テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第213回は、2月25日に放送されたテレビ朝日系特番『修造&一茂のイミシン ~北京オリンピック名場面SP~』(20:00~)をピックアップする。

日本人選手の奮闘に、時差の少なさもあって高視聴率を連発した北京オリンピックが20日に閉幕し、民放各局がそれぞれ特番を放送した。閉会式直前に早くも放送したTBSの『北京オリンピック総集編』、閉幕翌日の日本テレビの『くりぃむしちゅーの! THE・レジェンド北京五輪SP』と比べて後発になるテレ朝の特番は、どんな構成で挑んだのか。

27日に放送されたフジテレビ『ジャンクSPORTS メダリスト集結! 北京五輪舞台裏を大告白! 超豪華3時間SP』も含め、各局の特番を比較しながらオリンピック関連番組の現在地点を探っていきたい。

  • 『修造&一茂のイミシン ~北京オリンピック名場面SP~』MCの松岡修造(左)と長嶋一茂

    『修造&一茂のイミシン ~北京オリンピック名場面SP~』MCの松岡修造(左)と長嶋一茂

■プレー映像を見ながら選手がアフレコ

オープニングは、カーリング女子のロコ・ソラーレが銀メダルを獲得したシーン。画面左上には「北京五輪名場面」、右上には「スクープ ぶっちゃけ メダル秘話 カー娘 九死に一生 イミ 心の声」という文字が表示されていた。

「ロコ・ソラーレ大躍進の秘密」と題して山口剛史選手が解説したのだが、その内容は「Aプラン、Bプランを瞬時に判断していた」などのカーリング中継を見ていた人なら大半の人が知っている情報。この段階でワイドショーで扱うオリンピック情報と同等レベルのライト層向け番組であることが分かった。

ただ、画面左上に藤澤五月選手、左下に吉田夕梨花選手、右上に鈴木夕湖選手、右下に吉田知那美選手のワイプを表示し、「プレー映像を見ながら心の声をアフレコする」という演出は他局では見られないもの。「これだけで見る価値アリ」と思わせるほどのエンタメ性を感じさせた。

ところが、ロコ・ソラーレのメンバーは、まだ帰国後の隔離期間中。彼女たちの映像は内田篤人が主に『報道ステーション』(テレ朝系)用のインタビューを行ったときに撮影されたもののようだった。閉会式当日まで戦っていたロコ・ソラーレは仕方がないとしても、他のアスリートたちはどの程度、この特番に出演するのだろうか。

ここでタイトルコールがあり、スタジオトークがスタート。進行役のタカアンドトシから「スポーツのイミシンな場面に注目し、隠れた意味を深掘りする番組」という趣旨が説明された。

まずは、日本人選手が獲得した18個のメダルをパネルで簡単に説明し、続いて最多4個のメダルを得たスピードスケート女子の高木美帆選手をピックアップ。清水宏保がレース中の「舌ペロ」に注目し、「これはリラックスしていたことの象徴であり、メダル獲得につながった」ことを分析した。ただ、高木美帆選手は登場せず、この特番用らしい取材映像も見られず、メダル獲得直後のインタビューを使う構成だった。

■MC・松岡修造不在のスタジオ

スタジオにフリースタイルスキー男子モーグル・銅メダルの堀島行真選手、リモートでスノーボード女子ビッグエア・銅メダルの村瀬心椛選手が登場。村瀬選手がロコ・ソラーレの選手たちと同じように、プレー映像に合わせて心の声をアフレコし、実は「4位だと思って落ち込んでいた」ことが明らかになった。

続いて28年ぶりのメダルを獲得したノルディック複合団体をフィーチャー。アンカーを務めた山本涼太選手が心の声をアフレコしたが、普通の解説になってしまい、「難しいですね」と苦笑い。さらに、個人ラージヒルで銅メダルを獲得した渡部暁斗選手も心の声のアフレコに挑戦して盛り上げた。

ここでようやくメインMCの松岡修造が登場。「松岡修造のイミシーン」というコーナーで、フィギュアスケート・羽生結弦選手について熱っぽく語ったが、松岡はスタジオではなくリモート出演だった。しかも「このコーナーは松岡修造と長嶋一茂との2人が話しているのみ」であり、おそらく別収録だったのだろう。松岡は他のコーナーには一切絡まなかっただけに、「松岡修造のイミシーン」のみが事実上の『修造&一茂のイミシン』という番組と言えるのかもしれない。

その後、スピードスケート女子のチームパシュート、スキージャンプで金・銀2つのメダルを獲得した小林陵侑選手をピックアップし、さらにスタジオのモーグル男子・堀島選手をピックアップ。決勝で痛恨のミスをしつつも、瞬時の判断で銅メダルにつなげた様子を実演解説した。

当然だが、やはりこの特番用に行われたインタビューや心の声のシーンは見応え十分であり、他特番との差別化もできている。しかし、スタジオ出演したのは堀島選手だけであり、その他も過去に公開されたインタビューを使ったものが多かった。制作サイドとしては、コロナ感染予防の制約がなければ、もっとアスリートたちを呼びたかっただろうが、やはり寂しさを感じざるを得ない。