――そして『特命リサーチ』でディレクターになるという流れでしょうか。

実はディレクターになる手前で交通事故に遭って、1年間、松葉杖の生活を送ることになったんです。でも『特命リサーチ』では、大学教授に電話して話を聞いて台本30ページを打つことはできるから、それを一生懸命やってたら吉川さんと財津さんに「台本面白いじゃない」と言っていただいて。それから、再現VTRを撮るのにディレクターチェアみたいなのを用意してもらって、松葉杖を置いて監督ぶったりして(笑)。そうやってディレクターにさせてもらったから、ADとしての下積みが全然できてないんです。

――『特命リサーチ』は番組終了まで担当されたのですか?

脚が治ってすぐくらいに、人事局労務部に異動になっちゃったんです。今考えたらジョブローテーションの一環なのですが、当時25~26歳の自分にとっては失格のらく印を押されたような気持ちで、この会社にいる限りはもう制作に携われないだろうなと絶望しましたね。スーツで定時の生活になってデスクに座ってても落ち着かなくて、何回もトイレの個室に座って時間を潰して、またデスクに戻るみたいな。毎回トイレで手を洗ってるから、僕が潔癖症だってウワサになったくらいです。

そんな会社生活を何とかしなきゃと思って映画の専門学校に行ったりもしたんですが、人事への異動の前に、若手芸人さんと若手ディレクターを結びつけて新しいことをやろうと声をかけてもらったことがあって、そこでラーメンズ、バナナマン、おぎやはぎ、作家のオークラとかと仲良くさせてもらっていたんです。そこで、普通の番組の企画書を書いても人事局員だと難しいので、グループ会社のバップにDVDソフトの企画書を出しました。ラーメンズ、バナナマン、おぎやはぎの3組で「君の席」というユニットを作って、オリジナルの映像コントを3巻出して、ライブをやってそれもDVD化するという企画だったんですけど、それが通って1年かけてやることができました。

――入社時の志望だったお笑いコンテンツの制作を、人事局でかなえることになるとは。

人事にいたのは2年間でまた番組制作に戻るんですけど、この2年間は今考えると自分にとってすごくプラスだったなと思います。そのDVDを作ったことで、お笑いというものが仕事の一つになって、今の状況のきっかけになったのは間違いないですし。

それと、大学を卒業して社会人になって、当時の制作は泥のように働いていたので、世の中の生活リズムというものが全く分かっていなかったんです。それが月曜から金曜まで朝9時から昼休憩1時間挟んで夜6時まで働いて、土日休みというのを初めて経験したんですね。土日を楽しむために平日に頑張るということを実感したんですが、考えてみるとテレビを見てくださる方はそういう生活をしている方も多いわけじゃないですか。だからその感覚を知ることができたのは、一番大きかったと思います。

――そして制作に戻って、最初に企画されたのが『落下女』ですか?

はい。初めての番組がコントで、芸人メンバーはバナナマン、おぎやはぎ、ラーメンズの片桐(仁)さんという「君の席」の人たちとドランクドラゴン、アンガールズ。そこで南海キャンディーズと出会いました。

  • 『たりないふたり』

『たりないふたり』を今後やることがあるなら…

――その後、山里さんが出演していた『潜在異色』にオードリーさんが参加して、山里さんと若林さんの『たりないふたり』につながっていきます。この2人との出会いは、やはりテレビマン人生において大きなものでしたか?

そうですね。始めた当時はもちろん楽しかったんですけど、すごく焦っていた記憶があります。

――「焦っていた」ですか。

山里さんと若林さんという人がいて、それぞれがすごい2人が合わさると、普段のコンビとは違うすごさがあるということを自分は一番間近で見させてもらってるけど、最初の頃は、世の中がまだ2人をそこまで評価していなかった。それを知らしめるには僕が頑張らないと2人に申し訳ないというのがあって、「何とかしなきゃ」という思いでしたね。

――そこから番組やライブを展開されて、2人の知名度もどんどん上がっていき、その目標は達成できたという気持ちでしょうか。

そうですね。『潜在異色』というライブ中のユニットから始まって、番組を1クールやってライブをやってというのを繰り返して、『明日のたりないふたり』(2021年)で解散ライブということになったんですけど、その間、ずっとストーリーがある2人なんですよ。私生活や仕事で劇的な変化があって、それすらもエンタテインメントに落とし込んでここまでやってきたと思うので、もしこの先やることがあるとするなら、もうストーリーではなくて日常の2人が見られるような環境がないかなと思います。

最後はドラマ化(『だが、情熱はある』)までしちゃってるし、ドラマなんてもうストーリーの極致じゃないですか。『明日のたりないふたり』のライブでは若林さんが倒れて救急車に運ばれちゃって、本当に台本を書いたドラマのようなことが起こったし。そういう『たりないふたり』には「人生ですごく影響を受けたんです」と言っていただくことが多くてすごくうれしいんですけど、何も影響を与えず、ただただしょうもない2人の姿も、皆さんに提案できる場がないかなって、今はちょっと思いますね。