元国税職員さんきゅう倉田です。好きな 間接税は「消費税」です。

税理士さんや芸人仲間と集まっているときは全く話題になりませんが、SNSでは話題になっているインボイス。

すでに、制度開始が決まってから数年経っていますが、ここにきて「税の制度が複雑になるのが困る」「納税額が増えるのは困る」「今までが不公平だったんだ」などと囃し立てられています。

まだ、開始まで2年あります。今から少しづつ勉強しておけば、2年後にはインボイスマスターとして、殿堂入りできます。

インボイスを学ぶ前に

なんとなく税金に関する制度だろうな、とは思っていても具体的になんなのかはわからない、それがインボイス。

これは消費税に関する制度です。

まず、多くの個人事業者が消費税を納めていません。「え、消費税って納めるものなの? 」と思う人もいるでしょう。

取引をして消費税を受け取っている人は、消費税を納める必要があります。でも、消費税など受け取った覚えのない個人事業者もいるでしょう。芸人をしていると、自分で取引先に対して請求書を出すことがありません。

だから、消費税を受け取っている感覚がない。

それでも、所属事務所は本体価格と消費税を合わせて、企業やテレビ局に請求しています。

例えば、事務所に10万円で仕事の依頼が来たとします。事務所は、依頼主に税抜か税込かを確認します。税抜なら請求書の金額は11万円、税込なら10万円になります。

そのうち何割かが仕事をした芸人のみなさんに振り込まれますが、毎月の明細書には消費税の金額は記載されていません。

でも、そのなかには消費税が含まれています。

一般に、お店で物を買ったら、レシートに消費税の金額が記載されています。ぼくが、どこかの企業と取引するときも請求書には消費税の金額を記載しています。どんな取引にも消費税がかかっているんです。

※私物をメルカリで販売するような場合は、一般的に消費税がかかりません

消費税が記載されていない場合でも"消費税は含まれている"と考えるのが、消費税のルールです。

会社員やパート・アルバイトであれば、消費税はお店で一方的に払うものであって、受け取ることはありません。でも、我々個人事業者は、取引をして消費税を受け取ります。

受け取ったその消費税は、国や地方自治体に納めなければいけません。だから、毎年、消費税の確定申告をして、消費税の金額を計算して、消費税を納めます。

お、ちょっと、待てよ、2月か3月に、税務署に行ったりパソコンで国税庁のホームページにアクセスしたりして、確定申告をしているぞ。あれは確か、所得税だったな。消費税の確定申告なんて聞いたことがないし、周りは誰もやっていないぞ。

そう、消費税の確定申告は必要な人と必要でない人がいます。必要でないのは「免税事業者」だからなんです。

2年前の売上が1,000万円以下の人は、消費税の確定申告も納税も免除されます。だから、ほとんどの個人事業者が消費税のことを気にしなくてよい。取引をして消費税分の10%は受け取っているのに納めなくてよいという優しいルールの中で仕事をしています。

「2年前? 」と疑問に思ったあなた。売上がずっと1,000万円以下の人は、ずっと免税事業者です。

そして、再来年からインボイスが始まると、これまで免税事業者だった売上1,000万円以下の人たちも、消費税の確定申告と納税が必要になります。今まで払わなくてよかった消費税を払わなければいけない。

だから、みんな騒いでいるんですね。

登録するかしないか選べるインボイス

今まで消費税の納税と確定申告をしていなかった人は、インボイスに登録するかしないかを選ぶことになります。

登録をすれば消費税の確定申告と納税をしなければならないし、登録をしなければやることは今までとかわりません。

だったら、登録しない方がいいと考えるでしょう。

でも、登録しないと取引先が損をしてしまいます。だから、消費税を納めるようになる分、手元のお金は減ってしまうけれど、インボイスに登録せざるをえない個人事業者がたくさん現れると思います。

次回はインボイスについてもう少し詳しく解説します。

参照 : 消費税の軽減税率制度・適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)

新刊『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』

(総合法令出版/1,404円)
さんきゅう倉田の初の著書が発売されました。ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員やパート・アルバイトの方のための最低限の税の情報を、たのしく得られます。購入は コチラ