらかというと質を重視しましょう」と真野さんはアドバイスを送る。

脂質が不足した場合の体への影響

脂質はすべての細胞の構成成分となるうえ、脂溶性ビタミンの体内への吸収を助けたり、必須脂肪酸の供給源になったりするなど、私たちの体に不可欠な役割を果たしている。

「必須脂肪酸とは、脂肪を構成する脂肪酸のうち、体内で作ることができない脂肪酸です。また、脂質の一種であるコレステロールは細胞膜や、胆汁酸、ホルモンなどの材料になるという働きがあります。体脂肪も内臓を守る働きがあるので、ある程度は必要です」

脂質が不足すると、エネルギー不足になり、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収が悪くなってしまうという。また、肌荒れや便秘などを起こしやすくなり、特に女性は月経不順に陥るケースもあるとのこと。ひどい場合では、発育の障害や脱毛、皮膚の炎症を起こすことも報告されている。

ダイエット中に摂取を控えた方がよい油

上述のように、ダイエット中は「質のよい脂質を適量摂取する」ことが重要となるが、そこで大切となってくるのが「質のよい(悪い)脂質の理解」。すなわち、摂取してよい油とそうでない油をきちんと把握することだ。それぞれ詳しく見ていこう。

ダイエット中に控えたい油

ダイエット中に控えたいのはサラダ油。サラダ油には必須脂肪酸のリノール酸が含まれており、熱や光、空気で酸化しやすく、過酸化脂質(酸化した脂質)になる。開封した油や、揚げ物に何度も使った油には、過酸化脂質が発生するので注意が必要だ。

「過酸化脂質は揚げ物や炒め物、市販のドレッシング、マヨネーズ、スナック菓子に多く含まれています。これらを摂取すると体が酸化し、老化を早めることになります。また、リノール酸は摂りすぎるとアレルギーを起こすケースがあります」

やはりダイエット中には、揚げ物など油を多く使う料理は控えた方がベター。サラダを食べるときも、ドレッシングやマヨネーズの中に含まれる油を意識した方がいいだろう。

ダイエット中に摂取したい油

一方で積極的に摂取したいのは、植物や魚の脂に由来する不飽和脂肪酸だ。

「不飽和脂肪酸には、n-9系脂肪酸(オメガ9)、n-6系脂肪酸(オメガ6)、n-3系脂肪酸(オメガ3)があります。その中でも、必須脂肪酸と呼ばれるn-6系脂肪酸(オメガ6)とn-3系脂肪酸(オメガ3)の脂肪酸は体内で生成できないため、食べ物から摂る必要があります」

n-6系脂肪酸は「血中コレステロールの低下」「中性脂肪を低下」「認知機能改善効果」などが期待できる。リノール酸やアラキドン酸が代表例。

n-6系脂肪酸(オメガ6)を含む食材……ごま油、大豆油、グレープシードオイル、卵黄、レバーなど。

n-3系脂肪酸(オメガ3)は「善玉コレステロールの増加」「血中の脂質のバランスを整える」「体の炎症を抑える」といった効果が期待できる。α-リノレン酸やEPA、DHAがよく知られている。

n-3系脂肪酸(オメガ3)を含む食材……魚の油、しそ油、エゴマ油、亜麻仁油。ただし、エゴマ油や亜麻仁油は酸化しやすいため、必ず生食で使用すること。また、陽の当たらない場所に保管し、開封後は早めに使い切るのがポイントだ。

ダイエット中の油との付き合い方

ダイエットとはいえ、何も食べなくては生きていけないし、必要な栄養素は摂らなくてはいけない。食べていく限り、油をまったくゼロにすることは難しいだろう。では、ダイエット中には、どうやって油とうまく付き合っていけばいいのだろうか。

「油には『見える油脂』と『見えない油脂』があります。炒め物や揚げ物、手作りドレッシング、パンにぬるバターなど、調理や食べるときに使う油脂が『見える油脂』。一方、肉や魚、大豆製品、乳製品、種子類、パン、お菓子など、食品の素材に含まれる油脂が『見えない油脂』です」

「見える油脂」と比べると、意識しづらい「見えない油脂」はついつい多く摂ってしまいがち。それらを差し引くと、一日に摂る油は大さじ1杯程度が適量だそうだ。

「主食は普通のご飯にし、油を使った料理は1食で1品程度にする。『煮る』『炊く』『茹でる』『蒸す』など、油を使わない料理も積極的に取り入れましょう。フライパンで焼くところを魚焼きグリルで焼いたり、ホイル焼きやオーブンシートで包み焼きにしたりすると、素材の持つ油を利用して焼くことができます。食材も、肉類ならば赤身肉を選んだり、魚の切り身では、腹側よりも脂質が少なめの背側を選んだりすることで、『見えない油脂』を控えられます」

「油は太る」というイメージから、「見える油脂」を減らそうとしてしまうかもしれないが、本当に注意すべきなのは「見えない油脂」。やみくもに油を排除するのではなく、必須脂肪酸やビタミンなどの体に必要な栄養素を含んでいる「見える油脂」を上手に摂るようにしよう。

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