皆さんは「内田洋行」という会社を知っているだろうか? 同社は明治43年創業、今年で104年を迎える"老舗"商社だ。マイナビニュースでは、以前に内田洋行が主催した「New Education Expo 2014」のレポート記事を掲載している。

内田洋行は、「教育分野」以外にも「情報システム分野」「オフィス分野」でビジネスを展開。ホームページでは、オフィス分野の仕事場を「ワークスタイル変革」のモデルケースとして紹介中だ。

木の香りしそうなオフィス

社員さんのお尻がはみ出している「止まり木」

カフェテリアのようなデスクや、座面の小さなイスが並ぶミーティングスペース。「オフィス」を商材とする分野の「オフィス」は、おしゃれだがちょっと変わっているようだ。実際の働き心地はどうなのか、というわけで、今回は東京都・八丁堀にある内田洋行オフィス分野の拠点「新川第2オフィス」を見学させてもらった。

同社のオフィス営業部隊が新川第2オフィスに移動したのは2012年のこと。ここがどのような目的・経緯で作られたのか、そして新しいオフィスが働く人に与えた影響などを伺った。お話をしてくださったのは、内田洋行 執行役員 知的生産性研究所 所長の平山信彦さん。「働き方(ワークスタイル)」コンサルティングの専門家だ。

働き方を変えるのは難しい?

内田洋行の新川第2オフィスが今の形式になったのは、「オフィス移転をきっかけに、社外に対して行っている『ワークスタイル変革』を自社実践し、その成果を数値で確認するため」(平山さん)なのだそう。

平山さん「『ワークスタイル変革』は、たくさんのメリットがありますが、働き方を変えるというのはとても難しいことなんです。昔から『働き方』のコンサルティング業務をしてきましたが、相談を受ける悩みで多かったのは『トップが先導して働き方を変える変革を行っているが、なかなか成果が出ない』というパターンです」

トップが先導して働き方を変えてくれるなんて、いい会社のように思われるが……

平山さん「確かに変革直後は効果はあります。しかし、社員が自分たちで考えないと、改革がなあなあになって終わってしまったり、会社自体が『指示待ち集団』となってしまうのです」

内田洋行の自社実践プロジェクトでは、2012年1月の移転に向けて、2011年の夏から活動を開始。社長や役員はあくまで「キックオフ宣言」と方向感を示すだけにとどめ、働きかたをどう変えるかはすべて現場に任せたという。

最初はブーイングの嵐!

活動開始は2011年の夏(イメージ)

現場の動きは、社員が集まってのミーティングからスタート。平山氏は3年前の同時をこう振り返る。

平山さん「最初はみんなブーイングの嵐だったと思います。なぜこんな忙しい時期に、半日も会議室にこもって自分の意見を出さなきゃいけないのかと(笑)」

議題は「2年後の有りたい姿」。ブーイングから始まった議論は次第に白熱し、1・2時間進めていくと空気がガラッと変わったという。

平山さん「我慢してミーティングを続けていくうちに、日頃の思いがどんどん出てきました。それぞれの意見が書き込まれた付せん紙が増えていって、最後には会議室の壁中が付せん紙の山になるぐらいでしたね」

議論の結果明らかになったのは、344件の取り組むべき施策。評価制度などを含む99件は「経営提言事項」としてトップに戻され、現場では残りの245件を役割分担し、スケジュールを組んで取り組むことになった。

その中には営業の仕事をスピードアップさせるという施策も。平山さんによると、以前のオフィスは「効率が悪く、仕事を遅くするような環境だった」という。

平山さん「打ち合わせしようとしても、打ち合わせコーナーが開いてなくて、待たないといけないとか。またインテリアの営業が、図面広げて作業しようとしても、机が狭くて書類の山で広げられないということも……。他にはお客様とのメールを見ながら見積書を表示するためのデュアルスクリーンが欲しいという声もありました」

環境面を整備すれば、仕事のスピードも上がるはず。ということで、これまでの問題点を解消した新オフィスを作ることが決まったのだった。

※第2回は7月15日(火)更新予定です。