フジテレビ系バラエティ特番『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー2021』が、今年もクリスマスイブの12月24日(25:15~27:15)に生放送される。1990年にスタートし、今年で31年目を迎える名物番組だが、この間、テレビを取り巻く環境は大きく変わった。

50年の長きにわたってバラエティ制作一筋の三宅恵介ディレクターは、この変化にどう向き合っているのか。最近のお笑い番組復権への見解なども含め、話を聞いた――。

  • 『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』演出の三宅恵介ディレクター

    『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』演出の三宅恵介ディレクター

■『明石家サンタ』とコンプラ「そんなに心配ない」

近年はコンプライアンスが強く意識されるようになったが、「漫才で容姿をツッコむのが古いとか、そんなのは当たり前のことで、昔からそういうネタは扱ってないんです。『明石家サンタ』は、コンプライアンスに関わるような内容のハガキを選ばなければいいので、そこはそんなに心配してないです。素人さんが出てくるので、生放送で発言に何かあった場合は、こちらが謝ればいいだけなので」という姿勢。

ただ、コロナ禍で時代の空気が閉鎖的になる中で、「ネタ選びはわりと慎重にはしています。嫌悪感を持たれてしまうと、笑いは絶対に起きてこないので」と明かす。

今年、BPO青少年委員会が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティ」について審議を始めたことに注目が集まったが、三宅Dは「基本的に、僕はそういうのをやってないんじゃないかな」と、どこ吹く風。

「テレビでバラエティをやる以上、『かわいそう』とか思われたらそれはやるべきじゃないし、収録だったらカットします。(明石家)さんまさんがすごいのは、タケちゃんマン(ビートたけし)にブラックデビル(さんま)がボンボン水に投げ込まれても、元気で痛い顔をせず、笑いに持っていくんです。だから、一見いじめられているような構図でも、いじめと感じさせないんですよね」

それを言語化したのは、三宅Dが「師匠」と仰ぐ萩本欽一だった。

「前に萩本さんが言っていたのは、『ボケというのはいじめられっ子の味方であるべき』だと。演じ方が下手だったり、“いじめられっ子のヒーロー”になりきれなかったりすると、そのまま伝わっちゃうんです」

走り高跳びのバーになってたけしに命じられたグレート義太夫に突進されても「バ~」とポーズを決め、たけしに牛乳を何杯飲まされても「飲めましぇん!」という名言を生んださんま。「笑えちゃうと『かわいそう』が消えてしまう。紙一重なんだろうけど、やっぱり腕だなと思います」と、改めて感心した。

  • 萩本欽一(左)と明石家さんま

■“土8”でコント番組復活「やっぱりいいな」

視聴率指標の多様化によってお笑い番組が復権し、フジテレビ伝統のスタジオコント番組も増えてきた。『オレたちひょうきん族』や『タケちゃんの思わず笑ってしまいました』などを手がけた三宅Dに、この現状はどう映っているのか。

「もったいないなと感じてしまうことがあります。全部セリフになってる。衣装着て設定作って漫才のようですが、コントはやはり芝居でないといけない。例えばコント55号は、普通の人を演じる(坂上)二郎さんを、変わり者の萩本さんがどんどん壊していった。ビアホールのコントでお客さんが『中ジョッキで』って言ったらボーイがビールの入っていない中ジョッキだけを持ってきたり、ウエイターが『ステーキは何にしましょう?』と尋ねたら『牛の種類はオスなの? メスなの?』と問い詰める。普通の設定をちょっとズラすというのを、芝居を入れながらやっていたんですよ。そういうコントがテレビでできるといいなと思います」

最近始まったコント番組には、「1回目の放送は全部見て、『このコントはこうやったほうがいい』とか『コントの基本は芝居だから』とか、レポートを書いてプロデューサーに渡しました」と、後輩たちに助言しているそう。

「バラエティで結局何が大事だったかというのを考えると、“キャラクター”と“音楽”だと思います。『ひょうきん族』について、何年経っても皆さんが覚えているのは、『タケちゃんマン』とか『知っとるケ』といったキャラクターで、『あのコントのあのツッコミが面白かった』なんてほとんどの人は覚えていない。それと、オープニングの『ウィリアム・テル序曲』や、EPOが歌ったエンディングの『DOWN TOWN』が印象的だったとか。今の番組は音楽の使い方が惜しいなと感じるので、そこができていくといいなと思います」

ここ数年途絶えていたレギュラーのコント番組が、『ひょうきん族』の放送されていた“土曜8時”で『新しいカギ』として復活したことには、「やっぱりいいなと思います」と歓迎。

一方で、「さまざまな事情があることはわかっているけれど、2時間スペシャルで飛び飛びの放送になってしまうのはかわいそう。1時間でいいから、レギュラーでやることが大事だと思います。レギュラー番組の作り方があるし、せっかく作ったキャラクターが定着しにくくなってしまうのでは」と、より良い放送環境も望んでいた。

●三宅恵介
1949年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、71年にフジポニーに入社し、機構改革に伴い80年フジテレビジョンに転籍。『スター千一夜』『欽ちゃんのドンとやってみよう!』『笑ってる場合ですよ!』『オレたちひょうきん族』『ライオンのいただきます』『ライオンのごきげんよう』『タケちゃんの思わず笑ってしまいました』『FNS27時間テレビ』『心はロンリー気持ちは「…」』『あっぱれさんま大先生』『タモリ・たけし・さんまBIG3!世紀のゴルフマッチ』『たけし・さんまの有名人の集まる店』『明石家マンション物語』などを演出した。現在は『はやく起きた朝は…』『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』を担当。著書に『ひょうきんディレクター、三宅デタガリ恵介です』(新潮社)。千代田企画代表取締役、日本大学芸術学部放送学科非常勤講師(22年3月まで)も務める。

■『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー2021』募集要項
ハガキに、寂しい出来事の内容・住所・氏名・年齢・職業・電話番号を明記の上、下記まで。
〒119-0188 フジテレビ「明石家サンタ」係
【締め切り】2021年12月17日(金) 消印有効