2006年のヒット作『幸せのちから』の監督ガブリエレ・ムッチーノと俳優ウィル・スミスのタッグが再び実現した『7つの贈り物』。普段の快活なウィル・スミスの印象とは裏腹に、今作では孤独で暗い想いを抱えた主人公を好演。一人の男の中に渦巻く自責の念や恐怖、希望や矛盾にスポットを当て様々な意味での"生"を問うドラマです。

予告編の最初に来るのは、ウィル・スミス演じるベン・トーマスの独白。

「7日で 神は世界を創った
7秒で 僕は…
自分の世界を壊した」

これから起こる物語のきっかけを暗示する台詞です。 この予告編で注目したいのはナレーション的に視界に浮かんでは消えてゆく文章です。

"ベン・トーマスの秘密─
見知らぬ7人を選び 7人の運命を変える
7つの行為が導くのは─ひとつの真実"

ベン・トーマスの秘密とは一体何なのか。本編ではこのナレーションの通り、見知らぬ7人と接触していくうちに秘密が徐々に明らかになって行き、やがてひとつの真実へと辿り着きます。

そして最後に現れた一文、

"あなたなら、受け取れますか?"

これこそが、本作のタイトル『7つの贈り物』のこと。7人それぞれに贈られる贈り物とは一体何なのでしょうか?

本作の予告編は本国アメリカで使用されているドメスティック版と、共に製作されるインターナショナル版のうち、インターナショナル版をリメイクしたもの。本国以外の世界各国で使用する予告編には、このインターナショナル版が公開する国の配給会社の意図に沿ってリメイクされたり、あるいはそのままの形で使用されています。

相手役は『デス・プルーフ in グラインドハウス』『イーグル・アイ』のロザリオ・ドーソン

タイトルである『7つの贈り物』は日本でつけられたオリジナルの邦題。この邦題をつけるにあたり、数ある候補から紆余曲折を経て、劇中にも登場する「ギフト」という言葉をキーワードに、『贈り物』という言葉に決められたそうです。

原題は『SEVEN POUNDS』。"POUNDS"は重さの単位でもある「ポンド」のことです。この"POUNDS"には深い意味はないそうですが、シェイクスピア原作の「ヴェニスの商人」に登場する台詞から引用されているそうです。読んだことのある方はなら、作品を見終えた後「ああ!」と納得するはず。実に感慨深いタイトルです。気になる方は是非調べてみてください。

ちなみにスペインでのタイトルは「Siete Almas」、イタリアでは「Sette anime」、訳すと『7つの魂』。ドイツは「Sieben Leben」、フランスは「Sept Vies」で、訳は『7つの命』、中国「七磅」で訳は原題に忠実に『7 POUNDS』などなど、国が違えばタイトルも違うのは実に興味深いです。

本作のテーマは、単純な"愛"などではありません。"愛"の映画とカテゴライズしてしまうには、あまりにも陳腐なジャンル分けです。この作品のテーマは"贖罪"。一人の平凡な男の祈りと迷いと許しの映画です。

主人公が他者に"愛"を与える物語、と捕らえるのはあまりに単純。主人公が他者に"許し"を得る物語と捕らえるならば、おそらく鑑賞しているうちに"向かうべき結末"を知るであろう観客は、主人公の模索の経緯を共に旅することになるでしょう。

見知らぬ人へ接触し、彼らの人生を変えていく

冒頭でも「7秒で自分の世界を壊した」と告げる主人公ですが、壊したのは自分の生活や人生だけではありませんでした。

ごく平凡な男が、軽い気持ちで行った不注意により甚大な事象の加害者になってしまった――。その瞬間から、「軽い不注意」は「重大な罪」へと瞬時に変化したわけです。この"ごく平凡な男"というのがミソで、聖人でも極悪人でもない、一般人だからこその葛藤や矛盾や個人的な見解から、このドラマが生まれるのです。

人は過ちを犯す生き物ですが、もしその過ちが取り戻すことが出来ないとしたら、私は、そして皆さんは一体どんな償い方をするのでしょう。

本作を観て感じたのは、年齢や経験によってこの作品の印象や注目点がまったく違うのではないかということ。そしてさらに、主人公への感情も全く別物になるのではないでしょうか。

そういう意味で非常に考えさせられるだけでなく、興味深い作品です。過ごしてきた環境や生まれた年齢などがまったく違う人たちと観に行くのが、最も本作を味わい、噛み締めることが出来る方法ではないでしょうか。

「良いか悪いか、善か悪か」という投げかけではなく、「一人の普通の男がどうしようとしたか、そしてそれをあなたならどう思うか」という疑問を観客は真正面から投げかけられます。

この疑問こそ、この作品から私たちへの"贈り物"なのかもしれません。

ベンの"罪"とは? 贈り物の正体とは?

『7つの贈り物』は2月21日(土)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー。

STORY

男の名前はベン・トーマス、手元にあるのはなんの繋がりもない7人の名前のリスト…。ベンは彼らに近付き、彼らの人生を調べ始める。そしてある条件が合えば彼らの運命を変える贈り物を渡そうとしている。彼は一体何者なのか、そして何の目的でその7人に近付いたのか─

かつらの予告編★ジャッジ

内容バレバレ度 ☆☆
本編との共鳴度 ☆☆
ウーム考えさせられ度 ☆☆☆☆☆

春錵かつら(はるにえ・かつら)

映画予告編評論家 / ライター

CMのデータ会社にて年間15,000本を超える東京キー5局で放送される全てのCMの編集業務に3年ほど携わる傍ら、映画のTVCMについてのコラムを某有名メールマガジンにて連載。2004年よりフリーライターとして映画評論や取材記事を主とした様々なテーマを執筆しながらも大手コンピュータ会社の映画コンテンツのディレクターを務めたのち、ライター業に専念、現在に至る