――有田さんはYouTubeやAmazon Prime Videoでプロレスのチャンネルや番組をやられていますが、そうしたネット配信が勢いを増す中で、テレビの役割というのはどのように考えてらっしゃいますか?

正直、ライフスタイルが変わって、「この時間までに家に帰ってテレビの前で待たなきゃ」という時代ではなくなっているのかなと思うんです。特に若い世代の人たちは、よほど大きなスポーツのイベントとか生放送じゃない限り、その時間に合わせてテレビを見ようとはならないんじゃないかなと。YouTubeだったり、サブスクの配信コンテンツだったり、自分が好きな時間に好きなように見られるのが当たり前の時代になってると思うんです。でも一方で、ラジオというメディアがすごく席巻していた時代があって、それがテレビに取って代わられてもラジオはなくなってないわけじゃないですか。だから、テレビはなくならないと思いますし、「もう誰も見ない」とか「オワコン」だなんてとんでもないって思ってます。

何より、テレビは作っているものがとにかくゴージャスで“夢の箱”なのは間違いなくて。こんな不景気の時代でも画作りだけでものすごいお金を投入するし、いろんな芸能人をドカーンと集めて派手なものを作ったりできるじゃないですか。僕もYouTubeをやらせてもらってますけど、1回のコンテンツに何百万、何千万なんてかけられないですよ。芸能人がみんな集まってクイズやゲームをするとか、それこそ『脱力タイムズ』のようなニュースセットを使ってバカバカしいことをするなんていうのは、やっぱりテレビだからこそできることですし、テレビの制作の人たちは企画作りやセット作り、編集にも長年の歴史やノウハウがあるので、それらは間違いなくピカイチだと思うんですよ。もちろん、YouTubeの人たちが下手だと言ってるわけではなくて、1人の中学生が配信するYouTubeにも面白いものもあると思うけど、何百人の人間が何百万、何千万とお金をかけて作るものには、やっぱり夢があると思うんですよね。だからテレビの役割としては、そういう技術を駆使して派手なものを作り続けて、今のような“夢の箱”を残しておくことだと。企画力や美術や技術をどんどん継承していかなきゃいけないと思いますね。

ただ、わがままを言えば、テレビももっと自分の好きなときに見られるようになればいいなと思います。

――TVerも充実してきましたが、もっとコンテンツが増えていけば。

そうですね。ただ実は僕、10年ほど前に全録のビデオを買って見始めちゃったので、自分の好きなタイミングで好きな番組をまとめて見るっていうサブスクみたいな感覚を、いち早く取り入れちゃってるんですよ。1カ月くらい遡れるので、後で話題になって「めっちゃ面白かったよ」って言われたらチェックしてみたり。

作ってるものは面白いコンテンツが多いのに、テレビだけだと一瞬で終わっちゃうじゃないですか。それに、たまたま裏が強かったり、外に遊びに行っちゃって見ることができなかったということがたくさんある中で、結果、視聴率が悪いから終わっちゃうというのはもったいないですよね。だから、もっとTVerをはじめとした配信コンテンツが拡充して…もっと言えば全部のコンテンツがまとまっていたりして、視聴者がいつでもどこでも好きなときに、好きな番組を見ることができるようになれば、より面白い番組が増えていくんじゃないかなと思います。…いやあ何だかすいません、偉そうなこと言って(笑)

――こちらこそ、タレントさんにするような質問ではないのに丁寧にお答えいただき、ありがとうございます!

いやいや、今日はタレントじゃなくて、制作者のつもりで来てるんで(笑)

■『脱力タイムズ』のルーツはさんまの番組!?

――ご自身が影響を受けた番組を挙げるとすると、何ですか?

お笑いに目覚めたのは『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ)からだったような気がしますが、『脱力タイムズ』のスタッフ側として言えば、『明石家マンション物語』(フジテレビ)という番組にレギュラーで出させてもらっていたんですよ。そこに「大部屋」っていうコーナーがあって、我々海砂利水魚とか、U-turnとかいろんな芸人がいまして、テーマを振られてショートコントをプレゼンしていくっていう、今で言う『(さんまのお笑い)向上委員会』の閉店ガラガラみたいなのがあったんですね。そこで、ニュース番組の設定で、変なVTRを受けてスタジオの(明石家)さんまさんと米倉涼子さんが掛け合いするときに1ネタ欲しいというお題があって、僕は「ニュースマン」というキャラクターを持っていったんですよ。「これを見ろ!」とか言ってニュースでミニコントをやって、「お前たち、今ツッコミたかっただろう! ハッハッハッ! さらばだ!」って去っていくみたいな(笑)。これをやったら、三宅(恵介ディレクター)さんとさんまさんが「いいね!」と言ってくれて、ミニコーナーが始まったんです。

そのときに、ニュースという硬いフィールドでやるからこその緊張と緩和みたいな笑いができるというのを感じてやっていた気がするんですよね。お葬式で笑いが起きるみたいに、ニュース番組というコンテンツなら真剣に取り組めば取り組むほど笑いが起きるし、いろんなことを扱えるというのが、『脱力タイムズ』のヒントになってるのかなと。さんまさんに「『脱力タイムズ』やっとるな」と言われて、「実はニュースマンをやっていたのを見てくれたスタッフもいて…」と話をさせていただいたこともあって。だから、あれがルーツにあったのかなっていう感じなんですよね。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”をお伺いしたいのですが…

『有田ジェネレーション』(Paravi)をずっと一緒にやってきた岡田純一くんという方がいるんですけど、なかなか切れ者で。今は『ネタパレ』(フジテレビ)もやってるんですけど、「どっから見つけてきたの!?」という芸人をどんどん発掘する人なんですよ。そこで見つけた面白いなっていう人を『脱力タイムズ』と『有田P』をやってたときはその三すくみでやってました(笑)

  • 次回の“テレビ屋”は…
  • 『有田ジェネレーション』演出・岡田純一氏