テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第224回は、15日に放送されたフジテレビ系バラエティ番組『呼び出し先生タナカ 2時間SP』(20:00~)をピックアップする。

今春スタートの新番組で、コンセプトは「担任のタナカ先生(田中卓志)がさまざまな生徒ゲストを呼び出し、熱血指導!“勉強”と“笑い”を融合したお笑い教育“一斉テスト”バラエティ」。

今回は2回目の放送だったが、初回放送中から主に「『めちゃイケ』の抜き打ちテストとほぼ同じ」「生徒役のタレントが物足りない」「バカを笑うのは時代遅れ」の3点が指摘されていた。2回目の放送でこれらはどうだったのか。今後の可能性も含め、チェックしていきたい。

  • 『呼び出し先生タナカ』MCのアンガールズ・田中卓志

    『呼び出し先生タナカ』MCのアンガールズ・田中卓志

■「恥をかいて反省させる」のリスク

番組開始早々、1時間目の国語がスタートし、1問目は穴埋め問題の「□小□大」。やす子が「米小中大」と解答し、「ライス小にしますか? 中にしますか? 大にしますか? という四字熟語」と説明していきなり笑いを誘う。

続いて、山口もえが「幼小中大」、菊地亜美が「稚小中大」と解答し、学校にひっかけたおバカ解答が微妙にシンクロ。よく『めちゃイケ』でも見られた現象であり、この問題をオープニングに持ってきたところに「似たスタンスで笑いを取っていこう」という意思表示が見て取れた。

ここで「タナカ先生が学力テストを実施。『芸能人はバカの集まりじゃない』と証明せよ。でも、呼び出された生徒たちの解答はおかしなものばかり。だったら今夜もみんなにシェアして恥をかいて反省してもらおう。タナカ先生の教室、今夜も始業」というナレーションが流れ、タイトルコール。「恥をかいて反省してもらおう」というスタンスを打ち出しているが、やり方次第で「恥をかかせていじめている」と思われてしまうリスクもありそうだ。

さらに、タナカ先生が「みなさん感じませんか? あなたたち芸能人、バカだと思われているって感じませんか? 感じてくださいよ。バカがやる仕事だと思われている。悔しくないですか?」と12人の生徒たちをあおりまくる。現在は勉強が苦手な人に「バカ」とレッテルを貼ることに反発がある時代だけに、このコンセプトは最初から見る人を選ぶ感が否めない。

各教科は順位発表からスタートするのだが、国語の1位はこの日の優等生ポジションを務める福岡みなみだった。その後、王林、みりちゃむ、島太星らが珍解答を連発。さらに菊地亜美の「海老でかにのこおらを開く(正解は「海老で鯛を釣る」)」という解答を本人に実演させたあげく、「材料費として77,760円の請求書を突きつける」という演出で笑いを誘った。

次のTikToker・林拓磨の「ブラジルの琴線にふれる」という珍解答も実演。ブラジルの弦楽器・カバキーニョ奏者とサンバダンサーをスタジオに呼んで大騒ぎしつつ、林に踊らせたほか、タナカ先生も踊らされてスベらされてしまう。

この「珍解答を実演」という構成と、恥の上塗りをするような演出も、「『めちゃイケ』とほぼ同じ」という印象がある。ここまで同じなら、すぐにでも『めちゃイケ』ファミリーを呼んで後継番組であることを伝えてしまったほうが視聴者は見やすいのではないか。

■むしろ田中卓志の罰ゲームだった

2時間目は家庭科。問題はコロッケの調理で、満点を叩き出した1位の山口もえに続いて、ワースト3が発表された。結局、最下位はすべてをミキサーにかけて作った芸人のやす子で、激マズコロッケを自ら試食。一連の映像は『噂の!東京マガジン』(BS-TBS)の「やって!TRY」そのものだったが、生徒たちの料理にTRY娘ほどの破天荒さはなかった。盛り上がりに欠けたのか、あっさり終了してしまい、今後に不安を残している。

3時間目は社会。ここでは島が「アウストラロピテクス」を「アウストラロペニックス」というギリギリの解答で笑わせ、王林が「下ネタ大好き」、ミッツが「あ~ん」と反応する。さらに、みりちゃむが農民の「一揆」を「ヒステリック」と誤答すると、タナカ先生が「ああ~! もう~! オイ! 年貢!」とノリツッコミのように実演。こんなタナカ先生の姿も、まさに『めちゃイケ』の岡村隆史を彷彿させるものがあった。田中卓志なら新しい形の先生役を見せられそうな気がするのだが……。

4時間目は音楽。秦基博「ひまわりの約束」の歌唱テストで、12人中6人が歌手という混戦ムードの中、3位に王林、2位に林、1位に島が選ばれた。一方、最下位は山口もえで、スタジオでも再度歌わせられるが、途中でカラオケが爆発。「歌が下手すぎて爆発した」という演出でオチをつけたのだが、「芸人ではないガチの音痴は笑いづらい」という微妙なムードが流れていたのも事実だろう。

最後の5時間目は英語で、『めちゃイケ』でも珍解答連発の教科だったが、意外にもあっさり終了。笑いの撮れ高が少なかったのか? それとも、たまたまなのか? 出演者の力量なのか? 生徒も教師もチャンスの教科だけに、こちらもやや今後に不安を残した。

すぐに全教科総合の順位発表へ入り、まずはトップ3を発表。3位が和泉元彌で259点、2位が大倉士門で261点、1位がミッツ・マングローブで275点という結果だった。続いて4位の福岡みなみ、5位のでか美ちゃん、6位の山口もえ、7位の王林、8位の菊地亜美、9位のやす子、10位の林拓磨までの順位のみを発表。最後に11位のみりちゃむ95点と、12位の島太星52点が発表され、島はタナカ先生から呼び出されてしまった。

お説教タイムの演出は、「タナカ先生と島がバイクにまたがり、強風と大量の紙吹雪が浴びせられる」というもの。しかし、強風を薄毛の頭に受け、紙吹雪を口の中に食らっていたのはタナカ先生のほうだった。「最下位の生徒に罰ゲームをさせるのではなく、先生役の田中卓志を生かして笑わせる」という選択は時代にフィットしている。今後はお説教のタイムのバリエーションを増やして、飽きられない工夫が必要になるのかもしれない。