――これまで『オトナ高校』『おっさんずラブ』『私のおじさん~WATAOJI~』と、手がけられた作品は全てオリジナルですが、そこにこだわっていきたいという思いはあるんですか?

作れる限りはオリジナルを頑張ってみたいです。でも、私は漫画が大好きでなので、もちろん原作モノにも挑戦したいです。やはり自分のアイデアだけでは限度があると思っていて、もちろん他のプロデューサーや脚本家さんの手も借りていまは必死に作っていますけど、人間どうしても思いつかないモノというのもある。そういう意味では、原作モノにもぜひ挑戦したいと思います。

――バラエティにいたときも、ずっとドラマの企画書を出していたんですか?

ドラマ部に行きたい気持ちは入社してから一貫して変わらなかったのですが、バラエティに入ったらバラエティが楽しくなってしまって、ずっとバラエティの企画書ばっかり出していました(笑)。その中で1つ企画を通していただいて『仕返さナイト』という番組をやらせてもらいました。バカリズムさんと山崎弘也さんがMCで、社会にはびこる嫌なヤツに仕返しするっていう…今考えるとちょっと『わたおじ』みたいな内容ですね(笑)

単発をやってスペシャルもやって、レギュラーにしようと本気で頑張っていたのですが、数字が悪くて…。結局レギュラー化できずに終わってしまったのが本当に悔しくて「絶対次はレギュラー番組を作ってやる!」みたいなテンションの最中、ドラマ部への異動が決まりまして。夢が叶ってものすごくうれしい気持ちと、まだバラエティで目標をやり遂げていないという思いが交錯して、複雑な気持ちになっちゃって(笑)。ちょっと最初はしょんぼりしてたのですが、「いやよくよく考えたら私、ドラマやるのが夢だったんだ」と思い出して、頑張ろうと。でも最初は番組メンバーと別れるのが寂しくて、泣いたり…子供かって感じですよね(笑)

――いつも目の前の仕事に全力投球なんですね。

そうです。今しか見てなくて(笑)

――今後こういう作品を作ってみたいという構想はありますか?

最近思い始めたんですが、木ドラ(木曜21時枠)でシリーズものを作ってみたいです。シリーズものって、視聴者の皆さんには「同じものを繰り返しているなぁ」と思われがちかもしれないですが、少しずつ進化させながらも、今までの視聴者を裏切らないように番組を続けるって、実は新しい作品を作るよりずっと難しいことだと思うんです。それをやり遂げている先輩方がたくさんいて、自分もそんな風になれたらと思います。と同時に、『おっさんずラブ』で初めて“同じメンバーでまた一緒に仕事ができる”という機会をいただき、こんなうれしいことはないと純粋に感じたので。30代の目標に頑張りたいなと思います。

――『おっさんずラブ』が、ゴールデンタイムでレギュラー放送なんてことが…!?

それはどうでしょう(笑)。でも、『おっさんずラブ』が放送される前に、先輩の内山聖子EPが「20代で1つ、30代で1つ、40代で1つ、ヒットを作ればいいんだよ。私もいまその途中」と言ってくださったことがあって、その言葉がすごく胸に残っていて。私自身は、いつもどの作品も、“今作っているドラマが一番傑作だ、今の仲間が最高だ!”と思って作っているのですが、社会の評価が必ずしも伴うとは限らない。『おっさんずラブ』放送後は「次もヒットさせますか?」という質問をよくいただくのですが、自分自身はそんな風には思っていないし、逆を言えばいつだって大ヒットを信じて走っている。そんな中で、心強い言葉をかけてくれる先輩がいることは、とても幸せだなと思います。

――『おっさんずラブ』という企画を通してくれた人がいたり、DVD・BDの日本語字幕も対応してくれた人がいたり、社内のみなさんが応援してくれるという話を先ほどから聞いていると、本当に周囲の皆さんに恵まれているんですね。

そうですね。先ほど話にあがった内山EPや、プロデューサーになったばかりのときから育て続けてくださっている三輪祐見子GPが憧れの女性です。あの人たちみたいになりたいけれど、うーんきっとなれないなぁどうしよう、と背中を追う日々です。

私が今まで作ってきたドラマの主人公はたまたま全員ダメ人間で、1人だと何もできないキャラクターばかりで。周りが仕方なく助けてくれて、やっと成長する物語が多いのですが、…よくよく理由を考えたら、それは私がダメ人間だからかも(笑)。いつか先輩たちにも認めてもらえるような、自分だけの切り口を見つけて、プロデューサーとして成長してゆければと思います。

■電車の中で「おっさんずラブ見た?」

――昨今「若者のテレビ離れ」というのをよく言われますが、実感することはありますか?

そうですね。自分の周りにもテレビを持っていない友人がいて、ちょっと衝撃でした。新居に引っ越したときの優先順位が、テレビより冷蔵庫、エアコン、パソコンなどの方が高いみたいです。ドラマもスマホで見られる時代、というのも大きいかもしれません。

――『おっさんずラブ』もネットから火がつきましたもんね。

ネットが進化して、良いことも悪いこともあると思います。リアルタイムでテレビを見ていただきづらい時代になったのは間違いないと思うのですが、逆を言えば『おっさんずラブ』はTVerやAmazonプライム・ビデオ、Netflixで後から見てくださった方も多いようで。この前電車で女子高生が「『おっさんずラブ』見た? 今5話なんだけど、テスト勉強またマジやらなくなるわ~」「分かる~」って話しているのを聞いてしまって、うれしくて…。

――見られ方は広がっているということですね。

他に楽しいコンテンツが増えたり、ドラマの本数自体が増えたことに対して、作り手としてもちろん焦りもありますが、同時に見てもらうツールが増えたのも事実。何かお互いに良い生き残り方を見つけていけたらいいなと思います。

――ご自身が影響を受けた番組を1つ挙げるとすると何ですか?

大河ドラマ『新選組!』(04年、NHK)です! 本当に本当に大好きで、ゆかりの地も全部巡りましたし、テレビ朝日や他局の就活面接でも堂々と言っていたくらいで…(笑)。小学5年生で見た「北条時宗」(01年)以来、大河ドラマがずっと好きで、うっかり歴女にもなってしまい、NHKに入社して大河ドラマを作りたいとすら思っていました(笑)。『新選組!』は“悪い人”が一切出てこなくて、みんながみんな愛すべきキャラクター。“飛脚が来ない”という大倉孝二さんがメインの回があるんですけど、その人生の話だけでも大号泣したのを今でも覚えています。あぁ、だからいつか時代劇をやるのも私の夢ですね!

――登場人物がみんな愛されるキャラクターというのは、貴島さんの作品に通じる部分もあると思います。

あまり意識はしていないんですが、たぶん自分が性善説を信じているんだと思います。世の中に、根っからの悪人はいないんじゃないかなぁという希望とか、逆にどんなに明るくても意外な過去を背負っていたりとか。今までたくさんの人に出会って、人間は一面的じゃないんだと学んだので、そういう意識でキャラクターを作っています。

加地倫三エグゼクティブプロデューサー

それから、就職活動中にテレビ朝日のインターンの講演を受けた時、加地倫三EP(『アメトーーク!』『金曜★ロンドンハーツ』)が「俺は、自分の番組に出てくれた出演者に、絶対損をさせない」「バラエティ番組だから過酷な撮影もあるけれど、必ず“出て良かったな”と思わせようと決めているんだ」…みたいなことをおっしゃっていて、とても感動して。いつか私も、そんなことを言える人になりたいなと思いました。自分のドラマに出てくれたキャストに“この仕事をして良かった”と思ってもらうためには、自分の役を好きになってもらわないといけないと思って、どんな立ち位置でもきちんと意味のあるキャラクターを作ろうと心がけてはいます。結果たまたま、これまでの3作品は悪い人が出てこなかったのかもしれませんが、全然、これから嫌な人も出てきちゃうかもしれません!(笑)

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”をお伺いしたいのですが…

お会いしたことは1度もないのですが、『人生のパイセンTV』があまりに好きすぎて、フジテレビのマイアミ啓太さんを勝手に尊敬しています(笑)。あの番組は、攻めててぶっとんでるし、本当にいろいろ面白かったんですけど、マイアミさんやスタッフさんが一番楽しそうに作っているのが素敵だなぁと思って。取材対象者のことも、いじってるけど全力で愛している感じがとても好きでした。また新番組やるんですよね?絶対見なきゃ! 勝手にファンなので、超楽しみにしてますっ(笑)

次回の“テレビ屋”は…

フジテレビ『アオハルTV』総合演出・マイアミ啓太氏