元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな取引は「課税取引」です。

会社員と異なり、フリーランスは報酬を自分で決定しなければいけません。

報酬の金額を提案するのは、自分と取引先どちらもありますが、最終的に仕事を受けるか否かは、自分自身で判断できます。なんのしがらみもないとは言いませんが、会社員の方ほど、縛られることはありません。

フリーランスになったばかりで仕事が少なければ、報酬が少なくとも仕事を受けてしまうと思います。それは否定しません。

そのうち、取引先が増えてくると、仕事を選べるようになります。ぞんざいな扱いをしてくる取引先を切り、打ち合わせばかりの取引先を切り、マーケットの通常価格より値引いてくる取引先を切ることができます。

そうしていくと、良質な仕事が残っていき、単価も上がっていきます。いま、取引している価格より低い金額での新規の依頼は断り続けることで、必然的に報酬の金額が上がります。

場合によっては、自分で報酬の金額を示す必要があります。

相手は、あなたの取引価格を知りませんので、失礼に当たらない範囲で可能なかぎり低い金額での取引を希望してきます。

相手の立場になって考えると「これ以上の金額は出せません」という金額をはじめから提示してくることは多くないでしょう。すると、交渉の余地があります。

  • フリーランスになったばかりで仕事が少なければ、報酬が少なくとも仕事を受けてしまう

しかし、お金の話というのは、憚られるものです。お金の話ばかりしているぼくだって、「報酬を上げてください」「この金額ではお取引は難しいです」とは言いづらい。

それは、自分に自信がなかったり、金額を上げることに理由がなかったりするからです。そういう場合は、論拠を持って金額を提示して、自分と相手のストレスを減らすのはどうでしょう。

いま、あなたの仕事量がキャパシティの限界、ひたひたなら、無理をしないとこれ以上仕事を受けられません。そんなときは、受けている仕事の平均単価か最高額を、クライアントに提案します。

「他の取引先がこの金額なので、それ以上は下げられないんです」と言われて「今回は、諦めます」とみっともないことを言う取引先はあまりいません。相手にも矜持があるので、1度くらいなら成約に至ることが多いように思います。

また、取引先が複数なくとも、あなたの行う作業や投入する知識と技術に価格をつけることで、正しく有利な取引価格を導くことができます。

例えば、ライティングの仕事なら、3000文字書くのに3時間かかる→自分の時給は○○円で設定している→3時間×○○円を請求する とか、講演会だったら、講演1時間△△円+現地への移動往復8時間△△円+打ち合わせ3回△△円+スライドの作成10時間△△円+講演用機材の償却費△△円+事務所の家賃の一部△△円+資料収集△△円=▲▲円 と価格決定までのプロセスを、見えるようにします。

そうすると、取引先の予算と合わなかった場合に妥協できる部分も分かりますし、取引が増えてきたときに講演1時間の単価を上げて取引価格を改定したり機材の購入による改定をしたりできます。

つまり、あなたの価値や能力、必要経費を知っているのはあなただけなので、仕事を時間や作業、能力で細かく分け、それぞれに価格をつけて取引価格を決定し、他者から評価されて仕事が増えれば、時給や技術料の単価を上げて取引価格を見直して、報酬を上げていく必要があります。

働き方改革で、フリーランスになる方、副業を始める方は増えています。マーケットの取引価格を知らなければ、著しく低い報酬を提示されても気づかないかもしれません。そうならないためには、アンテナを張り、同業との交流を怠らず、今まで以上にお金に敏感にならなければいけません。いつだって、あなたを守ってくれるのは、他ならぬあなた自身です。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。 ツイッターは こちら