「電話応対は苦手……」そう感じている新社会人や就活生は多いのではないでしょうか? 近年、SNSやチャットツールが普及し、電話を使う機会が減っているため、苦手意識を感じるのは当然かもしれません。しかし、ビジネスシーンにおいて電話はまだまだ重要なコミュニケーションツールです。

本連載では、電話への抵抗感をなくし、社会人の基礎スキルを磨く機会となるような電話応対のコツやテクニックを紹介します。

今回は、トップセールスが意識している「話し方のコツ」をテーマに解説します。電話における話し方の印象は、対面以上に相手に与える影響が大きいものです。ちょっとしたポイントを意識することで、声の印象をアップさせることができます。

話すスピードを意識して信頼感を生む

皆さんは、自分の話すスピードを意識したことはありますか? 一般的に、営業の商談やプレゼンでは、1分間に300字程度のスピードが聞き手にとって理解しやすいと言われています。情報伝達のプロであるアナウンサーも、このスピードを目安にトレーニングを積んでいるそうです。

しかし、話すスピードに絶対的な正解はありません。電話の相手によって、最適なスピードは異なります。例えば、忙しい役職者の場合はゆっくり話してしまうとイライラされてしまうかもしれませんし、カスタマーサポートで消費者に早く話してしまうとお客様が内容を理解できず、意図しないクレームに繋がってしまうかもしれません。

一方で、人は話すスピードが速い人に、知性や能力の高さを感じやすい傾向があります。ビジネスにおいては、それが信頼感や専門性の高い印象を与えます。当社の過去の録音データを分析したところ、電話の相手が企業の部門責任者、役員、社長といった立場の方の場合、話すスピードが速い傾向が見られました。

必ずしも相手と同じペースに合わせる必要はありませんが、ビジネスにおいては相手よりもほんの少しだけ速いペースで話すことで、「この人と話すと何か価値を提供してもらえそう」という期待感を持ってもらえる可能性が高まります。

顧客のニーズを引き出す。聞き上手になるコツ

顧客のニーズや課題を的確に把握するためには「聞く力」が不可欠です。

一般的に、営業担当者が話す割合と聞く割合は、2:8や3:7が理想的と言われ、聞き上手になることが信頼関係の構築に直結します。営業担当者の話す割合が大きいと、顧客は押し売りのように感じてしまいます。

会話を円滑に進めるためには、業界や商材によっても異なりますが、営業担当者が話す割合を50%以下に抑えることが望ましいでしょう。特に初めて話す際やヒアリングの段階では、顧客の声にしっかりと耳を傾ける姿勢が、今後の商談の質を大きく左右します。

しかし、聞く姿勢を大切にしつつも、主導権を顧客に委ねる必要はありません。的確な質問を投げかけながら会話をリードすることで、自然な形で主導権を持ち、相手に「話しやすさ」と「安心感」を提供することができます。

声のトーン・抑揚・間の活用で伝わる話し方

声のトーンや抑揚で感情と熱意を伝える

話し方の良し悪しを左右する要素として、声のトーンや抑揚は、相手の関心を引き、メッセージを効果的に届ける上で極めて重要な要素です。

特に伝えたいことや重要なポイントは、抑揚をつけて話すことで、より効果的に伝わります。感謝の気持ちや喜びといった感情も、抑揚によって豊かに表現することができます。商品やサービスへの強い想いや、顧客の課題解決に向けた熱意も、自然と抑揚に表れるものです。

これらの感情や熱意が顧客に伝わるほど、共感が生まれ、話を聞いてもらいやすくなります。「何を話すか」と同じくらい、「どう伝えるか」も重要なポイントです。

「間」は心地よさを生む

会話をスムーズに進めるためには、「間」の取り方も非常に大切です。会話というと、お互いが「話す」ことに意識が向きがちですが、実際には、常にどちらかが話し、もう一方が聞いているわけではありません。その間には、必ず「間」が存在します。電話で話す際にも、顧客が説明を理解するための間、提案内容を検討するための間、そして質問したいことを整理するための間など、さまざまな「間」が存在します。話すこと、聞くこと、そして適切な「間」がバランス良く存在することで、会話は自然と成り立ち、活気づきます。

沈黙を苦手に感じてつい話し続けてしまったり、「断られたらどうしよう」といった不安から、一方的に話し続けてしまうこともあるでしょう。

しかし、電話において、一方的に話し続けることは逆効果です。電話では相手の表情が見えないため、相手が内容を理解できていないにもかかわらず、一方的に話を進めてしまうと、不満につながりかねません。

また、頭の回転が速い人も、間を空けずに話し続けてしまう傾向があります。商品やサービスのことだけでなく、市場動向や競合他社の情報など、幅広い知識を持っているため、ついそれらの情報を開示してしまい、「間」が埋まってしまうのです。しかし、これも逆効果となることがあります。相手に過剰な情報を提供すると、処理しきれなくなり、だんだんと面倒な気持ちを抱かせ、「少し考えます」「今回はやめておきます」といった言葉につながってしまうのです。

そこで、話の区切りの良いところや、相手が話し終えた後、ほんの少しだけ、たった3秒程度で十分です。すぐに話し出すのではなく、短い「間」を置くことを意識してみましょう。これにより、相手の本音を引き出しやすくなります。

顧客対応において、第一印象を左右するのは話す内容だけではありません。話すスピード、間の取り方、声のトーンや抑揚といった「話し方」も、相手に与える印象や信頼感に大きく影響します。ぜひ「自分の声」と向き合うことも日々のコミュニケーションで意識してみてくださいね。