JR東日本・JR西日本が北陸新幹線の試乗会を実施。3月14日の開業へ気分が盛り上がる。その3月改正で引退する「トワイライトエクスプレス」の名前が、2年後に運行開始する新しい列車に引き継がれることになった。新型車両、引退車両、路線復旧など、話題も豊富だった2月のニュースから、今回は4つの話題をピックアップした。

2月7・8日に北陸新幹線長野~金沢間の一般試乗会が行われた

北陸新幹線、報道試乗会と一般試乗会が盛況に

JR東日本・JR西日本は2月7・8日、北陸新幹線の一般試乗会を開催した。長野~金沢間で、両日ともに長野駅発・金沢駅発を1往復ずつ運転。各回700名、合計2,800名が新路線を楽しんだ。これに先立ち、2月5日には報道関係者などに向けた試乗会も開催されている。北陸新幹線開業準備の総仕上げだ。

一般試乗会は昨年12月に告知され、応募件数は8万5,000件以上、応募総数者総数は21万人以上で、定員の約77倍だったという。北陸新幹線への期待の大きさが数字に現れた。2月14日から新幹線特急券の販売が始まり、1番列車の「かがやき」は東京発・金沢発ともに25秒で完売となった。

報道試乗会は前日まで悪天候の予報だった。しかし当日は晴天。長野~金沢間は全線の約4割がトンネル区間だけど、残り約6割は高架線で景色が良かった。金沢では白山を遠くに望み、富山県では立山連峰が広がる。糸魚川駅付近では紺碧の日本海、長野県内では妙高山が威容を見せる。山と海の景色を楽しめる路線だから、なるべく明るい時間帯に乗りたい。

金沢駅に設置された多目的トイレ

試乗会の報道は当然ながら列車中心になる。しかし、駅施設の初公開でもあった。金沢駅は1階が地上改札階、2階が乗り換えコンコース、3階がホームになっている。新幹線と在来線の乗換えは2階で可能。新幹線用改札が設置されるとはいえ、隣のホームに行く感覚で乗換えができそうだ。これなら、北陸新幹線と福井・関西方面との連絡もスムーズだろう。金沢駅には広い多目的トイレがふたつあり、車いすや乳幼児連れの家族旅行には頼もしい。ホームの柱の金箔や待合室の伝統工芸も見事だけれど、トイレや動線にも「おもてなし」の心が見える。

なお、北陸新幹線の開業に合わせて、東武鉄道は大宮駅発の「スカイツリートレイン」を開業日から3月末までの土日限定で運行する。しなの鉄道は3月22日、観光列車「ろくもん」を妙高高原駅から長野駅まで招待者を乗せて運行するという。どちらも今後の定例運転に向けた試みと思われる。JR西日本はIRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道・えちごトキめき鉄道を含めたフリーきっぷ「北陸周遊乗車券」などを販売。前月までも多くの新サービスが報じられており、北陸新幹線開業の期待が高まっている。

2020年度から中央線快速にグリーン車 - 無料お試し期間はある?

JR東日本は2月4日、中央快速線へのグリーン車導入を発表した。2020年度に開始とのことで、早ければ2020年4月から、遅くとも2021年3月からとなるだろう。ちょっと先の話だ。オレンジ帯のE233系にグリーン車2両を組み込む。固定編成は10両編成から12両編成へ。6両編成は8両編成へ。4両編成はそのまま、8両編成と連結して12両編成となる。

中央快速線などで活躍するオレンジ帯のE233系にグリーン車が導入される

同社は経営目標のひとつとして着席サービスを掲げており、これで首都圏から主要5方面のグリーン車導入が完了する。中央線は通勤圏の拡大にともなって通勤形電車の運行区間が延長されており、201系電車時代には大月駅発着の列車が設定されている。201系電車を置き変えたE233系も、増備にともない運行区間が拡大されてきた。

かつて高尾駅より西側はクロスシートの115系などが主体で、これをロングシートの通勤形に置き変えたため、座席数が減った。長距離通勤客の乗換えの不便は解消されたけれど、着席を望む需要が多いのだろう。過去のグリーン車導入路線の成功例にならった施策といえそうだ。

報道発表資料には他の区間のグリーン車導入時期も掲載されており、こちらも興味深い。グリーン車は国鉄時代の1969年3月に東海道本線と横須賀線の1等車を「グリーン車」とした制度から始まり、1980年10月から総武線快速列車にもグリーン車が導入された。これは横須賀線と総武快速線の直通運転が始まったため。2004年7月には宇都宮線(東北本線)・高崎線にも導入。これは東海道本線の113系がE231系に置き変えられるため、113系に連結していた211系仕様のグリーン車を転用する形で実現した。2007年1月には常磐線の中距離電車にもE531系の2階建てグリーン車を新造して連結した。

宇都宮線・高崎線・常磐線のグリーン車投入では、2~3カ月程度の「お試し期間」があった。グリーン車を少しずつ整備して連結したから、サービス開始には不十分。車両がそろうまでグリーン車を普通車扱いとし、グリーン車制度の開始まで乗車券のみで利用できた。中央快速線のE233系はどうなるだろう?

「東京駅Suica騒動」が決着 - 申込み総数499万枚でも売上にならない!?

「東京駅開業100周年記念Suica」は2014年12月20日に東京駅で販売された。しかし予想以上の購入希望者数と人員整理の不手際から大混乱を引き起こした。この様子はテレビや新聞のニュースにも取り上げられ、転売業者の横行、整列した人に対する不公平な扱いなどが明らかになった。「限定販売商法」「転売目的の購入者」についてはたびたび社会問題になっており、この騒動で議論が再燃した格好だ。

その後、JR東日本は「希望者全員に販売」、窓口ではなく「インターネットと郵送による申込み販売」と案内し、今年1月30日から2月9日まで受け付けた。その申込み総数が2月18日に発表された。申込み総数はインターネット受付が425万枚、郵送受付が74万1,000枚で、合計499万1,000枚。当初の販売予定は1万5,000枚で、約330倍もの発売枚数となった。

「東京駅開業100周年記念Suica」は大人気商品となった。しかし、もともと購入希望者がこれだけいたかどうかは疑わしい。繰り返された「東京駅Suica騒動」の報道を見て商品を知った人も多かっただろうし、大半の人々は話題に喚起された人だろう。年末気分、正月の消費意欲高揚ムードも手伝ったかもしれない。実際の購入手続きは3月9日までとなっており、熱が冷めた希望者の辞退も相当ありそうだ。

大混乱の失態と報道があってこその販売枚数だという意見もある。JR東日本は「炎上商法で大儲け」と思われるかもしれないけれど、これが悲しいことに儲からない。「東京駅開業100周年記念Suica」の発売額は2,000円。このうち500円はデポジット(預かり金)であり、利用者がカードを返却する場合は利用者に返さなくてはいけない。つまり売上にはならない。残りの1,500円はチャージ額であり、これも預かり金である。利用者がJR東日本の路線や駅ナカ売店などを利用した場合のみJR東日本の売上となり、他社の路線を利用した場合は他社に差し出さなくてはいけない。

つまり、販売した2,000円のうちJR東日本の取り分は少ないし、今回は郵送料もJR東日本が負担しているから販売経費も大きい。どうも儲かりそうな話ではなく、当初の販売枚数1万5,000枚も、これを考慮したと思われる。

記念Suicaだから「使わないで取っておく人」も多いだろう。その場合でも預かり金は預かり金のままだ。JR東日本の会社の帳簿上では売上ではなく、長期預かり金のうち、「前受利益」勘定で固定負債として扱う。じつは「お客様からの借金」になってしまう。不幸中の幸いとして、金融機関からの借金ではないから返金時に金利はつかない。現金だから、預金の金利や運用の資金にはできる。でも、良識のある会社なら、返金のために一定額は保管するたろう。499万1,000枚が購入者にどのように利用されるか、その見積もりが難しい。

「東京駅Suica騒動」で、世間では売上増とみられていても、実際はJR東日本にとって、「やっかいな借金」と郵送コストなど「販売経費」を増やしただけ。担当者の責任が問われかねない悲劇であった。

JR西日本の新たな寝台列車「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」に決定

2月19日、JR西日本は2017年春から運行開始する「新たな寝台列車」の列車名を発表した。3月12日の列車をもって運行終了となる寝台特急「トワイライトエクスプレス」にちなみ、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風(みずかぜ)」に決まった。

この決定に、鉄道ファンならずとも納得、賞賛したのではないか。大阪~札幌間を結んだ「トワイライトエクスプレス」は、車両こそ老朽化していたとはいえ、サービス内容は満足度が高く、日本を代表する列車旅にふさわしかった。そのサービスが引き継がれる。これで新しい列車に「安心感」が加わり「間違いのない選択」が約束された。

誰しも「新しいものが好き」だけど、同時に「古いものを高価値とする」「伝統を大切にする」という気持ちが混在する。これは他の特急列車もそうだし、クルマもそうだ。デザインや性能を刷新しても、伝統の名が残っている。逆に、新しい名は「過去から決別する」という決心の表れともいえる。その点で、新しい列車名を与えたJR東日本の「TRAIN SUITE 四季島」と、伝統を受け継いだJR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」は、考え方の違いが明確になったように思う。

もうひとつ、JR西日本とJR東日本の考え方の違いがある。JR西日本は「寝台列車」という呼び方にこだわっている。JR東日本は「クルーズトレイン」だ。「クルーズトレイン」という呼び名は、JR九州の「ななつ星 in 九州」から本格的に使われ始めた。船旅(クルーズプラン)の多くが船内宿泊をともなう設備を持ち、出発した港に帰ってくる。これにならい、出発した駅に帰ってくる、つまり「移動手段ではなく乗車自体を目的とする列車」をクルーズトレインと定義したようだ。JR東日本も同様だろう。

では、JR西日本はなぜ、「寝台列車」という呼称にこだわったのだろう? 正直なところ、いまや「寝台」という言葉は常用されない。寝台列車以外では葬儀用の寝台車、介護用特殊寝台、軍隊の兵員用寝台くらいである。寝台列車以外では積極的に使いたくない設備でもある。それでもJR西日本が「寝台列車」にこだわる理由は、やはり「寝台特急トワイライトエクスプレス」の伝統を重んじたからだろうか?

そうだとすれば、出発した駅に戻ってくるプランだけではなく、「移動手段」としても使える運行経路を検討しているかもしれない。「京都駅から山陰方面を経由し、下関駅まで列車で。下関港から豪華客船で瀬戸内海を通って大阪港へ戻る」、あるいはその逆という組み合わせもおもしろそうだ。途中、広島県の宮島駅にも立ち寄るかも……。運行ルートの妄想が広がる。正式発表まで楽しめそうだ。

新型機関車や新型観光列車、新路線などの話題も

他に2月の注目の話題として、「名古屋鉄道が新型機関車を購入」「大井川鐵道で元東急7200系が運行開始」といった車両の動きがあった。旅行好きの視点も加えると、JR九州の新型観光列車の名前に「或る列車」が採用されたことや、JR東日本の飯山線向け観光列車「おいこっと」、磐越西線のイベント列車「フルーティアふくしま」などが興味深い。昨年、日本中を沸かせた大井川鐵道「きかんしゃトーマス」の予約受付も始まっている。

路線関係では、「JR西日本の可部線延伸が2017年春開業見込み」「JR東海の武豊線が3/1に電化開業」「JR東日本山田線の復旧と三陸鉄道への移管決定」「北海道新幹線開通にともなう函館~新函館北斗間のアクセス列車が『はこだてライナー』に決定」など、「乗り鉄」には見過ごせない話題も多かった。