ITエンジニア&デザイナーの採用支援サービスを手掛けるレバテックが、『レバテック IT人材白書2025』を発表しました。
この調査は、企業のIT人材採用担当者1,000人と、20歳~59歳のIT人材3,000人を対象に実施されたもので、IT人材を採用する企業の動向やITエンジニアの転職動向などがまとめられています。
今回のレポートでは、この調査結果の中から、特に新卒採用関連のデータに焦点を当てて現状を考察します。
IT人材を採用する5社に1社が採用に苦戦
まず、新卒採用と中途採用を含めた全体の採用状況を確認します。「目標達成済み」が17.1%、「目標達成進捗である」が27.9%となっており、合わせて全体の45.0%が採用目標の達成が見えている状況です。
一方で、「目標達成が難しい可能性がある」(16.6%)と「目標には大きく届かない見込み」(5.3%)の合計が21.9%になっており、約5社に1社が採用に苦戦している状況のようです。
全体の43.7%が採用増と回答
若年層の労働力不足、そして採用難が常態化する中で、デジタルトランスフォーメーション(DX)やサイバーセキュリティ対策への対応などで、IT人材の求人ニーズはますます高まっています。
たとえ計画通りの採用ができないとしても、採用を強化しようとする企業は少なくないようで、全体の43.7%が昨年度より採用人数を「増加した」と回答しています。
エンジニア採用で新卒に熱い視線
IT人材の採用を強化する中で、中途採用だけでなく新卒採用に注力する企業が少なくありません。
エンジニア採用において、全体の38.5%が、母集団を増やすために最も注力しているターゲットは「新卒採用」だと回答。2025年卒の新卒採用を実施した企業は全体の65.4%に達しています。
初任給は「400万円~ 450万円未満」が最多、7割以上が初任給を引き上げ
業界を問わず新卒の初任給の見直しが進んでおり、IT人材の初任給も上昇傾向です。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、大卒の新規学卒者の平均初任給は約24万円で、12ケ月では288万円となっています。これにボーナス2ケ月分がプラスされたとしたら、平均的な年収は約330万円程度と考えられます。
今回の調査では、2025年卒の新卒エンジニアの初任給は「400万円~450万円未満」(26.1%)が最も多い結果となっており、大卒全体の初任給平均より高い傾向がうかがえます。
また、昨年度から初任給を引き上げた企業が7割を超えており、売り手市場が続く新卒採用市場で、採用力を強化するために新卒エンジニアの給与を引き上げる企業が多いようです。
コミュニケーション能力、キャリアビジョンを重視して選考
では、ITエンジニアの採用で、企業は何を重視しているのか。
中途採用を含めた調査結果となりますが、最も重視されるのは、「コミュニケーション能力」(38.6%)で、「キャリアビジョン」(26.4%)が続きます。
人材採用で、コミュニケーション能力を重視するのは特定の業界に限られたことではありません。
しかしITエンジニアの場合、将来のキャリアプランが選考の重要なポイントとなるのは、専門性が求められる職種ならではの特徴かもしれません。
37.4%がプログラム学習経験なしで就職
専門的な知識やスキルの有無にかかわらず採用を行う企業も少なくないようです。
実際にIT人材として働く人のアンケート結果を見ると、学生時代にプログラミング学習の経験がないまま入社している人が全体の37.4%にのぼることがわかります。
多くの企業では、入社後の教育研修プログラムを通じて専門スキルや知識を習得させることを前提とし、意欲や適性を重視して採用を行っているようです。
そのため、未経験者でもエンジニアとして活躍できるチャンスは大いにあると言えそうです。
働く上では大変さも実感
専門的なスキルが身に付けられることに加えて、給与や福利厚生などの待遇面、リモートワークなど自由なワークスタイルなど、ITエンジニアの職場環境にはさまざまな魅力がありそうです。
しかし、どんな仕事でも大変に感じることはあるようで、IT人材として勤務する人の回答では、働く上で最も大変だと感じることとして、「業務量が多い」(28.5%)がトップ。
「年収を上げづらい」(26.3%)が続きます。他にも、「常に新しい技術のキャッチアップが必要」(10.9%)、「評価基準が曖昧」(8.8%)といった項目も上位に入っています。
IT人材の需要が高まる中、新卒エンジニアの採用環境は大きく変化しています。企業は給与引き上げや未経験者の受け入れを進め、多様な人材を求めています。
今後も採用動向や働き方の変化に注目が集まりそうです。