元国税職員さんきゅう倉田です。好きな小説の書き出しは「調査官は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の経理担当者を除かねばならぬと決意した。」です。

毎年12月になると、税制改正が発表されます。
皆さん個人に関わる改正もあれば、法人に関わる改正もあります。納税者に有利な改正もあれば、不利な改正もあります。

今回は、住宅ローン控除が改正されました。住宅を買ってローンを組んだときに適用され、所得税や住民税の還付が受けられる制度です。ほとんどの方が、住宅を買ったときに利用しているのではないでしょうか。

住宅ローン控除の存在は、国民の住宅購入を後押ししていました。しかし、住宅ローンの金利が著しく下がり、皆さんが支払う金利より住宅ローン控除で受けられる控除額の方が大きくなっていたため、改正された模様です。

不動産会社に勤めている大学時代の同級生に話を聞くと、「支払うローンより住宅ローン控除の方が大きいから家を買った方が得ですよ」と客に提案することもあったようです。 今回の改正で、所得要件が厳しくなり(所得が2,000万円を超えると、住宅ローン控除は受けられなくなる)、控除率は7%に下がり、全体として最大控除額は減少します。

また、控除の期間は、新築住宅では13年間ですが、中古住宅は10年間と区別されます。手続き面では、緩和も見られます。住宅ローン控除を受けるためには、会社員の方でも確定申告が必要ですが、その際に提出するローンの「年末残高証明書」の提出が原則不要になります。

これから住宅を買う人たちのために

制度の改正がどうのこうのと言われても、改正には抗えない。買うときに住宅ローン控除について調べれば良いと思います。

それより、表面化しない住宅購入時のトラブルを知っておくべきだと思いました。そこで、ぼくの知り合いが住宅を買った際に言っていた不満を紹介します。

友人Aは、結婚して子供ができ、八王子に一戸建てを買いました。購入前に、住宅メーカーの担当者から住宅ローン控除で還付が受けられる旨の説明を受け、還付金額の概算を見せられたそうです。客の負担感を減らして、住宅購入を促すんですね。

Aは住宅だけでなく、住宅ローン控除にも精通している担当者を信頼し、購入を決めました。さて、翌年の確定申告期間になって、税務署に行かなければいけないことを思い出しました。しかし、購入前に説明を受けたきり、住宅ローン控除の説明はありません。

確定申告の前に、もっと詳しく教えてもらえると思ったのに。結局、すべて自分で調べ、必要書類を用意して、管轄の税務署に確定申告をしに行きました。

友人B子は30歳を超えて、将来に不安を感じ始めました。長く付き合っていた彼氏とも別れ、結婚を予定する相手もいません。このまま自分はひとりかもしれない。 お金のことをもっと考えなければいけない。無料のセミナーに参加することにしました。 女性限定のそのセミナーでは、ファイナンシャルプランナーがライフプランニングや老後資金について解説したのち「不動産を購入して所得税の還付を受けよう」「不労所得で悠々自適な生活を送ろう」と言ってマンションのパンフレットを配ったそうです。

B子は、30歳を超えて給与が増え、貯金の使い道に困っていました、銀行金利が著しく低いことはもちろん知っているし、会社員の友人がマンションを買って不動産所得を得ている話も聞いたことがありました。

意を決して、自分もマンションの購入を決意します。担当者によると、住宅ローン控除も受けられるし、賃貸に出せば不動産所得の赤字分を給与所得と相殺して還付金が得られるそうです。なんてお得なんでしょう。

B子は確定申告などしたことがないし、調べたこともない。でも、担当者は確定申告の時期になったらご連絡ください、と言ったそうです。安心して購入し、賃貸に出すことにしました。

翌年、確定申告のやり方を聞こうと担当者に電話をしてもつながりません。仕方がないから、自分で調べることにしました。 そこで、賃貸に出した場合は、要件を満たさないので住宅ローン控除が受けられないことを知ります。

「聞いていた話と違う」

ちゃんと話を聞いていなかった自分も悪いと思いましたが、なんだか騙された気分です。 不動産屋は住宅ローン控除のメリットは教えてくれますが、確定申告の方法までは案内してくれません。かといって、税理士さんに頼むほどの申告内容でもない。ほとんどの人が自分で調べて、自宅からパソコンで申告するか、税務署に行くことになります。

普段から税について調べておくと、確定申告の際に困らないのでお勧めです。

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