元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな法人は「医療法人」です。
とある病院では、看護師さんにはみんなでひとつ、お医者さんにはひとりひとつの携帯電話が支給されているそうです。お互いの電話番号が電話帳に登録されているので、個人的に連絡先を知らなくとも、仕事中に連絡を取り合うことができます。
だから、病院内に大量に流通する携帯電話、そのうちひとつでも入手できれば、たくさんのお医者さんに連絡を取ることができます。
所得の高いお医者さんの電話番号は、悪い人たちなら喉から手が出るほど欲しい情報でしょう。
そんな貴重な情報である電話帳のデータを、退職した人間か、はたまた、未だ何食わぬ顔で働き続けるたぬきか、携帯電話を持っていた誰かが流出させてしまいました。
突然かかってきた不動産屋からの電話
それに気づいたきっかけは、勤務時間中にかかってきた1本の電話でした。内部の人間しか知らない携帯電話に、不動産業者から電話がかかってきたそうです。
電話に出たお医者さんは、銀行預金がいかに意味のないことか、不動産賃貸がいかに素晴らしいかを説かれ、実際に会って深く話を聞き、不動産を購入してしまいました。
もちろん、電話は彼一人にあったわけではありません。他のお医者さんにも勧誘はあり、その中でひっかかったのが彼一人でした。
仕事が忙しければ、貯蓄や個人年金について考える時間を取るのは難しいと思います。しかし、将来への不安は誰にでもある。そんなとき、専門知識を持った誰かに吹き込まれ、気持ちが傾いてしまうのは仕方のないことかもしれません。
このことは、病院内に周知され、登録されていない番号からの着信に気をつけるよう指導されました。
数年経った現在、不動産を買ったお医者さんは、購入から今日まで損失を出し続けているそうです。とくにトラブルがあったわけではなく、単純に入居する人が少なく賃料がローンの支払いを上回らない状態が続いています。
よく調べずに赤の他人を信じて不動産投資を始めることも問題ですが、本来、病院外の人間からの着信がないはずの携帯電話にかかってきた電話に出て、おそらく、不正に電話番号を入手したであろう業者の話を親切にも聞いてあげて、さらに、お金を払ってしまうなんて、予想以上に不合理です。
どうして、そんな危険を犯すのでしょうか。
詐欺師も別の詐欺師に騙される
本業以外のよくわからないビジネスに、気軽に手を出すべきではありません。世界中の成功者が、わざわざ自分の不得意なことに手を出して失敗しています。
失敗するのは、善良な人だけではありません。悪い人たちも、自分の行っている最低の仕事以外に手を出して、騙され、汚い金を失っています。
先日、そういう世界の人たちに取材をしている方に会いました。その方は、一般の方向けに悪いことをして大儲けしているおじさんから、詐欺に遭った話を聞いたことがあるそうです。
おじさんは、知人同士の会食の席で初めて会った、この世のものとは思えないくらいうさんくさい男に、新しい仮想通貨を上場前に買わないかと持ちかけられ、購入しました。
「まだ、一般には知られていない仮想通貨です。上場すれば、100倍になります。ヤマギシさんには、特別にお譲りしますよ。」
そう言われて、1億円分購入しましたが、もちろん上場することなく、担当者は連絡が取れなくなり、お金は騙し取られてしまいました。
「くそ！騙された」と言っていたそうです。
他人に嘘をつかない正直者は、他人が嘘をつくとは考えません。
逆に、日常的に他人を騙す人は、相手が嘘をつく可能性を常に考えているはずです。
それなのに簡単に騙されるのは、自分の得意分野でないにも関わらず、ろくすっぽ調べもせずに欲にかられて手を出してしまうからです。
楽して儲けたい、という気持ちは分かります。
しかし、本業では市場調査をし、従業員を指導し、企画を仕上げてから新調に取り組む賢い人でも、目が曇れば、努力を放棄して損失を被ってしまうことを忘れてはいけません。賢い人でも、新しいことを始めればミスをする。ぼくのような凡人は、より慎重な行動が望まれます。
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