「A課長がいるだけで、職場の空気が悪い意味で張り詰めて、息が詰まりそうです。ストレスがたまる最も大きな要因は、この職場の空気感だと思います」。
営業として働くCさんはこう話を切り出しました。細かく聞くと、「一度部下を叱ると、課長は機嫌が悪いまま。その職場の空気感がいたたまれない……」そうで、例えば
・書類へのハンコを求めても、無言で押す
・会議では、ほぼ無表情で、最低限しか発言しない
・「お疲れ様」など、わざと何も言わずに帰る
といった形で不機嫌さを隠さず、ピリピリした空気を醸し出すそうです。これでは、職場全体にイヤな空気が充満して当然です。
叱ることは「反省させること」ではない
そもそも論になりますが、管理職向けの研修をすると、「イマドキの若手世代をどう叱ってよいかわからない」という相談されることがよくあります。
「叱る」という行為は、アプローチを間違えると、「パワハラ」につながる可能性も高く、悩む上司が多いのもうなずけます。
ただ、「若手社員の意識/実態調査※」によると、「正当な理由があれば叱ってほしい」という回答をしたのが74.1%。
※出典:レジェンダコーポレーション 2015年6月17日発表資料
つまり、4人中3人は、「自らの成長のために叱ってほしい」と考えています。ただ、注意すべき点は、「正当な理由があれば」という点です。
「正当な理由」とは、言い換えると「本人の成長につながる」ということ。応用行動分析学の視点で考えると、人が成長するとは、「良くない行動が減り、良い行動が増える」ということです。
叱ることの目的は、「相手に間違った行動を、正しい方向へと変える手助け」になります。つまり、「どこが改善点で、それをどう良い方向に変えていったらよいか?」を認識してもらうためのもので、「反省させること」でも「自分の感情をぶつけること」でもありません。
信頼される上司は「叱り上手」
「身体の暴力」よりも「言葉の暴力」のほうが脳のダメージが大きいといった、子どもに対する研究結果があります。
つまり、「叱る」という行為は、相手に感情的なダメージを与えやすいものです。だからこそ、「感情」に対する細心の配慮をしないと、うまく機能しません。
特に大切なのは、叱った後です。叱り上手な上司・先輩は、叱った後のアフターフォローにも気を配っています。
例えば、部下たちから絶大な信頼を得ているZ部長は以下のようなことを実践していました。
・叱り終わった後は、ともかく日常通りのテンションを保ち接する
・叱った日は帰りがけに自分から笑顔で「お疲れ様」と声をかける
・叱りすぎたときは素直に「言い過ぎて悪かったね」と謝る
・ほとぼりがさめた帰り際に、「期待しているから叱った」等、メッセージを伝える
些細なことかもしれません。しかし、こういった「些細なフォロー」が、相手と良い信頼関係を作る上でとても重要な意味をもつことになるのです。