――昨今はさまざまなメディアが登場する中で、連続ドラマを取り巻く環境も厳しいと言われていますが、そんな中で、武内さんは今後のテレビドラマのあるべき姿をどう考えていますか?

うちの局は常に若い人たちに向けて作っていくっていう姿勢を貫いているんですけど、現状では若い人が地上波をリアルタイムで見ないという傾向がどんどん強くなってきていて、さらに、人口比率は僕らの世代が一番多いので、その人たちが見るような作品の方が当然数字は取れる。だけど、月9も配信の再生数がすごくいいということもあるし、それを求めている若い人たちは絶対存在しているんですよね。その人たちのためのドラマが減っているので、いわゆる月9的な恋愛映画がヒットするという変な状況が生まれていると思うんです。

僕は今、映画とドラマをやっているので、両方を俯瞰(ふかん)して見ると、そこにお客がいるんだということはハッキリ分かってるし、わざわざお金を払って映画を見ている若い人たちに、誰かがドラマを作っていかないと、かわいそうですよね。だから面白いと思えるものを、自信を持って、ある意味数字はそんなに気にしないで作っていくことが大事だと思います。

――恋愛モノといえば、武内さんはバラエティ番組『痛快TVスカとジャパン』の「胸キュンスカッと」の再現ドラマも撮られたんですよね。

常に新しいことをやっていきたいと思っていて、月9を撮っていても、ああいうベタな演出がなくなってきているんで、ド正面から恋愛ドラマに向き合ってみたいなと思って撮らせてもらいました。入社以来ずっとドラマ制作で、もともとバラエティ志望だったということもあって、外の空気も吸ってみたいなという気持ちもありつつ、単純に言えば好奇心ですね。

――「数字はそんなに気にしないで」とおっしゃられましたが、『デート』は一定の成果をあげました。

やっぱり、『デート』で1つの方向性を示せたのかなと思っています。あの作品の良いところは、一見若い人たち向けに作られているようで、実は間口を広げようと思って、ザ・ピーナッツの「ふりむかないで」(1962年)をオープニング曲に使ったりしてるんです。テーマ的にもすごく普遍的で、むしろ年を取った人たちに対して、いろんな結婚観があっていいんじゃいかということを、なんとなく伝えられたんじゃないかなと思っています。

――他局で恐縮ですが、『逃げ恥』(2016年、TBS)もそうした要素があったように思えます。

幅広い層が見られるような作りができていましたよね。そういう意味ではデートと似ているニュアンスはあったと思うんですけど、うちでももっとそうした作品をやったらいいのにと個人的には思っているので、そういう意味でも続編はやりたいなと思っています。

――これまでに武内さんが影響を受けたテレビ番組を1本挙げるとすると、何ですか?

助監督としてついていた『ひとつ屋根の下』(※5)ですね。あれも、柏木家がまじめに熱く生きていて、きょうだいのキャラクターもそれぞれ全然違っているから、そのズレが笑いになったり、最終的には熱い涙を誘うっていうところを学びましたね。永山耕三監督が演出した、全体のリズム感とか、テンポが良ければ良いほど笑えるんだっていうのを、現場で感じることができましたし、あそこまで熱く芝居をすると、感情がグッと鷲づかみにされるんだという経験。その全体のバランスがずっと頭に刷り込まれて、『ひとつ屋根の下2』では、セカンドディレクターでやらせてもらい、結果も出て、こういう風にお客さんは面白がってくれるんだということを肌で感じることができたのが、身になってますね。

(※5)…パート1は1993年4~6月、パート2は1997年4月~6月放送。江口洋介演じる柏木達也(あんちゃん)らきょうだいたちが繰り広げるホームドラマ。その他、福山雅治、酒井法子、いしだ壱成、大路恵美、山本耕史らが出演。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、武内さんの気になっている"テレビ屋"をお伺いしたいのですが…。

テレビ朝日さんの『池上彰のニュースそうだったのか!!』がすごく好きなんです。タブーとされているような宗教的・民族的なテーマも取り上げて、結構ギリギリのところまで攻めてる感じが良いなと思っているので、そこに踏み込んでいくバランス感覚のスタンスを聞いてみたいですね。

次回の"テレビ屋"は…

テレビ朝日『池上彰のニュースそうだったのか!!』ゼネラルプロデューサー・演出 保坂広司氏