元国税職員さんきゅう倉田です。好きな控除は「基礎控除」です。

「アンガーマネジメント」という言葉がありますね。日本アンガーマネジメント協会によると「怒らないことを目的とするのではなく、怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることを目標としてい」るそうです。

また、アンガーマネジメントを実践しているタレントの方は「不快なことがあったときに、5秒ほど時間をとって怒りを抑える」と言っていました。

僕は、怒りの感情を露わにすることはみっともないことだと思っています。僕の父親は酒を飲んでは常に怒り、飲んでいなくとも気に入らないことがあると激昂する人間でした。そのような父を見て育ったぼくは、怒りを嫌悪しています。

そもそも芸人になったことで、多くの事象を楽しめるようになりました。失礼な取引先との出会いを待ち望んでいるし、仕事仲間のミスをチャンスに変えようと待ち構えています。

それでも、不快な出来事が襲ってくることがあるので、未然に防ぐために工夫しています。

すべてのストレスは期待である

怒りや不快感を未然に防ぐために、それらのもとを断つことにしました。

ヒトは期待を裏切られたときに不快感を覚えます。待ち合わせの相手が遅れないという期待、注文したサービスが正しく提供されるという期待、自分の意見が否定されないという期待、周囲の自動車が交通ルールを守って走るという期待。ヒトが持つあらゆる期待が裏切られたときに、その場には怒りが生まれます。期待=約束とも言えるし、期待=法とも言えます。

約束や法が守られなければ、多くの人が不快に感じると思います。ただ、それらは避けられない。一方で、避けられる怒りがあります。それは「上下関係に基づく期待」に因るものです。

先輩や大切な人が約束の時間に遅刻しても怒らないけれど、後輩が遅刻して怒ったことはありませんか。上司からミスを指摘されても怒らないけれど、部下にミスを指摘されたら不快に思いませんか。

同じ出来事であっても、あなたとの関係が異なるだけで怒りの一因となることがあります。やっていることは同じなのに、後輩や部下からの仕打ちには怒り、不平を言う。古来の儒教の教えが染み付いているし、江戸時代の朱子学の影響があるので仕方がありません。立場は変えられない。

部下や後輩を自分より下位に置くから不快なのであって、心の中で上位か同列に置けばいい。後輩のことを先輩と同じように敬い、部下のことを上司と同じように尊重する。そうすれば、今まで感じていた怒りや不快感を減らすことができます。

2022年唯一の怒り

それでもすべての怒りを防ぐことはできません。2022年は、相手に伝えなかったけれど、ぼくも1度だけ怒ってしまいました。

ぼくはいくつか連載を持っていて、本の製作もあるため、常に執筆を行っています。取材を受けることもあるので、話したことをライターさんに文字に起こしてもらうこともあります。

そうやってチームで仕事をしていると、稀にやる気のないライターさんと出会ってしまいます。能力が乏しいとかミスが多いとか、どうにもならない場合はなんとも思いませんが、やる気がないのは困ってしまいます。

昔、村上龍さんが『無趣味のすすめ』(幻冬舎)で「やる気がなければやめてもらえばいい」とおっしゃっていました。

ライティングにおいて、ほとんどのミスと能力不足はやる気で補えると思っています。小説や作文技術の本をたくさん読めば文法能力とリズムは改善されるし、時間をかけて校閲すれば誤字と不適切な表現は防ぐことができます。だから、やる気のない人間だけ排除すれば製作物の質が向上する。

反対に、やる気のない人間を排除できないとき、怒りを覚えてしまいます。その人にも、その人を任命した人にも、期待した自分自身にも。

会ったらその稚拙な文章について説明を求めてしまいそうです。それは、自分の求める怒りと無縁の人間像に反する。だから、会わないようにしています。怒りを発露しないことが、個人事業者として次の仕事につながると信じているからです。

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