テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第267回は、18日に放送された日本テレビ系バラエティ特番『超無敵クラス 2時間SP 旅立ち ~10代が想う未来~』(19:00~)と、翌19日にレギュラー放送された『超無敵クラス』(毎週日曜12:45~)をピックアップする。
2020年11月のパイロット版放送から日テレが放送時間帯を変えながら大事に育ててきた番組であり、ゴールデンタイム特番は3回目となる。今回は18日に初の土曜ゴールデンタイム2時間特番を放送し、翌19日昼にも通常のレギュラー放送。だからこそ、両者にどんな構成・演出の違いが見られるのか興味深い。
「総フォロワー数1,000万人超えの生徒が集まる」という“超無敵クラス”の中には、ゆうちゃみ、国本梨紗、おじゃす、井手上漠らテレビ出演が増えたタレントもいるだけに、この土日連続放送が今後に向けた試金石になるのか。
■『みんなの動物園』を彷ふつさせるトップ企画
最初のコーナーは、1年半密着を続ける高校生水族館長・亀井裕介くんをフィーチャー。亀井くんがモデルのせいらと絶滅危惧種を追い続ける企画の第14弾であり、今回は沖縄で「高校3年間ずっと捕りたかった」という2大怪魚を狙う。通常、土曜19時台に放送されている『嗚呼!!みんなの動物園』の視聴者を取り込みやすい構成であり、抜け目のなさを感じさせられる。
ただ、「本編のVTRが始まった」と思いきや、カメラがスタジオに切り替わり、MCの濱家隆一がゲストの広瀬すず、岸優太に話を振った。さらに、VTRに戻ると今度は「人気ナンバーワンアナウンサー」として羽鳥慎一がロケにゲスト参加。これらのキャスティングはどう見てもゴールデン仕様であり、これを冒頭から前面に押し出すのは視聴率巧者の日テレらしい。
亀井くんは次々に希少生物を発見し、激レア魚のタネハゼに大興奮。しかし、怪魚・ピエロカエルアンコウは見つけられず、映像で確認するだけで終わってしまう。ただ2日目には怪魚・ヨロイナマズ(プレコ)を捕獲。さらに、小エビしか捕れなかった羽鳥にもプレコを捕獲させる気づかいを見せ、最後は高校卒業後も館長を続けることを明かすさわやかなフィナーレだった。
「続いても超人気企画」というナレーションで始まった2つ目のコーナーは、「超無敵チャリ通ジャーニー」。往復52キロの道のりを3年間通い続けた矢不君明くんに、『ズームイン!!サタデー』でお天気キャスターを務める国本梨紗が密着する。
実は、矢不くんには4カ月前の放送で密着しており、今回は「卒業編」の放送。「通常放送の最高コンテンツに卒業というゴールデン向けの要素を加えて涙を誘おう」という、やはりここでも抜け目なさを感じさせられる。
矢不くんは亡き父が買ってくれた自転車で母のためにバス代を節約していたことを明かしたほか、親友や後輩らと交流し、現地住民のねぎらいを受け、国本と思い出のラーメンを食べて夕日を見るなどのハートフルなシーンを連発。最後も自転車ではなく走って登校して卒業式へ向かう様子は、まさに青春ドキュメンタリーそのものだった。
■主演ドラマ最終回前の櫻井翔が登場
3つ目のコーナーは、「超無敵! 12省庁潜入倶楽部」。テレビ初解禁の警察庁に「夢は官僚・生徒会大賞2020日本一」のこいくと、Popteenモデル・ゆめぽてが潜入するという。さらに、サプライズで櫻井翔が登場。これもゴールデン仕様か……とはいえ、続く『SHOWチャンネル』『大病院占拠』の番宣という意味合いが濃く、このキャスティングは賛否が分かれるところだろう。
警察庁への潜入は、「110番の最新システム」「科学捜査におけるさまざまな秘密」「恐ろしいサイバー犯罪の実態」「謎の組織インターポールの素顔」という4つのトピックスで構成。「報道以外カメラNG」であり「バラエティ初」のロケは貴重映像であり、最後に警察庁長官も登場する骨太なコーナーだった。
2人とのロケを終えた櫻井の「同世代じゃない視点がたくさん聞けて楽しかったですし、学びがたくさんありました。だんだん息合ってきたな」というコメントで番組は終了。3つのコーナーのうち、番組コンセプトである“超無敵クラス”のメンバーが活躍したのは、「超無敵チャリ通ジャーニー」の国本くらいだったのがちょっと残念だった。
スタジオゲストの人選やコメントの頻度はゴールデン仕様に変えてもいいが、“超無敵クラス”のメンバーがほとんど活躍しない構成には疑問が残る。番組発の若きスターを生み出すのは難しいかもしれないが、チャレンジしなければ存在意義が薄れてしまうのではないか。