テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第37回は、16日に放送された『ニノさん』(日本テレビ、毎週日曜12:45~)をピックアップする。

2013年4月に深夜番組としてスタートしたものの、わずか3カ月間で日曜昼に移動。それから早5年が過ぎたが、最近では、映画PR絡みとは言え木村拓哉がゲスト出演するなどパワーアップした感もある。

日曜昼の番組は、『アッコにおまかせ!』『噂の!東京マガジン』(TBS系)、『ビートたけしのTVタックル』『新婚さんいらっしゃい』『アタック25』(テレビ朝日系)などの長寿番組が多いだけに、「なぜ『ニノさん』が放送されているのか?」、その理由を探っていきたい。

ランダム企画は「当たればデカイ」が…

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日本テレビ=東京・汐留

『ニノさん』は、「5人の若手ディレクターが隔週替わりでランダムな企画を手がける」というユニークな制作体制であり、「毎週何が飛び出すかわからない」びっくり箱のような楽しさがある。

今回の企画は、「世の中を改善 ニッポン更生サミット」。議長の二宮和也に加えて、児嶋一哉、大島美幸、吉村崇、千原せいじの芸人4人と、伊野尾慧、戸塚祥太のアイドル2人が、「国会で議論するほどではない日常生活の問題点を徹底討論する」という。

1つ目のテーマ「ゼリーの容器がパンパンで開けるときに絶対こぼれる」は、殺菌で賞味期限を長く保つために仕方ない。2つ目のテーマ「靴下をとめているピンは本当に必要?」は、バーコードをつけるためのピンで、改善するにはコストがかかる。3つ目のテーマ「『とんがりコーン』の穴が昔より小さくなった」は、形は一切変えていない。

4つ目のテーマ「レストランで誕生日サプライズやめて!!」は、盛り上がらないので次行きましょう。5つ目のテーマ「最近ID・パスワード設定が多すぎて困る!」は、昔よりは便利になった。6つ目のテーマ「防犯用カラーボール、たった2個だけで大丈夫?」は、企業の皆様、ご検討お願いします。7つ目のテーマ「『無くそう逆走』のポスター、貼るべき方向が逆では!?」は、今後の展開を検討中。8つ目のテーマ「なぜ午前中は配達の時間指定がないの!?」「大きい荷物、家具店の配達時間 超ザックリし過ぎ!!」は、これといった結論を提示せず終了。

トークは思っていた以上にサクサクと進み、「サミットで激論」というより「井戸端会議で雑談」という印象だった。前述した通り、週替わり企画のため質のバラつきがあり、当たったときの爆発力はデカイのだが、今回は残念ながら、そうではなかった。

大御所ぞろいの日曜昼に際立つゆるさ

ただ、決して「面白くなかった」というわけではなく、二宮ならではのMC術は、いつもながら痛快だった。

二宮はつつがなく進行しているのだが、4人の芸人はすべて年上であるにもかかわらず、発言の約8割がタメ口。大島に「でもそうだよね」「いいじゃん」、せいじに「繊細!」「“順行”って何よ!」、吉村に「やってたよね」「でもさ、そんなことないよ」、児嶋に「じゃあやめよう」。後輩の伊野尾にも「あるね」「いろんなものあるじゃん」、戸塚には「何か普通だよね」と穏やかな友達モードで話しかけるなど、全方位タメ口だった。

さらに、「何やってるんだよ、とんがりコーン!」「こんなの見た記憶ないよ!」とテーマそのものにツッコミを入れて盛り上げるなど、冠番組らしい八面六臂の活躍。番組全体に二宮らしい脱力感を漂わせつつ、軽いアクセントを入れるように笑いを挟んでくる。

特筆すべきは順応力。二宮は嵐のメンバーや他の音楽アーティストと絡んでも、『ブラックペアン』で内野聖陽や小泉孝太郎ら俳優たちと絡んでも、何の違和感もなく溶け込んでしまう稀有なタレントだ。もちろんアイドルや俳優が“本職”なのだから当然とも言えるが、二宮は芸人と絡んだときも同様に、違和感なく溶け込んでしまう。そして、無邪気さの中に潜む大胆不敵さを見せてくれるのだ。

その最たるところが『ニノさん』であり、二宮が嵐という枠から最も外れられる番組なのかもしれない。年齢性別、経験実績など関係なく人の懐に入り、言葉を選ばず話しかけていく二宮。ジャニーズの先輩である中居正広も「タメ口」「無邪気」「大胆不敵」を感じさせるが、進行そのものはオーソドックスで、どちらかと言えばタモリら大物を下敷きにしたMCスタイルと言える。

一方、二宮のそれは、より会話重視であり、「面白そうなムードのほうへ自ら流されていく」というMCスタイルで、どの先輩とも似ていない。しかも、「これ以上進んでもグダグダになるだけ」というところまでいかない勘の良さもあるから、安心して見ていられる。

ただでさえ日曜昼は、和田アキ子、ビートたけし、桂文枝、森本毅郎…大御所ぞろいだけに、二宮のゆるさが際立ち、笑いを誘われてしまうのだ。

平日ゴールデンでの派生番組に期待

だからこそスタッフ側が、「どんな企画を立て、誰をキャスティングするか」の重要度は高い。

下記に、今年放送された企画を挙げていくと…

昔は超有名人だった“ナニモノさん”が登場する「復活劇場」
世の中のベタが定番化するまでを研究する「ベタ宮和也のベタ研究所」
芸能人のやりすぎセルフプロデュースを検挙する「芸能人盛り過ぎ調査」
日本人の平均自由時間である3時間で何ができるかを競う「クイズ!3時間もあれば」
英語で書かれたレシピで料理を作る「ホンヤクキッチン」
異性の多い世界に飛び込んだ人をクローズアップした「ニノさんの紅一点と黒一点」
芸能人の特技はいくらで売れるのかを調べる「ニノビジ」
芸能人が人生の転機を振り返る「私は今、〇〇です!」
各チームが脱力系ゲームに挑む「クラブ・ド・ニノサン」
人のトークにひたすらかぶせ続ける「キャプテンニノとかぶせ団」
特殊なコネを持つ人にカメラを預けて独自映像を撮ってもらう「お任せカメラ」
この世に存在する幻のメニューを再現する「レアメシクッキング」
日ごろのうっぷんを替え歌で表現する「ニノサさんの私の歌グランプリ」
新感覚の怖い話を披露する「平成アプデ怪談」
人々の感情が最も揺さぶられる瞬間を切り取った「6秒芸」
スマホのやり取りでゲストをプロファイリングする「スマファイリング」

「ニノさんの私の歌グランプリ」のような「どこかの番組で見たようなもの」もある反面、「キャプテンニノとかぶせ団」のようなレギュラー化できそうな好企画もあり、まさに玉石混交。ただ、安定感を求められがちな日曜昼にしては思い切った企画を手掛けているのは間違いない。

バラつきが出てしまうのは仕方がないとしても、夢はでっかく「ドーンとハネてゴールデンタイムの単独番組になる」くらいの企画が出てきてほしい。土日だけでなく平日夜もファミリー層が最重要視される時代になっているのだから、「日曜昼の番組から平日ゴールデンの番組が誕生」しても不思議ではないだろう。

次の“贔屓”は…我が道をゆくNHK独自のコント番組『LIFE!』

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『LIFE!~人生に捧げるコント~』に出演する(左から)内村光良、永野芽郁、佐藤健=NHK提供

今週後半放送の番組からピックアップする"贔屓"は、22日(21:00~)に放送される『LIFE!~人生に捧げるコント~』 (NHK、不定期放送)。内村光良が座長を務めるコント番組で、NHKゼネラル・エグゼクティブ・プレミアム・マーベラス・ディレクターの三津谷寛治、星野源が演じるオモえもんなどの人気キャラを輩出している。

次回放送の注目は、「朝ドラ『半分、青い。』(NHK)の収録現場に謎の人物が現れる」という設定のコント『半分、秋風。』。内村が豊川悦司の演じた秋風羽織に扮するほか、永野芽郁と佐藤健も登場するという。レギュラーメンバーに加え、裏の日テレ『嵐にしやがれ』とのコラボで嵐の大野智と櫻井翔も出演するなど、いつも以上の話題を集めるのではないか。

民放各局がプライムタイムのコント番組を避ける中、我が道をゆくようなスタンスで放送を続けているだけに、新たな変化や発見がないか、チェックしていきたい。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。毎月20~25本のコラムを寄稿するほか、解説者の立場で『週刊フジテレビ批評』などにメディア出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日の視聴は20時間(2番組同時を含む)を超え、全国放送の連ドラは全作を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』『話しかけなくていい!会話術』など。