• (前列左から)岡田結実、遠藤憲一 (後列左から)青木さやか、田辺誠一、戸塚純貴=『私のおじさん~WATAOJI~』制作発表会見より(テレビ朝日提供)

――『私のおじさん~WATAOJI~(わたおじ)』のお話も伺っていきたいのですが、バラエティ番組のADが主人公という設定は、やはりご自身もバラエティADを経験したことからだったのですか?

そうですね。ものすごく過酷だったんですけど楽しかった思い出もたくさんあって、あれがあったから今の自分があると思うんです。もともとお仕事ドラマもやりたかったので、どの職場を描くか選ぶなら、バラエティの制作現場を描いてみたいなと思ったのが発端の1つですね。

――そこにおじさんの妖精(遠藤憲一)が出てくるという、またすごい設定になっていますが…。

言いたいことを言えなくて我慢してるんだけど、“心の2ちゃんねる”が大荒れな人って、世の中にきっといっぱいいると思って。例えば、全然自分のせいじゃないのに怒られてるときに「私のせいじゃないんですけどー!」とか、理不尽な人と会話をしていて「何言ってんだろうな~この人」とか(笑)。AD時代にも、AD同士のグループ LINEがあって、会議中にみんなでこっそり、普段は絶対言えないことを愚痴り合ってた経験もあって…(笑)。でも、それがあるから人は生きていけるんですよね。そういうことを言える味方が周りに誰もいないときに、“自分にしか見えない毒舌妖精”が現れて、代わりに…というか何なら自分以上に悪口を吐きまくってくれたら、どんなにつらい場面でも、ちょっぴり笑いながら過ごせるかな…と思って作った企画です。

――「おっさん」「おじさん」と作品が続くのは、偶然ですか?

最近よく「おじさんが好きなんですか?」と質問を受けるのですが、全然そんなことはなくて、本当にたまたまです。次は絶対に若いイケメンのキラキラドラマを作ります(笑)

――それにしても、遠藤さんが本当に生き生きと芝居されていますよね(笑)

ドラマ部に入って最初に勉強で行かせてもらった撮影現場が『民王』(15年)で、そのとき初めて遠藤さんにお会いしました。その時ペーペーの私に対して、遠藤さんが「遠藤憲一です」って深々頭を下げてくださって、とっても感動して。その頃から「いつか自分がプロデューサーになったら、オリジナル企画でオファーしたい」とずっと思っていました。

――主演の岡田結実さんはいかがですか?

バラエティ現場のお仕事ドラマをやる!と決めた時に、誰よりもバラエティを知る女優さんに、体当たりで演じてもらえたら素敵だなと思っていたんです。結実ちゃんはおそらく、最もバラエティ番組に出演している女子高生。テンションが高くて明るい子供みたいな部分と、実は気遣い屋さんで達観した大人な部分が混在している女性だなと思ったので、その魅力を引き出せるような役を一緒にやれたらいいなと思いました。パンスト相撲はやらされるわ、全身ウェットスーツで海にほっぽり出されるわ、過酷な撮影も多い中で文句ひとつ言わず、日々成長してゆく姿を見ると、こちらが奮い立たせられます。

  • 『私のおじさん~WATAOJI~』(テレビ朝日系、毎週金曜23:15~ ※一部地域除く)
    新人AD・一ノ瀬ひかり(岡田結実)の前に現れた妖精のおじさん(遠藤憲一)が、口に出せない心の声や本音を吐き出してくれる新感覚お仕事ドラマ。2月8日放送の第4話では、上層部からのムチャな指示を受けたプロデューサーの泉(田辺誠一)がプライドのかけらもないテコ入れを繰り返し、ひかりらスタッフは大混乱に陥る。 (C)テレビ朝日

■実はどの会社でも起こる話

――それにしても、『わたおじ』を見ていると、バラエティの制作現場は大変なんだなとあらためて思います。

でも、世の中の会社はどこも大変なんじゃないかと思って。『わたおじ』は、設定はバラエティ制作現場ですが、お話のテーマは毎回すこぶる普遍的になっています。第2話は“女は全員いつかお局になる”というお話、3話は“40歳なっても才能が開花しなくて腐っている平社員”というお話。4話は“上層部にいろいろ言われて謝りたくもないのに謝る中間管理職”というお話です。この先はワーキングマザーの苦悩や、30歳を過ぎて仕事のモチベーションが急に分からなくなって転職する人の話も。よく「貴島の周りにいる人たちがモデルなの?」って聞かれるんですが、案外そういうことでもないんです。だから、見てくださった友人や職場の同僚から「あれ、○○さんのことでしょ!?」って言われると、逆にちょっとうれしくて。みんな面白いくらいに違う人の名前が挙がってくるし、それってつまり“誰にとってもそういう存在がいる”ということだと思えるので。

――劇中のバラエティ番組『限界MAX☆あなたも私もヤッテミー!!』は、貴島さんが考えたんですか?

脚本家とPチームみんなで考えました。ただ、自分が3年前までいた職場を描くというのは、バラエティの先輩方に見られるということなので、めちゃめちゃ緊張します(笑)。だから脚本家と一緒に何人もインタビューさせてもらいにも行きました。

――そこから、いろんな“バラエティ現場あるある”が描かれているんですね。

他にも、ADのグループLINEに「商店街ロケで困ったことある人、列挙!」「海ロケでヤバイ体験募集!」って送ったら、みんないっぱい教えてくれて(笑)。あぁ、そんなこともあったなあって思い出しながら着想をもらっていることもありますね。

――岡田さん以外も、キャストでは青木さやかさんが長年バラエティ番組に出ていますもんね。

青木さん演じるAP(アシスタントプロデューサー)の馬場さんがデスクでバランスボールに座っている、という設定は、青木さんの案なんです。ご自身がバラエティ番組の収録に行ったときにプロデューサーに取材してくださったみたいで、「バランスボールに座ってる人がいるらしいんだけど、どうかしら?」って提案してくださって。そしたらうちのスタッフも次々に「僕もそういう人見たことあります」と言うので、やってみようとなりました。他のキャストもみんなすごく熱心で、「バラエティの現場に連れて行ってください」って言ってくださったり、本当にありがたいです。