鉄道は文字通り「鉄」の「道」。鋼鉄製のレールを2本並べて線路を作り、その上に列車の車輪が載っている。鉄道車両のデザインはさまざまだけど、レールはどれも同じ形。しかし、じつは用途によって大きさと重さが違う。

  • レールの種類はいろいろ

レールの断面図を見ると、車輪が載る部分に四角いアタマがあり、その下が細くなって柱状になり、下は末広がりになっている。最も普及しているレールで、鉄道業界では「普通レール」と呼ばれているという。他に分岐器付近で使われる細身の「ポイントレール」、路面電車で使う「溝付きレール」、上下にアタマを持つ「双頭レール」など特殊な形もあるけれども、その話は別の機会にして、今回は普通レールに絞りたい。

そもそも、なぜレールはこんな断面をしているのだろう。まずアタマの部分。ここは車輪と接する部分だから、接地面を大きくする必要がある。また、車輪が擦って摩耗するため、厚みも必要だ。それなら、上から下までアタマの部分の大きさのまま作ればいい。しかし、実際には細い柱となっていて、断面を見るとくびれている。そして一番下は末広がり。これはわかりやすい。誰が見ても安定した形だし、ここに犬釘をひっかけてレールと枕木を固定している。

レールのくびれを作る理由は2つ。用途としては、ボルトの穴を空けやすくするため。レールとレールをつなぐとき、穴を空けてボルトを通し、継ぎ目板を取り付ける。レールが太ければ穴を空ける工程も長くなるし、ボルトも長くしなくてはいけない。もうひとつはレール自体を軽くするため。レールは上から荷重がかかるけれど、横からの荷重は小さい。つまり横方向の厚みは小さくしてもいい。厚みが小さければレールの重量も小さくなり、運搬や曲げなどの加工がしやすくなる。

レールの製造工程は圧延といって、熱い鉄の塊を伸ばしていき、型やローラーで形を整えていく。だからくびれがあってもなくても「その形状に加工する」工程があるだけだ。複雑な形だけど、上記の理由でくびれは必要になる。

さて、断面としてはどれも同じ。素材もほぼ同じ。しかし普通レールは断面の大きさによって、おもに4種類の規格がある。断面が大きければ鋼鉄の使用量も増える。したがって普通レールの規格は1mあたりの重さによって分類される。国内のレール製造大手は新日鐵住金とJFEスチールだ。どちらも国内向けとして、おもに60kg・50kg・40kg・37kgのレールを量産している。これ以外のサイズも特注品として生産しているようだ。工場内やトロッコ向けとして、もっと軽いレールもある。

  • レールの断面のイメージ。重量が小さくなるほど細く低くなる。Nがつくレールは背高にした改良版

60kgレールは新幹線向け。在来線の高規格路線にも使われている。重量の大きな貨物列車が走ったり、特急列車が高速で走ったりする路線だ。50kgレールは在来線の幹線向け、40kgレールは在来線のローカル線向けがおもな用途である。37kgレールはケーブルカーや私鉄のローカル線などに使われる。かつては閑散区間向けに30kgレールも使われていたけれど、現在は生産されていない。つまり、37kg以上のレールに置き換えられているとみられる。この規格はJIS規格(日本工業規格)で定められている。

また、海外には異なる規格があって、重量貨物が多いアメリカではAREMA(American Railway Engineering Association : アメリカ鉄道協会)規格、ヨーロッパではEN(European Norm)規格などがある。つまり、2つのレールの間隔(軌間)は国際的な共通規格があるけれども、レールそのものは各国の独自規格になっている。

近年では、レールのアタマに熱処理を加えて硬度を高めたり、炭素の含有量を増やしたりして摩耗しにくいレールが作られているとのこと。昔から変わらぬ姿をしたレールも、じつは地道に進化しているようだ。