リモートワーク環境では、部下が「主体的に仕事を進められるようにしていくこと」が求められています。その対応として「部下のオーナーシップ」を育てる必要性について、これまで述べてきました。上司は部下の挑戦を支援し、主体性を促すためにフォロワーとなる姿勢が大切です。

一方で、すべてにおいて部下の好きにさせてしまっては不具合がでることもあるでしょう。そのような時、上司は部下の仕事を方向付けたり、修正を加えたり、一定のコントロールをする必要が出てきます。

今回のコラムでは、部下のオーナーシップを低下させずに、部下をハンドリングするためのポイントを紹介します。

  • リモートワークの部下を適切にハンドリングできていますか?

「アメ」のマネジメントをやってはいけない

部下のオーナーシップを高めたいならば「アメ」に頼ることは避けましょう。インセンティブや評価などの報酬を意識させ、部下の活動を促すアプローチです。

オーナーシップを醸成しているとき、部下のなかでは仕事のプロセスを楽しむ感覚が芽生え始めています。高い目標に向かって、緊張感を持ちながらポテンシャルを最大限に発揮する。その感覚が楽しくて仕事をしているという状態です。

そこでアメを提示すれば、彼らの「仕事を楽しむ感覚」は失われます。仕事のプロセスよりも、結果に意識が向いてしまうためです。新しく知識を覚える楽しさや、能力が高まっていく実感、顧客に感謝される嬉しさ、そういったものに対する感度は鈍くなります。

アメが意欲のメカニズムを書き換えてしまうのです。場合により、アメがないとやる気が生まれず、さぼったり、手を抜いたりする部下が出てくるかもしれません。

こんな状態では、テレワーク環境で自律的に仕事を進めることは難しくなってしまうでしょう。

「ムチ」のマネジメントをやってはいけない

また「ムチ」によるマネジメントも適切とは言えません。

部下に「役割や責任を果たしていない」と強く指摘したり、実践すべき行動を厳しく指導したりするような関わりです。このようなマネジメントはアメと同じく、ムチがなければ仕事をしない、という状態を促してしまいます。

前提として、ムチによる「やるべき」「やらなければいけない」という意識は、健全なモチベーションとは言えません。学術的にはこのような緊張感や責任感が、疲弊感やストレスを高め、パフォーマンスの持続性を低下させてしまうことが分かっています。

「アメとムチ」は、部下を従順な姿勢にさせるためには有効であるため、上司のコントロール効率を高めるかもしれません。しかしその反面、部下が主体的な姿勢を持てなくなってしまうものです。部下がオーナーシップを発揮できなければ、パフォーマンスもやがて停滞してしまう可能性があるのです。

「短い質問」「付け足し」で軌道修正する

部下をハンドリングする際のポイントは、部下自身に仕事の進め方を調整させること。

そこで便利なのが「問いかけ」です。問いかけは、「答え」を出す主体は部下であるという前提を壊さずに、課題に気付かせることができます。

例えば、目標を意識していない部下に対して「最近、進捗はどう?」と問いかければ、目標を意識するでしょう。問いかけは、意識を向けさせ、思考を促す際に有効なコミュニケーションなのです。

気を付けたいのは、上司が「答え」を押し付けているような恣意的な問いかけです。

"最近、進捗が悪いから〇〇をやるべきと思うんだけど、どう思うの?"

この質問では、合意するか、謝罪することしかできないでしょう。部下自身の答えを考えたり、意見したりする余地が残されていません。

意識するポイントは、問いかけの長さです。問いかけが長くなればなるほど、上司の思惑が入り込みます。短い質問で、部下の意見を主軸にコミュニケーションを構成していきましょう。

また、問いかけても、回答が著しく「的外れ」になっているケースもあるでしょう。このまま本人に判断をさせていると、大きな不利益・不具合が発生してしまう。そういう状況です。

この場合は、上司の関与レベルをさらに高めることが求められます。必要になるのは「付け足し」。部下の答えに不足している要素を、上司が補うコミュニケーションです。

部下の意見を否定することなく、あくまで「あとは、○○をやってもいいかもしれない」「それをやるには××が必要だね」といった補足をして軌道修正を図るのです。

いずれにしても「部下=オーナー・上司=フォロワー」というポジションで関わることが必要です。部下に指導や指示をしたくなるときほど、この位置関係に配慮してコミュニケーションを取ることが大切となります。

執筆者プロフィール:神谷俊(かみや・しゅん)

株式会社エスノグラファー代表取締役
大手企業を中心にオンライン環境における組織開発を支援する。2021年7月に『遊ばせる技術 チームの成果をワンランク上げる仕組み』(日経新聞出版)を刊行。経営学修士。