元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな小説の書き出しは「では納税者のみなさんは、そういうふうに事業所得だと言われたり、雑所得だと言われたりしていた、このぼんやりと白い所得がほんとうは何かご承知ですか」です。

持続化給付金が始まったことにより、多くのフリーランスが雑所得と事業所得を気にするようになりました。ぼくはずっと、Twitterで事業所得にしなさいと呼びかけていましたが、違いがわからない赤ちゃんフリーランスからすれば、何を言っているのかわからなかったと思います。

持続化給付金の条件に関する騒動で、雑所得にしていたばかりに持続化給付金がもらえないとわかったフリーランスたちは焦りました。ぼくが「事業所得にしなさい」と言っていた意味にも気づいたかも知れません。

では、雑所得と事業所得は何が違うのでしょうか。

まずは、給与所得と事業所得を知ろう

  •  元国税芸人さんきゅう倉田の「役に立ちそうで立たない少し役に立つ金知識」 - 第165回「フリーランスの仕事は雑所得と事業所得どっち ~前編~」

所得税の対象となる所得は10種類あります。全部覚える必要はありませんが、会社員やパート・アルバイトが受け取るお給料が、給与所得であることは知っておきましょう。芸人であるぼくは、吉本興業や企業から報酬をもらう個人事業者なので、事業所得で申告しています。

芸人、アイドル、俳優、ライター、画家、漫画家、弁護士、税理士、スポーツ選手など、さまざまな職業の人が報酬を受け取り、事業所得で申告をしています。ただ、そのような職業であっても、会社に所属して給与をもらっていれば給与所得です。

例えば、警備会社に勤めるレスリングの選手がいますが、おそらく、会社から毎月固定のお給料をもらっているのではないでしょうか。これは給与所得です。さらに、大会などで優勝をすると、主催者から賞金がもらえるかも知れません。これは、雑所得や事業所得、場合によっては一時所得になるでしょう。このあたりの判断は、個別具体的に見ていかないと難しいところです。

要するに、どの所得になるかの判断は難解なのです。みなさんが会社に勤めて、お給料をもらっているだけなら間違いなく給与所得ですが、もっとずっとずっと小さい会社、従業員がふたりしかいないような会社であれば、その従業員がもらったお金が給与か事業所得にあたる報酬かどうかは、書類を見ただけではわかりません。最高裁判所の判例や通達、各々の事情を考慮して判断することになります。

なぜ、雑所得だと持続化給付金がもらえない?

※先に断っておくと、ルールが変わって、雑所得でも持続化給付金がもらえるようになりました

雑所得というのは、他の9種類の所得に該当しない所得です。会社員だけどちょっと記事を書いたとか、主婦だけど手作りのアクセサリーをフリマで販売したとか、仮想通貨で利益を出したとか、年金をもらったとか、そういう場合です。

それまでは雑所得になっていた所得でも、事業として行うようになったのなら事業所得になります。これはグラデーションになっていて、その人の働き方や環境によって変化します。ただ、基本的には、フリーランスであれば、事業所得で申告しているはずで、持続化給付金の条件に「事業所得で申告していること」とあっても問題ないと思います。しかし、いざ、制度が始まると、給与所得や雑所得で申告をしているフリーランスっぽい人々が大勢いることがわかりました。

フリーランス=事業所得であるという判断で、雑所得を持続化給付金の対象から除外していましたが、フリーランスであっても、無知ゆえに雑所得で申告している人がいたんですね。持続化給付金の条件が緩和されてよかったです。政府の柔軟な対応に、敬意を表したい。

もちろん、すべての雑所得と給与所得の人が、持続化給付金の対象になったわけではありません。あくまで、フリーランスに準ずる働き方の人が対象です。

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