「ファイナルアンサー?」

この台詞を聞けば誰もが司会者みのさんの顔を思い浮かべる、「クイズ$ミリオネア」。しかしこの番組、現在までに世界80カ国以上で放送されている超・人気番組なんです。今回の映画予告★コンシェルジュは、その超人気番組を題材とし、本年度アカデミー賞8部門に輝いた『スラムドッグ$ミリアオネア』をご紹介いたします!!

舞台はインド。世界最大のクイズ・ショウ「クイズ$ミリオネア」で残り一問というところまでたどり着きながら、詐欺容疑で逮捕されてしまったスラム育ちの少年、ジャマール。彼は、一体どうやって答えを知り得たのでしょうか。まずは予告編をどうぞ。

「ようこそ クイズ$ミリオネアへ」

沢山の視聴者がTVに釘付けになっているシーン。「クイズ$ミリオネア」はインドでは2000年に放送開始され、地元ムンバイだけではなく世界中にも配信されている大型番組。放送局のStar Plusには第一回の放送時に世界中の視聴者ファンから2,000万件もの電話が殺到したというエピソードもあるほどで、インドのテレビ史上最も成功した番組の一つとも言われています。

「無学の青年ジャマールが─―今夜 史上最高額を賭けたクイズに挑戦します」

むむ、見たことあるある!! 円形に並ぶ観客に囲まれるように、向き合って座る本作の主人公・青年ジャマールとインド版みのもんた、ともいうべき司会者。日本に住む私たちにも、すっかりおなじみとなったシーンです。

学校にすら通ったことのない青年が次々難問を突破していく

「問題です」

の一言でチャララチャララチャララジャーン~♪とまたもやメロディと、見覚えのある4つの回答選択肢の枠が画面上に現れ、まるでTVの一視聴者になったような錯覚にとらわれます。真剣なまなざしで挑むジャマール……と、瞬間、場面が転換。ジャマールは取調室で頬を打たれ、

「不正の方法を言え」

と警官に詰め寄られています。

「不正じゃない 生きながら学んだ」

とジャマールが言い放つと、シーンはジャマールの幼少期へ。隙間なく敷き詰められたようなトタン屋根、そこはインド・ムンバイ。子供時代を色鮮やかに映し出す中、ナレーションが流れます。

世界最大のゲームショウで、残り一問までたどり着いたスラム育ちの少年。
無学の彼が、どうやって答えを知り得たのか─。

場面は戻り、次々と正解を繰り出していく主人公ジャマールに、

「最後は答えられん」

とすかさず"インド版みのさん"の怖い耳打ち!! 司会者も、そして警察でさえもこう思っていました。「インドの負け犬(スラムドッグ)が、答えを知っているわけがない」と。しかし庶民はアメリカンドリームのような奇跡を信じたいもの。一門一問勝ち進むたびにジャマールは視聴者の支持を得、人々は街角のTV画面にかぶりつきになるのです。

ジャマールがいかに答えを知り得たかを追う一方で描かれるのは、色彩豊かなインドを背景に展開する一途な恋。まさに「駆け巡る」という表現がぴったりくるほど、さまざまな色と時代が交錯し、ジャマールの少女ラティカへの想いが窺えるシーンが映し出されます。本編でジャマールの想い人ラティカは、必ずと言っていいほど黄色いものを身につけているのですが、まるで「幸せ」を暗示しているかのよう。

そして最後、

「ファイナルアンサー」

この一言で舞台はブラック・アウトし、タイトルが現れます。

この予告編は日本オリジナル。本作が作られたイギリスでは「ジャマールが答えを知り得た理由」に焦点をあてた予告編が制作されていますが、アメリカなどでは「一途な恋」をクローズ・アップしています。

「日本版ではラブストーリーというより、本編でも描かれる"主人公が人生を駆け抜ける勢い"を予告編でも表現したいと考え、疾走感溢れる演出を心がけました」と語るのは、配給のGAGAの担当者。映画の原題は『Slumdog Millionaire』ですが、日本で出版された原作のタイトルは『ぼくと1ルピーの神様』。原作のタイトルをそのままつけると子供っぽさやファンタジー的要素を感じてしまう。また、"ミリオネア"という響きだけで日本では「=クイズ番組」と連想されるのも都合が良いということもあり、原題のまま邦題に採用することとなったそうです。

「そこで単純に『スラムドッグ・ミリオネア』とするより、何かワンポイントが欲しかった。そこでクイズ番組「クイズ$ミリオネア」でもおなじみの"$"マークを起用しました。」とのこと。これで耳にした時だけでなく、見た目からもキャッチーなタイトルとなっています!! ちなみにTVでみのさんが登場する予告編を目にした人も多いのではないでしょうか?こちらはフジテレビの「クイズ$ミリオネア」の制作会社が作ったCM。TV番組とリンクした予告編CMはとてもユニークです。

さて、本編ですが、予告編でも途中で挿入される「望まなくても答えを知ることになる その過酷な人生と運命」という言葉は、一言でこの映画を表すのに、これ以上はないというほどピッタリのコピー。「クイズ$ミリオネア」発祥の地・イギリスでは2001年に全問正解した解答者が不正行為を行っていたことが収録後の編集で発覚し、逮捕されるという事件があったそうなので、本作と重ねてしまいそうですが、こちらの解答者は勿論、不正なんてありませんのであしからず。スラム育ちの青年の半生と一途な恋を、ただ回想するのでなくクイズの出題から追うという物語のスタイルは斬新で、実にドラマティカル。冒頭の出題も心憎い演出なので必見です。

私がこの映画を見て感じたのは「ジャマールがクイズの正解を知り得たのが運命」なのではなく「ジャマールが知っていることがクイズとして出題されたのが運命」なんじゃないかってこと。学を身につけることが難しい環境で過ごしたスラム育ちの青年が答えられることといえば、おそらくほんの一握り。その証拠に、試しに出された問題に彼は答えられない。なので、この映画は「クイズの正解を知り得た理由」を追うドラマなのではなく、「彼が答えられる問題が出題された運命の奇跡」を、彼を捕まえた刑事たちと目にするというドラマなのです。

さあ、あなたも

  • A. 劇場に出かける
  • B. 見逃す

A.劇場に出かける、で、ファイナルアンサー?

かつらの予告編★ジャッジ

内容バレバレ度 ☆☆
本編との共鳴度 ☆☆☆☆
キラキラ新鮮度 ☆☆☆☆☆

『スラムドッグ$ミリアオネア』

テレビ番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、残り1問までたどり着いた18歳の青年ジャマール。いまだかつて医者も弁護士も、ここまで勝ち残ったことはない。あと1問、正解を出せば番組史上最高の賞金を獲得できる。しかしインドのスラム街で育った無学の少年が正解を知るはずがない、と不正を疑われたジャマールは逮捕されてしまう。果たして彼はどうやって正解を知り得たのか…!?

監督: ダニー・ボイル
出演:デーヴ・パテル 、 アニル・カプール 、イルファン・カーン、マドゥル・ミッタル、フリーダ・ピントほか

4月18日(土)より全国ロードショー


(C) 2008 Celador Films and Channel 4 Television Corporation

春錵かつら(はるにえ・かつら)

映画予告編評論家 / ライター

CMのデータ会社にて年間15,000本を超える東京キー5局で放送される全てのCMの編集業務に3年ほど携わる傍ら、映画のTVCMについてのコラムを某有名メールマガジンにて連載。2004年よりフリーライターとして映画評論や取材記事を主とした様々なテーマを執筆しながらも大手コンピュータ会社の映画コンテンツのディレクターを務めたのち、ライター業に専念、現在に至る